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東京、本と巡る旅

 夏の終わりの東京で、本にまつわる場所を巡ってきました。旅のお供には最近導入したKindle本と一緒に文庫本も。帰りの荷物には行きよりも本が増えていました。

移動時間は読書の時間

翼の下に富士山

 旅の始まりは、読書の始まり。飛行機が飛び立ち、窓の外の景色を眺めた後で、文庫本を取り出す。地元の本屋さんで本棚を眺めて選んできたのは、小川洋子さんと堀江敏幸さんが交互に綴った『あとは切手を、一枚貼るだけ』。手紙を通して描かれる物語。美しい文章に触れられて、なんだか豊かな気持ちになれる。

一緒に旅した文庫本2冊

 旅の荷物には文庫本がもう一冊。このところ、昔読んだ本を読み返していて、吉本ばななさんや村上春樹さんのデビュー作を久しぶりに手に取った。先日は村上さんのベストセラー『ノルウェイの森』を再読。この流れで、村上さんのデビュー後2作目、『1973年のピンボール』を選んだ。
 新しい本とどちらを持って行こうか考えていたら、結局2冊ともバッグに入れたまま旅立ってしまった。

 機内サービスでドリンクを飲む時間も好きで、コーヒーを飲みながらページをめくる。途中で窓から見える富士山に気づき、何枚も写真を撮る。前回、飛行機に乗ったのは冬だったから、当たり前だけれど、雪の積もった白い山だった。雪のない黒い山肌に、「あれは富士山だよな?」と考えてしまった。白い雪を頂いた姿の印象が強いことに改めて気づいた。

本と出かける旅

 東京で最初に目指したのは、荻窪の細い路地の奥に立つ一軒の建物。扉を開くと、壁に作りつけられた本棚にずらりと並ぶ本が見える。noteの記事がきっかけで知った荻窪の「本で旅する Via」さん。「読書するための居場所」がコンセプトのお店だ。

 読書に没頭できるような静かな空間。2階にはギャラリーがある。営業時間には「読書時間」が定めてあり、その時間は会話を控え、静かに本を読む時間になる。私は少し早めに到着し、2階のギャラリーに展示された写真を眺め、お店についてのお話を伺ってから、「読書時間」を過ごした。
 ギャラリーは貸し出しされているそうで、ここで写真展ができたら、なんて夢もふくらむ。

 店内に並ぶ本も興味深く、本棚から借りてきて読む。店先のワゴンに並ぶ本が販売されていたのだが、店内の本棚の本も販売しているそうだ。知らずにいろいろ取り出して読み耽ってしまった。最初に手に取ったのは、イギリスのフィッシュアンドチップスの歴史について。初めてイギリスを旅した時にも食べたなあ、と懐かしく思い出す。

 続いて、書店で見かけて気になっていたイラストレーターの安西水丸さんの『たびたびの旅』を読む。安西さんは村上春樹さんの本にイラストを描いていたことで知っていたけれど、文章を読んだのはごく最近。和田誠さんとの共著『青豆とうふ』のタイトルは、村上春樹さんがつけたものだという。最後は、「世界を旅する黒猫ノロ」(平松謙三著)のページをめくり、海外の風景を眺めて旅の気分を味わった。

 「本で旅する」がお店のテーマ。「旅と本」は私たちのnoteにも通じるので、勝手に親近感を抱く。
 お店のWebサイトには、店名に込めた想いが書かれていた。

店名の「Via(ヴィア)」とは、英語で「経由」の意味を持ちます。お客様が当店を〝経由〟して、お座りのアームチェアから、本の世界に〝旅〟立っていただければ、そんな思いを込めています。

「本で旅する Via」Webサイトより

※写真は他のお客様がいない間に撮影しています

お腹を満たして、再び読書

食事の時には読書はおやすみ

 お店は席料を支払って利用する仕組み。ドリンクは2杯目、3杯目と金額が下がっていく。フードメニューもあるので、カレーと迷ったけれど、「ケークサレ」を選んだ。副菜がついてくるので、ボリュームたっぷり。野菜やキノコが添えてあり、このポテトサラダがまたおいしかった。

奥の席で、ものすごく集中して本が読めた

 考えてみたら、今まであまり外でじっくり本を読んだことがなかった。通勤、帰宅時の電車やバス、あとは自宅で読むことが多い。一人でランチやカフェに行く時には本を持っていくことはあるけれど、メニューが出てくるまでのつなぎ、みたいな感じだ。私は店の一番奥の席を借りた。少し奥まっているので、周囲を気にせず読書に没頭できた。

 気づけば2時間近く経っていた。同じ荻窪に最近話題の書店があると教えてもらった。「Title」という店名はSNSで見かけた気がする。せっかくなので行ってみることにした。

 店に入ると、気になる本がいろいろ。せっかくなので買い求めたのは、お店の名の通りタイトルが気になった『本を書く』(アニー・ディラード著)。
 本との偶然の出会いがあるから、やっぱり本屋さんは楽しい。暑い中を歩いたので、帰りはバスに乗った。久しぶりに東京でバスに乗って、これもなんだか面白かった。

ブックホテルで本に浸る

渋谷の書店で

 翌日は朝から友人と渋谷で待ち合わせ。TSUTAYAの中にあるスターバックスでおしゃべりした。気になる本が会ったときにすぐに探しに行けるのがいい。私たち二人が知り合うきっかけになったコピーライター・作詞家の阿部広太郎さんの著書『それ、勝手な決めつけかもよ?」が本棚に置かれているのを見つけて、思わず写真を撮った。

「BOOK HOTEL神保町」の入口

 昼間はこのnoteを作っている3人で久しぶりに集合。たっぷりおしゃべりしてから解散。私は神保町へ。東京に住んでいたこともあるのに、訪れるのは初めて。ただ到着したのが夜で、翌日も朝から出かけたので、有名な古書店街を見ることなく終わってしまったのは残念。でも、ここへ来たのはやはり本が目的。こちらもnoteで見つけた「BOOK HOTEL 神保町」へ。

 中へ入ると、早速、本棚に並ぶ本たちに出迎えられる。事前にアンケートに答えると本を選んでおいてもらえる「BOOKマッチングサービス」を利用したので、フロントには2冊の本が用意されていた。アンケートでは、どんなジャンルの本を読むか、興味のあること、などに回答。
 旅や食が好きだからか、ちょっともやもや、変化がほしい気持ちだったからか、こんな2冊を手渡された。『お誕生会クロニクル』(古内一絵著)と『スーツケースの半分は』(近藤史恵 著)。どちらも初めて読む作家だ。

BOOKマッチングサービスで選んでもらった本

 さらに今回は本とコーヒー、チョコレートのペアリングを楽しめる「ブックペアリング」プランを申し込んでいたので、本が1冊付いてくる。中身が見えないようになっていて、紹介文だけで選ぶ。短編集と長編小説で悩んだ末に選んだ小説。袋を開けると、一度読んでみたいと思っていた林真理子さんの小説『白蓮れんれん』だった。迷った短編集が何だったのかも気になる。

ブックペアリング

 部屋に向かう途中にも本がいっぱい。ロビーの棚に、エレベーターホールに。そして部屋の中にも。しまった、これは、もっと早くチェックインするべきだった。エレベーターホールの本は各階でテーマが決めてあるらしく、興味のある「旅と食」がテーマのフロアも覗きに行く。

隠れているけれど、大好きな吉本ばななさんの『デッドエンドの思い出』を発見

 部屋に置かれていたのは、私のために選ばれたのだろうか、と思うほど興味のある本ばかり。もしかしたら、選んであったのだろうか? 最近本を買った谷川俊太郎さんの詩集や、私の仕事に関わりの深い広告コピーの本もある。

『心ゆさぶる広告コピー』は持っていた
コピーと結婚。なんか深い

 ビールを飲みながら部屋に置かれていた本のページをめくる。ブックマッチングで選んでもらった本を読み始めるが、これはとても読み終わらない。偶然にもどちらも一つ一つ独立した話だったので、1章ずつ読む。「ブックペアリング」でもらったコーヒーを淹れて、また本を開いた。

枕元にも気になる本が。夜更かし決定

 翌朝は少しゆっくり出発できたので、出かけるまでまた読書。私は同じ作家の本ばかり読む読書スタイルだったので、自分では選ばない本、馴染みのなかった作家の本に出会えたのもよかった。

スーツケースの中に本

 行きのスーツケースの半分はお土産のお菓子だったが、帰りのスーツケースには、本が数冊加わっていた。なぜ東京に来て本を買って帰っているのだろうと思うけれど、これもまた旅の思い出。
 帰りの飛行機で、『1973年のピンボール』を読み終えた。読みかけの本、まだ読んでいない本が、家の本棚に増えていく。

 本と一緒に旅に出て、本と一緒に帰ってきた。また次の旅にも、本を手に出かけたい。出かけられない時には、本と一緒に旅をしよう。

▼今回訪れたところ

(Text & Photos:Shoko)  ©️elia


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