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新聞記者が考える子連れ防災グッズ

皆さん防災の日をご存知ですか。毎年9月1日には、広く国民が地震、津波、台風、高潮など災害についての認識を深め、対処する心構えを準備する日。日付は1923年9月1日に発生した関東大震災にちなんでおり、1960年から実施されている啓発デーなのです。

2歳の娘がいる我が家も、毎年この時期に、防災リュックの点検を行います。今回は、地震、津波などの災害取材経験を元にした私の防災への考え方と、常備している防災グッズをご紹介します。

※ただし、あくまで個人の見解ですので、皆さん、まずはお住まいの地域がどんな災害に備えるべきか、どんな災害が発生する可能性が高いのか、自治体や地域の避難マニュアル、行政の備蓄品を調べることをまず、強くおすすめします。

私はどんな災害の想定でも、基本的に、緊急持ち出し避難リュックは、自ら、もしくは夫が背負えて身軽な範囲でと決めている。これは娘が体重14㌔なので、娘を抱え、荷物を背負っても、走れるかを基準としている。

災害発生時には、これもあれも持って逃げないと、と「もの」を気にする人が多い。が、何よりまずは身の安全の確保、自らがケガをしない、全速力で走らなければいけないかもしれない、そして子どもを守らなければいけない、その1点に尽きると考えている。(※ちなみに私は、大災害が発生したら、現場や職場に向かわなければいけないので、夫がリュックを背負う想定だ)

この考え方は実は、太平洋戦争時に東京大空襲を経験したおばあさんから教わった視点だ。当時は、皆、ものが貴重な時代だったから「リヤカーいっぱいに家財道具や食料、ナベ・カマまで持って逃げたんだけど、それで渋滞もしたし、逃げ遅れて死んだ人もたくさんいた。結局、身一つで川に飛び込んで私は助かった」とのことだった。この証言を私はとても大切だと思っている。

特に、小さな子どもを持つお母さんたちは、非常時に色々と持たなければいけない、と強く思われることだろう。私もその一人だ。赤ちゃんから乳幼児だと、ミルク、ほ乳瓶、ミネラルウォーター、オムツ、おしりふき、肌着、着替え。ミルクの「お湯はどうしたら…」などとも思うだろう。必要なものはたくさんあるし、持って安全に逃げられるなら、もちろん持つべきだと思う。

ただ、2011年の東日本大震災時には、赤ちゃんに必要なものをたくさん抱えながら、逃げ遅れ、津波に巻き込まれた親子が少なからずいた。子連れは明確に、緊急時に手助けが必要な「要配慮者」であり、災害時に大いに他人の助けを優先的に借りていい人々なのだ。特に、津波や建物倒壊、火災の危険が迫るときは、何よりまず避難を優先、命さえあれば、あとはなんとかなる。自らの命や、また家族の命を失ってしまえば、かける言葉もない、励ますことも誰もできない。だからこそ、乳幼児連れは、周りに助けを大いに借りて欲しいし、そういう社会であってほしいと願う。

あとはケガをしない、これもまず大切だ。2018年の胆振東部地震のときは、私は震源地に近いところで勤務しており、発生直後に現場へ向かう途中、停電による暗闇のため転倒し、おしりに打撲を負ってしまった。そのまま、結構痛いなと思いながら、きつく手ぬぐいでしばったり、ばんそうこうをはったりして災害取材を続け、1週間後に病院に向かうと、腫れが大きく血が大量にたまっており抜いてもらった。とても痛いし辛いので、ケガをしないように慌てずにが最優先だと思う。

上記の経験上、水は、しばらくすれば自衛隊の人が運んできてくれるし、昨今では、乳幼児の紙おむつや液体ミルクを備蓄している自治体もある。お湯を沸かしてくれたり、たき火したりしてくれるおじさんがいたり、支援物資も随時届く。性善説に基づくが、多く持っていた人が、食料を分け合ったり、水をくれたり、オムツをシェアしたり…助け合う光景を私は確実によく見た。

また、災害発生時は、特に大人は食欲がない人が多い。眼前の事実に途方に暮れてしまったり、興奮状態に陥るからだと思う。避難所などで食料を受け取っても、食べてない人が多かった。現に私も3日くらい、まともに何も食べずに仕事をしていた。食べられないのだ。だから、大人は特に何も食べなくても、何とかなる。もちろん、体調と体力を維持するために、食べた方がいいのだが…。

その上で、私が常備している持ち出し用防災グッズを少し紹介する。
リュックは登山用の防水35リットル。

娘関連
・おむつ15枚
・おしりふき1パック
・フリースTシャツ
・ずぼん(速乾性素材)
・下着(1枚)
・ジャンパー(1枚)
・布マスク(2枚)

通信
・電池式ポケットラジオ2つ(念のため2つ)
・電池式携帯充電器(※これは停電に備え必ず電池式)
・助けを呼ぶホイッスル

燃料や暖をとる(北海道は夏でも夜寒いので重点的に)
・エスビットポケットストーブ(固形燃料2つ)
・ライター2つ(※喫煙者以外は意外と持っていない。火はとても大切)
・エマージェンシーシート1枚(※避難所や野外でもくるまると温かい)
・モンベルの軽量ダウン1枚
・カイロ
・電池(これはとても大切)

小さくて、火力もよく、アルファ米や乳幼児のミルク用のお湯もわかせる。胆振東部地震では、これで生まれたての赤ちゃんのミルク用にお湯をわかしているお父さんがいた

暗闇対策
・ヘッドライト
・小型懐中電灯2本

食料・水
・アルファ米(6パック)
・パン(1缶)
・水(500㍉㍑6本)
・緑茶・珈琲パック数個
・プラティパスなどのボトル大小2つ(※給水受け取り用。より大きければベスト)

調理器具
・アウトドア用なべ
・スプーンとフォーク
・万能ツール(缶切り、ナイフなど付き)

停電時はとりあえず夜が暗い。ヘッドライトは両手が空くので危険な場所を歩く際、便利だ

衛生
・トイレットペーパー1つ(芯を抜くとパッキングしやすい)
・固形石鹸、シャンプー、リンス(ホテルのアメニティを随時ストック)
・液体洗剤(1つ)
・手ぬぐい1枚(速乾性に優れとても大切。ケガの応急措置用も兼ねる)
・軍手
・消毒液・ばんそうこう(大判がベスト)

とりあえず、夫と娘の2人分、発生から3日分想定だ。食料は主に娘分。

あとは、車での津波避難を想定している人々は、緊急時に、車の窓ガラスを割るハンマーなども車に入れておくとよいと思う。

この他に、自宅では麦茶を1箱常備、オムツは少し多めに常備というかたちだ。※乳幼児や高齢者オムツは、都市圏じゃない限り、コンビニなどで手軽に買えない。ドラッグストアやスーパーにしかないので、そこが営業しない限り、なかなか手に入りずらい側面があるのだが、災害時には、ドラッグストアやスーパーが迅速に物資提供してくれる協定を自治体と結んでいるところもあるし、たとえ店が閉まっていても善意で売ってくれたりもしたりしするのを目にしたこともある。

ミネラルウォーターは、北海道は水道水を飲めるので、ストックを続けると賞味期限切れになってしまい、なかなかストックする気がおきない。ただ、麦茶なら我が家はよく飲むし、非常時には麦茶でごはんも炊けるので経済的だ。

最後に、想定外は必ず起こる。助けてくれるかもしれない自治体の人や消防の人、警察の人、被害を伝え・支援を求めるメディアの人間も命を落とすことがある。東日本大震災後、行政や消防の職員も、緊急時には、ギリギリの状態になる前に支援をやめて退避を取り決めている自治体もある。これは、震災で多くの自治体・消防職員などが犠牲になったからだ。もちろん我々メディアも自らの命を守る行動をとる。

マニュアル通りにはいかない。だからこそ、命を守る行動は、想定外にも備え、各自の状況や環境を踏まえ、熟考してほしい。

災害時の悲惨な記事はよく読まれる。一方で、防災記事はあまり読まれない傾向がある。他人の悲劇はセンセーショナルなので、あくまで人ごととして、視聴率がいいのかもしれない。防災記事をどうしたら多くの人々に読んでもらえるのか、研究を続けなければいけないと、日々考えている。




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