香港出身のギタリストのアラン・クワンが2018年に録音した『Petrichor』はファビアン・アルマザン、リンダ・オー、ジョナサン・ブレイク、デイナ・スティーヴンスというNY屈指のミュージシャンが参加した素晴らしい作品だった。僕はアランのことは桃井裕範さん経由で知ったのだが、香港にこんな素晴らしいギタリストがいるのかと驚いた。ギタリストとしての質の高さだけでなく、作編曲も含めた世界観やムードの作り方に個性があり、いち演奏家を超えたアーティストだなと思っていた。
2022年に彼がInvisible Architectureという名義で新作『Between Now and Never』を発表した。
これがとても面白い作品で、僕はすぐにツイッターで紹介した。
そしたら、それを見たアランから連絡が来た。彼は『Jazz The New Chapter』を知っていて、僕にライナーノーツを書いてほしいとのことだった。
じゃ、せっかくなので、香港のジャズ・シーンのこともよくわからないし、あなたのことももっと知りたいので、とりあえず話をしませんか?ということでインタビューをやることにした。
この記事の一部は『Between Now and Never』のライナーノーツに日本語と英語で掲載されている。
その後、アランは台湾のゴールデン・メロディ・アワードで4部門にノミネートされ、最優秀アルバム・プロデューサーを受賞。このアルバムは成功を収めている。
今後、香港を含め、近隣のアジアの国との繋がりができることを願いつつ、このインタビューを公開します。
取材・執筆・編集:柳樂光隆 通訳:染谷和美
◉香港ジャズの先駆者ユージーン・パオとテッド・ロー
――最初のあなたの先生だったEugene PaoとTed Loは香港ジャズにおける重要人物ですよね。彼らがどんな存在なのか聞かせてもらえますか?
――香港って歴史的に繋がりが強いのはイギリスですよね。でも、テッドもユージーンもアメリカに留学している。ジャズの本場のアメリカに留学していた人は彼ら以外いなかったけど、ジャズが盛んではないイギリスに行っていた人なら過去にもいたって感じですか?
テッドが留学していたのはずっと前で、彼はその後もずっとNYに住んでいた。ロン・カーターのバンドのピアニストだったし、アイアートやタニア・マリアなどのトップ・プレイヤーと共演してきた。でも、家族は香港にいたので、彼は香港に戻ってきた。
ユージン・パオはずっと香港にいた人で、実はジャズを学んでいない。ずっとビジネスを学んでいて、ジャズはこっそりやっていた。彼はスペシャルなファミリーの人だからね。それでどんどんうまくなって徐々に注目を集めるようになった。香港は海外からミュージシャンがたくさん来る場所。そこで海外のアーティストが地元のミュージシャンと演奏しようってなったときにまずユージーンに声がかかるようになって、彼が香港のファースト・コールになった。彼はマーティン・テイラー、パット・メセニー、トニーニョ・オルタ、渡辺香津美、そういった人たちと演奏を重ねたんだ。日本の渡辺香津美と韓国のジャック・リー、そして、香港のユージーン・パオが共演したアルバムもあったはずだよ。
◉香港ジャズの歴史と現状
――アランさんは2009年にアメリカに留学する以前には香港の学校で音楽を学んだりしていたんですか?
――けっこう間が空いたのに、最近になって新しい世代が出始めている理由はありますか?
――アランの世代って何歳くらい?
――レベルの高いプレイヤーがいたら名前を教えてください。
――香港でのセッションってどんなところでやるんですか?
◉ノーステキサス大学への留学
――では、次はノーステキサス大学に行った時の話を聞かせてもらえますか?
――なるほど。
――どう学ぶかも自分で考えて選び取らなきゃいけないと。
◉クイーンズ・カレッジ大学院とNYでの活動
――その後はクイーンズ・カレッジの大学院に行ったんですよね。そこではどんなことを?
――学外での演奏はどういう場所でやってたの?
◉アラン・クワンの影響源
――これまでどんなギタリストを特に研究してきましたか?
――作曲家だとどういう人を研究してきたんですか?
◉デビューアルバム『Petrichor』
――あなたの最初のアルバム『Petrichor』について聞かせてください。
――軽やかで透明感があって、ギタリストなのにあまり弾いてなくて、ムードやスペースみたいなものをすごく大事にしたアルバムなのかなと思いました。
◉Invisible Archtecture『Between Now and Never』のこと
――では、次はInvisible Archtecture『Between Now and Never』。Invisible Archtectureはバンドってことですか?
――アルバムの感じからするとアンビエントとか、エレクトロニカとか、好きなのかなと思いましたが。
他にはKneebodyはエレクトロニックではないけど、コンセプト的には近いと思う。あとは、The Bad Plusのメンバーがやっていることとか、UKのThree Trapped Tigers、Jordan GheenがやっているSkywindowとか、その辺りは僕がやりたかったことに通じるものだと思う。でも、みんなギターを入れていないんだよね。ギターはエフェクターとかを使えば色んなことができるはずなんだけど、エレクトロニックなことをやる人はギターを雇わない。だったら自分でやろうかなっていうのもあったね。
――けっこうギターを弾いている曲だと「Pulse」ですかね。
――「Lilac」のアコースティックの質感やサウンドの配置もすごく面白いですよね。
◉アラン・クワン 2023 来日公演