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リチャード・スペイヴンの『The Self』が素晴らしかった

◆Richard Spaven 's new album『The Self』 is awesome!!!!
➡ https://richardspaven.bandcamp.com/album/the-self

◆Apple Music、Spotifyで全曲聴けます。
➡ https://itun.es/jp/5lYPkb
  https://open.spotify.com/album/6gFYqNgmpVcS79T5bpfeZR

4HEROやシネマティック・オーケストラをはじめ、ドラムンベースやブロークンビーツなどの、UKのクラブシーンを出自に持ちながらも、ホセ・ジェイムズのバンドに起用されUSでも活動し、フライング・ロータスのUKツアー時にも起用されたUKのドラマー、リチャード・スペイヴンの新作『The Self』が最高だ。

完全に前作を超えてきた。彼の独特なドラミングとコンポーザーとしてのセンスの良さとUKダンスミュージックシーンと関わり続けてきた経験が全て入っている。USからは生まれない傑作だと思う。

リチャードのドラミング自体は前作から大きく変わったところはないだけでなく、このアルバム内の曲ごとでもそんなに大きな変化はないように思う、ドラムの音色さえも曲ごとにそこまで変えてはいない、しかも、テンポに関しても、アルバム全編が近いテンポで統一されているように感じる。

ただ、ベースのサウンドの違いで、それぞれの曲が全く違うものに聴こえているのだ。そして、その曲ごとに大木かわかるベースに軽く寄せて的確にサウンドさせるリチャード・スペイヴンのドラムがこのアルバムの肝だろう。

ベースのリズム、ライン、音色、重さ、サステインなどの変化でダブステップ、ネオソウル、ブロークンビーツ、ディープハウスみたいに曲ごとにどんどん変わる、全編が近いテンポで、ドラムに同じ質感があるから、アルバム全体には不思議な統一感がある。にもかかわらず、ベースだけで、もたって黒く人間的になったり、タイトに機械的になったりもして、ドラムの統一感とはまた別に多彩さを感じるのだ。

そして、敢えてベースと絡み合わずにレイヤーしたようにドラムを重ねた「トラック感」と、的確にベースと噛み合わせながら共にグルーヴする「バンド感」とを叩き分けるリチャード。それが全編、同じ質感のドラムで似たテンポ行われてる。このアルバムは、そんな曲ごとの差異と統一感が共存したバランス感覚がすげー面白いのだ。ここでのリチャードは人間と機械の間で微妙に人間に寄ったり、機械に寄ったりと、どちらとも取れないドラムを叩いている。その落としどころの細かい調整も絶妙なのだ。

このドラムのリズムも割と近くてテンポも近い感じで他の楽器=上もので変化を出しつつ、統一感をもたせていくのって、ある意味では、エレクトロニックミュージックのやり方だし、ある意味ではDJのプレイ的でもあるなぁとも思ったりもする。なんにせよ、派手さは全くないが、実はドラムが中心にあるのだ。そんな感じで色々想像が広がるアルバムだ。

というバックのサウンドの上で歌っている何人かのボーカリストも絶妙で、ホセ・ジェイムズで言えば『Black Magic』的で絶妙に上もの的でサウンド的な歌とも言えるだろう。ジョーダン・ラカイがメロウなソウル感を薄ら残しつつも、実にさらっと乗せる感じが特にいい。このフィーリングを選べるセンスがいいのだ。

この辺はホセ・ジェイムスにも言えることだけど、USのR&B/ネオソウル/ヒップホップ/ジャズだけではなく、UKのエレクトロニックミュージックを理解している感覚から出てくるものだと思う。ミニマルなトラックの上でサウンド的な意味も宿しながら歌う歌唱というのは、USのブラックミュージック的なそれとは若干だが違うし、そんな歌唱からしか得られない心地よさがあるのだ。そんなUKの良さが全編に溢れてる。絶妙に薄暗く&メロウな情感もUKだよなぁと。

リチャード・スペイヴンはやっぱり面白いと改めて感じさせるアルバムだ。このドラミングは言うまでもなく、クリス・デイヴやマーク・コレンバーグ、ネイト・スミスのようなジャズ/ヒップホップ系譜(Jディラっぽさも含めて)のドラマーたちとは全く違うし、エレクトロニックミュージック/ビートミュージック系譜とは言えどもマーク・ジュリアナとかマーカス・ギルモア的なUSのバケモノにも絶対得られないセンスだだと思う。それと同時に、ゴーゴーペンギン辺りのUK人力テクノ系とも一線を画す。

彼の全く無駄のない、完璧にデザインされた、設計された演奏とサウンドは唯一無二だ。久しぶりにあの独特の所作のドラムを観たくなった。

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