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「君たちはどう生きるか」とはなんだったのか

映画「君たちはどう生きるか」には、大きく分けて2つの物語がある。
ひとつは転換期を迎えた家族の物語であり、もうひとつは大叔父の後継の物語になる。
家族の物語については前回の記事で色々書いたのだが、今回は大叔父の物語について記したい。

以下、ネタバレをするのでご注意頂きたい。

大叔父は空から降ってきた隕石に魅入られ、石を護る塔を建てさせる。
塔が完成するとそこで書を読む日々を送り、やがて発狂して忽然と姿を消した…という事になっているのだが、実際には異世界の主となっていた。
大叔父は異世界にやってきた真人に対し、揺らいでいる積み上げた石(世界そのものを表している)の後継者となるよう要請するのだが、真人は石には悪意があると言い、それを拒む。
異世界は崩壊の危機を迎えており、食人インコの大王は捕らえたヒミをダシに大叔父に会おうとする。
しかし異世界は大叔父の血筋の者しか後継とはなれず、インコ大王には何も出来ない。
そこへ真人がやってくる。
大叔父は真人を後継者に望み、悪意のない新しい石を差し出すのだが、真人はナツコと現実世界へ戻るので後継者にはなれないと断る。
大叔父は真人を諦めるが、その様子を見ていたインコ大王が、そんな石が世界の命運を決めるとは…などと怒りだし、石をバランス悪く積み上げ崩してしまう。
その瞬間、世界は崩壊し始める。

…以上が大叔父パートのストーリーなのだが、複雑な親子の物語のクライマックスを中盤に配置し、大叔父の物語をラストに配置しているので、主題はこちらになるのだと思う。

だが、大叔父パートは禅問答のようなやりとりがメインとなり、しかもあまり面白くないので、正直内容については理解出来ていない。
また原作の詳しい内容についてすっかり忘れてしまったため、彼らの会話については再視聴および再読の後に改めて考えたいと思うのだが…。

おそらくこれは作者である宮崎駿の「過去」と「現在」の話なのだろう。
表面的なテーマである家族の物語を最後に持ってきた方が、ひとつの物語としてはずっと収まりが良いはずなのだが、意味不明な大叔父パートがラストを飾るのは、これが「現在」の話だからだ。

私はあまり宮崎駿という人物についてさほど興味がなく、ジブリ作品は半分も観ていないような者であるので、知りもしないし知ろうとも思わないのだが「病弱な母親のもとで育ち、なんらかのコンプレックスを抱えている」「ジブリは会社として存続出来そうもない」という噂話ぐらいは目にするので、この映画は自らの人生の総括をしているのだな…という事はなんとなく理解出来る。

宮崎駿が「自分でも訳のわからない映画」と評していたというwebの記事を見たのだが、そりゃ他人の心象風景や人生の総括を映画作品として抽象的に表現されれば、第三者から見て意味不明になるだろう。

「立場は継げないが意志は拾う」と伝える真人。
真人の拒否を最初からわかっていたかのように大叔父は受け入れ、異世界から送り出し、そして世界の崩壊と共に消えていく。

これは多分、彼の遺書のような映画なのだと思う。


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