新型コロナウイルスで亡くなったのは高齢者が主だが、Long COVID(新型コロナウイルス感染症後遺症)を考えると流行の持続は何をもたらすのか

新型コロナウイルス感染症で死亡したのは高齢者が主だから社会にとっては感染対策は不要だった、と主張する人たちがいる。
実際、死亡者数、死亡確率の変化を見てみると、高齢者にかなり寄っているのは事実だ。

https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/18281

しかし新型コロナウイルス感染症は若い人にもLong COVID(新型コロナウイルス感染症後遺症)を引き起こす。
また、自覚症状がないままに認知機能を低下させる。

米国CDCのアンケート調査では、2024年時点で、人口の6%が現在罹患している。過去に罹患したことのある人は、20代から80代まで、それぞれの年代で人口の10%から20%だ。

英国では3%、中国では5-10%という報告がそれぞれある。

また、カナダの研究では、新型コロナウイルス感染症に1回感染した場合は、14.6%で後遺症を発症し、2回目で25.4%が後遺症を発症し、3回以上では、37.9%が後遺症を発症する。


https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/75-006-x/2023001/article/00015-eng.htm


つまり、感染を繰り返せば繰り返すほど、後遺症を発症しやすくなる。後遺症を発症した場合に、それが寿命にどのような影響をもたらすかはまだわからない。
しかし、立てない、歩けない、物事を集中して考えることができない、という症状は、働くことを困難にする。
実際、コロナ後遺症外来を受診した患者の40.4%が休職し、9.7%が退職したという日本からの報告もある。

身体機能の低下と収入の低下は寿命を短縮させうる。

さて、これをモデルで考えてみよう。
単純化するために、A,B,C,D,Eという名前の5人の登場人物を想定する。それぞれが0歳、10歳と固有の年齢を持つ。これをA(0),B(10)とする。
数字が50になると、死亡するとする。彼らは早死になのだ。

そしてコロナウイルスに感染すると年齢が10歳増えるとする。
これは特に突飛な仮定というわけではない。
重症COVID-19後の認知機能障害は50歳から70歳への正常老化に相当するという心理検査結果と、本文が読めないが、記事によればCOVID-19入院患者は、1年後に脳容積の減少や、血液検査で脳損傷マーカーの上昇がみられる、という報告がある。

それに、上記論文で言及されている前帯状皮質の容積減少というのは、報酬予測誤差の修正を難しくしたり、社会的認知を低下させたり、恐怖を感じづらくなり、人の痛みを感じづらくなるのではないか、という不気味な想像を生む。

さて、話を戻そう。
A(0),B(10),C(20),D(30),E(40)
ここで新型コロナウイルスが流行する
A(10),B(20,C(30),D(40), E(50)
50歳になったEは死亡する。
もう一度流行するとする。
A(20),B(30),C(40),D(50)

50歳になったDは死亡する。

さらにもう一度流行させる。

A(30),B(40),C(50)

これを繰り返せば、人口が単に減る、ということがわかる。
このモデルに組み込んでいないのは、後遺症による振る舞いの変化と免疫の変化だ。

Long COVIDによって歩くことが難しくなり、集中することが難しくなれば、学校、職場、買い物などに出かけることが難しくなる。行動制限に近い状況になる。そうすれば感染確率は下がる。

また、感染直後は免疫があるから、感染間隔は少し空くかもしれない。
一方で、T細胞の減少と機能的枯渇をはじめとする免疫不全を引き起こすという証拠が集まりつつある。

つまり、感染を繰り返すほどにワクチンが効きづらくなり、より感染しやすくなるシナリオがありえるのだ。諸外国の感染持続はこれを示唆しているように思える。

 こうした前提を考えると、今この瞬間が最も集団免疫が保たれている、という結論を引き出すのはそれほど奇妙なことではない。

結局、新型コロナウイルスが高齢者だけに影響があると言っていられるのは、4年前の死亡率のデータをもとに考えた時だけだ。

現在までに入手可能な証拠を集めると、新型コロナウイルス感染症があらゆる年代の人間の老化を加速させ、免疫を抑制し、平均寿命を短縮させるウイルスではないか、ということが示唆される。

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