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フジロックで観たトロンボーン・ショーティーがすごかった

※新作はApple MusicやSpotifyで聴けます。
 ➡ https://itun.es/jp/EByjib
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2017年のフジロックのベストアクトはトロンボーン・ショーティーでした。

いやー、ここまで楽しいとは思わなかった。世界中のフェスで引っ張りだこなのも納得。

トロンボーン・ショーティーは、ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者で、彼の音楽はニューオーリンズ・ジャズから 、モダンジャズ、ソウル、ファンク、ロック、ヒップホップまで全部入ってるサウンドを奏でる最高のエンターテインメント。ショーティーは、トロンボーンとトランペットを演奏し、時に踊って、時に歌って、時に煽って、観客を盛り上げまくる。

音楽的にはある意味で、クラブジャズ的な手法が、ジャズメンの手でアップデートされた最強なやつかもという気もする。DJユースに構造を単純化/最適化するんじゃなくて、ジャズミュージシャンならではのマッチョな演奏のままで、その破壊力込みで盛り上げる感じ。四つ打ちで機能的に踊らせるんじゃなくて、演奏力で心を躍らせるというジャズファンが待ち望んでいたやつかもしんないと思う。つまりは、UK産のジャズ風ダンスミュージックではなくて、US産の踊れて盛り上がれるパーティー仕様の「ジャズ」だったと思う。
去年のカマシ・ワシントンの代わりはトロンボーン・ショーティーだったのかもね。

そのためのトロンボーン/トランペット、テナーサックス、バリトンサックスの3管でホーンセクションで華やかにアゲまくる。ニューオーリンズのブラスバンド的に時にバリトンがベースラインを吹いたり、更にギターがいて的確にリズムを弾いてたりして、低音やリズム面をいつでも超厚くできる編成も完璧だったと思う。

あと、面白かったのがヒップホップっぽさを感じた瞬間が、いわゆる生演奏ヒップホップ的なブレイクビーツやJディラ的なよれたビートではなく、ニューオーリンズのリズムをもとに音色やアクセントを変えたビートを叩いていたのが、なんだかティンバランド的なサウスっぽいヒップホップ感を纏ってたこと。 ラテンのリズムの変形ともいえるとは思うけど、ニューオーリンズのバンドならではのやり方かもなと。
(※ニューオーリンズとラテンの関係はこちらの記事に詳しいです ➡プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド来日直前インタビュー ~ニューオリンズとキューバの結びつきが生んだ最新作を語る。 http://www.billboard-japan.com/special/detail/2033
こういうのってジャズではあまりないけど、強いて言えば、ヴィジェイ・アイヤーのこれをうっすら思い出す感じ。

これの元曲はM.I.A.のこれです。

トロンボーン・ショーティーは「フロム・ニューオーリンズ」って言いまくってたり、ライブの終盤で「聖者の行進」のフレーズを挟み込んだり、音楽のディテールにニューオーリンズっぽさがさりげなく入れてあることも気が利いてたけど、それがいろんな作用を生んでた気がする。面白い 

カヴァー曲では、ローリングストーンズ、ジェイムス・ブラウンからレッド・ホット・チリ・ペッパーズまでニューオーリンズジャズを起点に様々なUSブラックミュージックとそれを取り入れたグルーヴミュージックを次々に演奏して行くのも楽しい。そういえば、トロンボーン・ショーティーがやってたミック・ジャガーとJBの物まねがクールだったし、何気にかなりうまかったのはウケた笑

ベーシストはエレキベースのファンクベーシストといった感じ。かなりローエンド出してて、音もぶっとくて、上記のサウンドにも対応しつつ、フェスサイズの音響にフィットする出音。全編が超ファンキーでグルーヴィーだったんだけど、そこにロック的なリズムが自然に入ってきたりもする。こういうサウンドを聞いていると、例えば、デリック・ホッジが「俺の10代のころのベース・アイドルはレッチリのフリー」って言っちゃうことが肌感覚として伝わってくるし、USの21世紀の音楽史が聴こえてくる。とはいえ、こういう見せ方は想像しなかったけど。ちなみにトロンボーン・ショーティーとレッチリとは地味に共演済みっぽいです。

そういえば、個人的にクラブジャズ感を感じたのは、ファンクっぽさもあるけど、ロック的な縦ノリのビートをうまく取り入れていたことだったけど、それでも全然飽きさせなかったところが素晴らしかった。クラブ向けに機能性を重視した単調さは全く無く、フェス向けにリズムでも楽曲自体の中でも常に変化を盛り込みながら、グルーヴは途切れさせない新しい構成の仕方だと思った。つまり、自由な部分もあるけど、かなり入念に作編曲がなされていている。これはロックバンドからインスピレーションを得ているのかもしれないという気もする。現状、フェスサーキットが主戦場になっているジャズメンのフェス対応の最適解かもなぁ、このやり方は。

それは、ある意味でダーティー・ダズン・ブラス・バンドがジャムバンド・シーンでブレイクした部分のいいとこどりでもある。ただ、ジャムバンドがやっていたような長時間のロング・インプロ/ロング・グルーヴではなく、楽曲を歌ものにしたり、アジテーターがいたり、3人の管楽器奏者の短尺のソロを高速でぐるぐる回していくソロまわしなど、とにかく変化を上手く盛り込んだのが鍵か。

それにしても、トロンボーン・ショーティーをきっかけにジャズを現代にアジャストしていくためにニューオーリンズのマーチミュージックにはヒントがあるのかもと思えてしまうのもまた興味深い。UKでサックス奏者のシャバカ・ハッチングスがチューバを組み込んだグループのSons Of Kemetってのをやってて高く評価されてることを思い出したり。Sons Of Kemetはもっとアフリカ感が強いけど。

USでもプリザベーション・ホール・ジャズバンドやリバース・ブラス・バンド、ソウル・レベルス、ホット8ブラスバンドとかブラスバンドが色々いるけど、ニューオーリンズの音楽にはまだまだヒントが埋まっているのかもしんない。つまりビバップ以前ね。

あと、最近感じているのはバリトンサックスという楽器の可能性。圧倒的にノイズ的だけど、空気を含んでいて人間的でもあって、上手いやつなら音色の幅が尋常じゃなく幅広いこの楽器は、エフェクトにも全然勝てるんじゃないかと。エレキギター的破壊力あるよなぁと。

そんないろんなことを考えてしまうライブでした。それにしてもフジロックはこういうバンドがきちんと盛り上げれるのがすげーよなー。

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