うつの素質。1
自己紹介がてらに、少し自分の生い立ちを書こうと思う。
何らかの要因で皆うつ病になってしまう。
いじめや虐待、育った環境や現在置かれている立場によってうつになってしまえる種が育つ。
例えば俺の場合は幼少時に虐待を受けていた。
正確に言うと虐待を受けていたらしい。
幼少時の俺に対する親の行為について第三者に話すと、それは立派な虐待だと言う。
だが当時の俺は虐待だとは思っていなかった、そういうものだと思って、育ってきたのだ。
母親が父親に
「お風呂入れておいてー」
と伝えると、その言葉通り父親は、俺を風呂に入れた。
ぽーん、と。
まだ一歳くらいだったろうか、よく覚えている。
目や鼻や耳からお湯が入ってくる感覚を。
俺を湯船に放り投げた父親は、鼻歌を口ずさみながら体を洗っていた。
母親からはよく殴られ、外に追い出された。
時間は関係なく、顔が見たくないから家にいるなと言われて、玄関から蹴り飛ばされて閉め出された。
三日に一回くらいのペースだったと思う。
よく泣いていた。寂しかったのか、つらかったのか、痛かったのか、よくわからないがとにかく泣いていた。その時は草花が友達だった。
返答もないのに、沢山話しかけていた。
そんなある日、何処からともなく一匹の猫が現れた。茶トラの猫。チャトランと名付けて、よく一緒に遊んでいた。遊んでいたというよりも、子守をしてくれていた。また友達が出来たと喜んでいた。
2歳になって暫くしたある日、玄関先で顔がぺちゃんこに潰されたチャトランがいた。
触っても、話しかけても、何の反応もない。
血溜まりのぐちゃぐちゃの顔面から舌がぺろっと出てて、表情が何も変わらなくて、とても不思議で不気味に思ったことを覚えている。
動かない。
あんなに一緒に遊んで、元気だったのに。
母親に聞いた、
チャトランなんでうごかないの?
神様のところに行っちゃったんだよ。
どういうこと?
死んじゃったってこと。もう一緒に遊べないってこと。悲しいね。
父親に聞いた。
チャトランなんでしんじゃったの?
あー、車止める時にさ、気づかなくて踏ん付けちまったみたいなんだよね。
ふんづける?
潰しちゃったんだよ、うるせえな。
…殺してやる、という言葉を覚える前だ。
圧倒的な、原始的な殺意が、心を支配した。
頭がどうにかなりそうだった。
こいつがああなればよかったのにと、幼いながらに強く思って、近くにあったフォークで父親の太腿を刺した。
いってえな小僧!何しやがんだ!!
横殴りの拳が俺の頬に当たる。
俺は勢いよく吹き飛び、衝撃で障子が壊れた。
俺の口からはダラダラと血が流れていたが、そんなことは意に介さずにフォークを握りしめて父親に向かっていった。
チャトランの痛みや怖さを思ったら、体は止まることはなかった。
が、大人の筋肉隆々の男に敵うわけがなく、気絶。病院に運ばれ終了。
もう俺は外に出たがらなかった。
親とも極力口を聞きたくなかった。
二歳から三歳、幼稚園に入園するまでの間はずっと家で本を読んでいた。
色んなことを学んだ。絵本から始まり、ルイスキャロルの不思議の国のアリスやマザーグースを原本で読みたくて、辞書を片手に読み耽った。
今度は本が、言葉が、昔これを書いた偉人たちが友達だ。
もういなくならない。
もう殺されない。
読めば読むほど自分の中が賑やかになっていくのを感じていた。
楽しかった。
言葉が踊ってる、生きてる。
今もそうだ。
俺にとって言葉は血液。
続く。
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