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2022 009:ブライアン・ジャクソン - This is Brian Jackson

最近リリースされたベテランの作品の中で特にグッと来たのは作曲家で鍵盤奏者のブライアン・ジャクソンのアルバムだった。

ブライアン・ジャクソンと言われてもピンとこない方に簡単に説明すると、70年代にギル・スコット・ヘロンというポエトリーリーディング/ヴォーカリストがいて、その盟友で右腕、というのが最もわかりやすいだろうか。

ギル・スコット・ヘロンはジャズやソウル、ファンクのサウンドをバックに語りとも歌とも取れない表現で言葉を紡ぎ、ラップの元祖的な存在としても語られる人。そして、人種差別へのメッセージなどを発し続けていた人でもあり、様々な側面で今も大きな影響を与え続ける巨人だ。"革命はテレビでは流れない"と語るこの曲は今でも度々取り上げられる。声も語り口もかっこよすぎる名曲。

ただ、彼のパフォーマンスや言葉が優れていただけではここまで大きな成功はしなかったことは明白。彼が成功した理由はその音楽のクオリティが高く、圧倒的にかっこよかったことにある。彼の音楽面を支えていたのが盟友のブライアン・ジャクソンということになる。

そのサウンドはジャズとソウルとファンクを融合したもので、キャッチーなファンクとしても聴くことができる。そこにはギルの言葉の力を後押しするような強いグルーヴがあったり、ギルの声のパフォーマンスを加速させ、時に煽るようなジャズの由来の即興演奏による躍動感があったりと、ギル・スコット・ヘロンの魅力を最大限に引き立て、同時にギルのパフォーマンスや言葉に拮抗するようなサウンドでもあった。「The Bottle」「Free Will」の破壊力たるや。

ギル・スコット・ヘロンの音楽はニューソウルとスピリチュアルジャズ、ジャズファンクが共存していた時代のムードをスタイルを横断する形で封じ込めていたものだったのだ。

だからこそ、80年代以降、ギル・スコット・ヘロンの音楽はレアグルーヴとして発見されたり、ヒップホップのプロデューサーによるサンプリングされたりもした。大名曲「It's Your World」を低音利かせまくりの音響で体感したらたぶんみんなDJやってみたくなります。

ブライアン・ジャクソンという人はそんなギル・スコット・ヘロンの音楽面を司っていた偉大なミュージシャン。その彼が2022年にもいまだにかっこいいアルバムを出しているという事実はそれだけでも素晴らしすぎることですね。

ちなみにこのマガジンのヘッダーの画像にもギル・スコット・ヘロンはいる。そのくらいにはギル・スコット・ヘロンとブライアン・ジャクソン僕にとって思い入れのあるアーティストだったりします。

というわけで、簡単は解説はここまで。ここからは僕なりに新作について思ったことを書いてみようかと。

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