interview Jun Iida - Evergreen:日系アメリカ人トランぺッターとNujabesとの出会い(2,900字)
新譜をチェックしていたら、このアートワークが目に飛び込んできた。
和服の若者がトランペットを持っている写真なのだが、なんとなく写真の感じも含めて日本で作ったアートワークじゃない予感がした。そこで、はっと思い出した。「あ、この人、会ったことあるな…」
僕はイイダ・ジュンさんと東京で会っていた。オーブリー・ジョンソンというジャズ・ヴォーカリストが日本に来た時に彼女たちと食事をしたのだが、その時に彼女の友人のひとりとしてその場にいたのがイイダさんだった。
普通に「はじめまして、柳樂です」「イイダです」みたいな挨拶をして、少し話をした。その時に、アメリカ生まれのアメリカ育ちで、日本には住んだことがないこと、今はシアトルのシーンで活動していることなどを聞いていた。「日本には住んだことがないので、日系アメリカ人のほうが正確かもしれませんね」とイイダさんは話してくれたのも覚えていた。
彼はジャズをやっていて、トランペット奏者で、ジャズも好きだけど、ヒップホップやネオソウルを聴いて育ったから、ジャズとヒップホップが混じっているような音楽が好きです、というような話をしたのも覚えていた。「そのうち、新作が出るので聴いてくださいよ」なんて話を聞いていたのだが、僕はすっかり忘れていた。どうやらそれがこの『Evergreen』だったのだ。
Spotifyに表示されるフィーチャーされたミュージシャンを見ると、サラ・ガザレクの初期諸作のサラの右腕であり、自身のソロでもジャズに止まらない感性を聴かせていたピアニストのジョシュ・ネルソンが参加しているのに気づいた。それは僕にとって大きなトピックだった。僕はもともとジョシュ・ネルソンの音楽が好きで、アルバムだったら『Exploring Mars』は最高だと思ってるし、エリオット・スミスのカヴァーが収録されている『I Hear a Rhapsody』も愛聴していた。
イイダさんに話を戻すと、『Evergreen』にはエルモ・ホープの渋い曲が選ばれていたり、ジャズリスナー的にもグッとくるポイントがいくつもあった。でも、それよりもまず驚いたのは「赤とんぼ」が聴こえてきたこと。山田耕作の童謡のあれだ。曲名を見ると「Akatonbo」と書いてあり、オーブリーが日本語で歌っている。
そのまま聴き進めると、どこかで聴いたことがある曲が聴こえてきた。日本語の歌詞と日本的な旋律。どっかで聴いたことあるなぁ、これ何だったかなと思って「Shiki No Uta」のクレジットを見ると《Jun Seba & Michiko Kuwano》と書いてある。「そうだ、『サムライチャンプルー』に収録されていたNujabesの曲だ!MINMIが歌っていたあれだ!」と。驚きつつ、懐かしがりながら、同時に「日系アメリカ人のジャズ・ミュージシャンが自身のデビュー作でヌジャベスのカヴァーをするのは興味深いな」とも思った。近年は海外でもヌジェベスがとんでもなく人気だってのは知っているし、レコード屋では働いている友人から「ヌジェベスのレコードは観光できている海外の客が買っていく」って話も聞いていた。ただ、日系アメリカ人となると少し話は変わってくる。僕はその経緯を知りたくなった。
そういえば、SNSで繋がっていたなと、メッセージを送り、久しぶりに連絡を取って、少しやり取りをしたら、イイダさんは快く話してくれた。「これ、日本のリスナーにも届けたい話ですね」と送ったら、「公開してもいいですよ」と言ってくれた。
インタビューというほどのボリュームではないが、せっかくなのでご厚意に甘えて、ここで公開することにする。僕としてはジュン・イイダのアルバムを聴いてほしいと思っているし、ヌジャベスのアメリカでの需要の一例としても読んでもらえたらとも思う。そして、そのうち、イイダさんの演奏を日本で聴けたらいいなとも思っている。
以下、ショート・インタビュー
ーーヌジャベス「Shiki No Uta」のカヴァーをやっていますね
ーーヌジャベスを知った経緯を教えてもらえますか?
ーーアルバムに収録されている「Love Theme From Spartacus」もユセフ・ラティーフのバージョンがヌジャベスのサンプリングソースですよね
ーーヌジャベスがアメリカでどう聴かれてるかはよくわからないことなので、イイダさんの話はとても興味深いです。
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