Elephant in the rumor(えれるも)

えれるも、と呼んでください。 エリート過剰生産 社会格差 国家財政 少子高齢化 COVID-19 こういったキーワードで物事を考えていきます。 明快で生産性のある話題を書いていきたいです。

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えれるも、と呼んでください。 エリート過剰生産 社会格差 国家財政 少子高齢化 COVID-19 こういったキーワードで物事を考えていきます。 明快で生産性のある話題を書いていきたいです。

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医師として次世代運動(旧:反サロ)を支持する理由

僕は内科医をしている。そして高齢者医療自己負担3割(と、高額療養費の調整)に全面的に賛成する立場だ。その理由を簡潔にまとめると 後期高齢者自己負担が1割の状態は、3割と比べて 1.健康に対する利益が乏しい 2.財政負担が大きく、持続可能性に乏しい 3.人的資源の負担も大きく、人口動態を鑑みて持続可能性に乏しい からだ。 次世代運動は肥大化する社会保障問題を含め、現役層や次世代への莫大な皺寄せ負担となる問題に対して「当事者世代」として、声を上げて具体的なアクションを起

    • 予防医療への期待と現実

      予防医療、つまり高血圧、糖尿病、脂質異常症などを健診で発見し治療することで、長生きできる、脳梗塞や心筋梗塞を予防できる。 これは事実だ。 しかし大きく誤解されている点もある。 それは、降圧薬や糖尿病や脂質異常症を治療する薬を飲んでいる限り、脳梗塞や心筋梗塞にならない、という誤解だ。 80歳を超えると予防医療の効果は乏しくなる。 例えば80歳で降圧薬を内服しても、寿命を半年伸ばす程度の効果しか期待できない。85歳であれば最早死亡率に与える影響はわからない。 これは糖

      • 医学部地域枠ハッキング、もしくはマタイ効果

        マタイ効果とは、富めるものは時間と共にさらに豊かに、貧しいものは時間と共にますます貧しくなることである。「持っている者にさらに与えられ、持っていない者からは取り上げられる」に由来する。 さて、医学部地域枠は、マタイ効果の興味深い一例となる。 地域枠の地域くんと、全額自費の全額くんの人生を比較して眺めてみよう。 地域くんは地元の医学部がある都市に在住し、実家から自転車で通学可能とする。修学資金として月15万円を貸与されると仮定する。 実家暮らしの平均費用である、3万円を消費

        • 研修医「この診療って何の意味があるんですか?」

          *注 多分こんな研修医はいません。 19時の救急外来 救急隊から連絡が入る。 特別養護老人ホーム〇〇苑より救急要請、A山A子、87歳女性 主訴は発熱、SpO2低下、発症は1時間前、要介護5 ADL全介助、既往歴は認知症、高血圧、糖尿病 意思疎通は「うん」と発語するときが時折ある、程度。 家族は息子の嫁が2時間後に来院する予定 指導医「これから40分くらいで到着するから、準備をしておこうか。さるもちょうしんきって知ってる?」 研修医「はい。酸素、ルート確保、モニター…」

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        医師として次世代運動(旧:反サロ)を支持する理由

          新しい医師の仕事

          1940年頃、精神科病院入院、外来患者の4人に1人ほどは梅毒の末期症状である進行麻痺だった。 現代で進行麻痺を見ることは殆どない。梅毒は血液検査で診断が可能で、抗菌薬治療で軽快するからだ。 とはいえある医学領域において、感染症の後遺症が非常に大きな割合を占める、というのは別に珍しくはない。 日本における結核は似たような疾患だろう。 サナトリウムの存在は患者数の多さを物語っている。 1939年には、500人に1人が結核で死亡していた。 屋内での集団生活は結核を蔓延させた。

          入院患者の高齢化問題と、若い医師のモチベーションがなぜ低いままなのか問題

          2020年に病院で勤務した場合、入院患者の54.5%は、75歳以上である。 下の図表を見ればわかるように、病院に入院する総数1211300人(約121万人)のうち、75歳以上は6428000人(約64万人)である。 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000138077.pdf 後期高齢者の受診が爆発

          入院患者の高齢化問題と、若い医師のモチベーションがなぜ低いままなのか問題

          歴史から数理モデルに思いを馳せる。

          別に歴史を次々に起きる関連のない出来事の連なりと考えることもできるけど、そこにはジグザグの進歩のパターンがあると考えることもできる。 統合と分離、或いは発展と衰退の寄せては返す波として歴史を眺めることができる。 いったい何が帝国をばらばらの小国家に引き裂き、また異なる帝国が生まれるのか。 この繰り返しのパターンはどのように短縮され、延期されるのか。 ここに着目したのがピーター・ターチンだ。 彼は数理モデルを用いて帝国の衰亡を説明しようとする。 それは中国の王朝であった

          歴史から数理モデルに思いを馳せる。

          投資とはいつ死ぬかを決めることである

          長生きはすればするほどお金がかかる。 もちろん年金や健康保険、介護保険、高齢者医療制度、生活保護など社会保障制度が完備されている日本ではその事実は実感しづらいが、事実ではある。 一方で投資による収益は、原資が大きいほど大きく、複利を勘案すると早く、沢山投資するほうが大きくなる。 だから、若い頃から、たるべくたくさん投資すると長生きしても資金が足りる可能性が高まる。 現在を我慢してたくさん投資すると老後資金が潤沢になる可能性が高い。 一方で、あらかじめ長生きしないと決め

          投資とはいつ死ぬかを決めることである

          食べられなくなったら天井を見て余生を過ごすことになるがデフォルトの選択肢になっている。

          高齢者が病気の進行と共に安全な経口摂取が難しくなる、というのはよくあることだ。 実際、多くの病院で、診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)の項目から誤嚥性肺炎のデータを見てみると、誤嚥性肺炎患者の平均年齢は85歳くらいで、転院率は20%くらいになっている。 これは市中病院で働いてきた実感とも良く合致する。 誤嚥性肺炎で入院した患者さんの5人に1人くらいがどうしても経口摂取ができず、点滴を続けながら長期療養型病院に転院する。 長期療養型病院で人生の最後を過ごす

          食べられなくなったら天井を見て余生を過ごすことになるがデフォルトの選択肢になっている。

          ピンピンコロリは現状の医療倫理や法制度の元では困難である。

          ピンピンコロリとは元気な高齢者が急に亡くなることだ。 ある種の理想の死に方と言われている。 急に亡くなるの定義は特にないが、2-3日で亡くなるのもピンピンコロリに入ると考えよう。 となると、死因から逆算すると頻度の高いピンピンコロリは心疾患、脳血管疾患、肺炎、誤嚥性肺炎あたりが該当するだろう。 放っておくと苦しまない、という点では糖尿病のコントロール不良に伴う高血糖性高浸透圧症候群や熱中症も含まれるだろう。 心不全→利尿薬を含む薬剤治療と非侵襲的陽圧換気 不整脈→ペー

          ピンピンコロリは現状の医療倫理や法制度の元では困難である。

          新型コロナウイルス感染症の話がどうしても噛み合わない理由

          新型コロナウイルス感染症はいつの、どんなデータと知識で語るかによって認識が異なってくる。 理解を共通化するには、年表で簡単に振り返り、どの時点の知識で話をしているかをお互いに共有すると良い。 2019年  武漢市で新型コロナウイルス感染症が発生 2020年  動脈硬化リスクと加齢、肥満が重症化リスクと判明する。基本的には感染力の強く、重症化リスクのある肺炎と認識された。障害の主体は肺だが、血栓やリンパ球減少などの合併も報告され、剖検例で血管炎の機序も想定されたが、意

          新型コロナウイルス感染症の話がどうしても噛み合わない理由

          ポジティブなアドバンスド・ケア・プランニングを早期から行うことは価値観を元にした医療を実施するために、とても大切なことかもしれない

          本書はACP(アドバンスド・ケア・プランニング)ないし人生会議に関する本だ。 米国での緩和ケア医は、コミュニケーションの専門家としての役割も有している。 つまり、主治医が意思決定を促す上で困難を覚えた時にコンサルテーションを受ける立場なのだ。 実際、本書では悪性腫瘍の終末期や集中治療が長期化し集中治療を離脱できないとき、あるいはCOVID-19による重症肺炎といった様々な実例が出てくる。 本書にある、ポジティブな価値観の確認はかなり意味があることのように思えた。 そこか

          ポジティブなアドバンスド・ケア・プランニングを早期から行うことは価値観を元にした医療を実施するために、とても大切なことかもしれない

          社会保障制度改革は、第二次世界大戦への突入を止めるほど難しくはない

          社会保障制度は、第二次世界大戦に突入した大日本帝国のように行きつくところまでいくしかないと悲観論を語る人がいる。 しかし、これほど違いすぎる状況もない。 表にまとめる。 実はできることは非常に多いし、その政治的リスクは小さい。 まず、対立が国内で完結しているし、現役世代も高齢者も日本が良い国であってほしい、という点で利害は共通している。 日本が滅びても良いから私の年金と医療を充実させてほしい、と表立って発言する高齢者は少数派だろう。 一方で、米国と軍事的対立をしてし

          社会保障制度改革は、第二次世界大戦への突入を止めるほど難しくはない

          団塊世代と氷河期世代の経済的依存関係が社会保障制度を破綻させる

          このZ世代と氷河期世代の対立はネット上でも、実際に話をしてみても、よく見られる光景だ。以前これを僕はピーター・ターチンが提唱した「父と子サイクル」で説明しようとしたが、それ以外にも経済的な依存関係があることを本稿で示す。 Z世代から見れば、なぜ氷河期世代は社会保障制度を改革しようと思わないのか、と不思議に思うのは無理もないが、恐らく団塊世代と氷河期世代には経済的な依存関係が背景にある。つまり、社会保障制度が持続してほしいと考える事情がある。 団塊世代は、現在77歳から75

          団塊世代と氷河期世代の経済的依存関係が社会保障制度を破綻させる

          地方から見ると、後期高齢者は富を生み出し、子どもは富を流出させる。だから少子高齢化は進行する

          後期高齢者の医療費自己負担は極めて安く、その医療費は健康保険組合と国庫から殆どが支出されるために、地域を豊かにする。 これは貧しく、高齢者が多く、子供が地元に残らない傾向のある地方では確かに当てはまってしまう。東北地方が良い例だろう。 なぜこうなるかを具体的に示していこう。 また、これは最終的にどうなるかを、単純化したモデルを描きながら考えてみよう。細かい計算式が自治体によって違うので、いったん秋田県のデータを参考にしながら考える。 1.後期高齢者 まず、入院中の75歳

          地方から見ると、後期高齢者は富を生み出し、子どもは富を流出させる。だから少子高齢化は進行する

          認知症と尊厳死の相性の悪さ

          実は人生会議と認知症の相性は良くない。 勿論、ガイドラインは準備されている。 ・認知症は原則として緩徐に進行する。その過程で病識や状況を把握する判断力が徐々に失われる。 ・多くの医師は診察によって初期の認知症を判断できない。進行していても十分な認知症診療のトレーニングを積んでいない場合は、「家族が認知機能は年相応と言っていました」との発言を鵜呑みにして評価できないことがある。 ・これは患者家族も同様で、初期の認知症を疑うのは難しい ・病識の消失が初発症状事が多く、患者

          認知症と尊厳死の相性の悪さ