薪割りトーヤのペーサーとして参加したKOUMI100 2023
6月27日
インスタのストーリーを見ていたら、厚木大学&高松山グルグルクラブのトーヤ君 a.k.a "薪割りトーヤ" が、KOUMI100のペーサーを募集していた。こんな機会はなかなかないと思い、すぐにペーサーをしたいと連絡を入れた。同じく若きホープでもある仲間の ”ヤノケン" も手を挙げたようだが、おじちゃんに気を遣ってくれたようで譲ってもらうことになった。
KOUMI100とは、1周35km、1500 D+のコースを36時間で5周するトレイルランニングレースで、ペーサーは4周目から参加することができる。スタート&ゴール地点に何度も帰り、同じルートを辿らなければならない。先がわかりやすい分、心が折れて諦めやすいコースだと感じている。
自分は2020年、2021年と2回完走しているが、特に20年は雨でドロだらけになり、えらい目に遭ったレースだった。その時はフジ君にペーサーをしてもらい、そのお陰で最後まで進み続ける事ができた。いつかはその恩を誰かに繋げたいと思っていた。
今回、トーヤ君は18歳、トレイルレース3戦目にして100マイルに挑戦するという。このビックチャレンジに協力する機会をもらえたので、ペーサーとして出来ることを最大限考えて挑むことにした。
試走
本番1か月半前の8月中旬。同じくKOUMI100に挑戦するケースケさんとトーヤ君の3人でコースの試走を行った。八ヶ岳の高見石小屋に務めているトーヤ君は、日ごろから歩荷をしていたり、その前は丹沢のバリエーションルートばかり巡っていたそうで、体幹が強くてブレが少ないし、バランス感覚も優れていると感じた。登り下りとも安定感があり、特に登りはとても力強かった。一方で周の最後の方で脚攣りが起こってしまった。体幹が強い分、下りもハイペースで下ることができてしまうため、かなりの衝撃が脚に入ってしまうようだった。ロードでも走っている時の一歩は自分よりトーヤ君の方が歩幅が広かったので、一歩のダメージをなるべく抑えるために、序盤の下りを特に気を付けてペースメークするよう伝えた。
彼の偉いところは、何でもかんでも聞いてくる訳ではなく、自分なりに考えて本当にわからない部分のみを聞いてくるところだった。そのため、大会前に共有したことは、大体の周回計画ぐらいで、あれこれ伝える事もなく、あっという間に本番の日になっていた。
大会当日
1-3周目
スタート前に会場には行けなかったが、2周目終了時にトーヤ君の顔を見ることができ、安堵した。ここまでしっかりとペースコントロールができており、とても元気そうで、脚も残っていると言っていてかなり順調そうだった。表情も明るく、食事も出来ていたので一安心。
3周目のスタートを見送り、余裕をもって準備をし始めることができた。2時間ほど仮眠も取ることができた。そして、準備を整えトーヤ君の帰りを待つ・・・がなかなか帰ってこなかった。
予定時間を40分くらいオーバーした0時35分頃 (スタートして19時間35分頃)ようやく帰ってきたε-(´∀`*)この後、休憩を入れながら同じペースで4周目を進むと、制限時間がかなり迫ってきていることが分かった。とはいえ、補給を疎かにはできないため、しっかりと食べて1時5分。ついにペーサーとしてトーヤ君と一緒に出発。
4周目
ここで自分のやるべきことを改めて心の中で整理し、・ペースコントロール ・補給のタイミング ・眠気覚まし ・希望を持ち続けられるように励ます この4つに集中する事を決意した。まず、3周目が予定より遅くなってしまった理由を聞いてみた。どうやら足が痛くなってしまったらしい。4周目の走り出しのロードは一緒に走れていたし、受け答えもしっかりとしていた。胃腸の調子も良く食べられていて、表情も良かったのでかなり望みありと判断した。
KOUMIの完走するためのポイントは4周目。4周目が終われば、「あと1周何とかしたい。」と思えるからだ。ただ、制限時間ギリギリだと、「もう無理かも…」という心理が働いてしまうので、余裕をもって帰ってきたかった。その余裕をどう作るかがポイントだと考えて、トーヤ君の強みである登りを上手く使おうと決めた。最初の林道から走るまではいかないけれど、なかなかのペース(1周を6~6.5時間で回るイメージ)で登った。そのため、抜かれた小野さんやカナちゃんに追い付くことができた。脚が少し痛いと弱音を吐きつつも、ヤノケンに『笑顔を絶やすな』『いっぱい食べろ』と言われたことを守ってきた(イイ事言うね、ヤノケン!!)おかげで、表情も脚の動きもかなり良く見えた。素直に言われたことをやる真っ直ぐな子なんだな~なんて思いながら進んでいた。
ペースも落ちずにしっかりとついてくるので安心したのも束の間、今度は睡魔が襲ってきたようで、曖昧な返答の時間が出てきた。多少眠くても速度が落ちないように進み続け、「ゴーゴー!」「ナイス!」「行ける!」「完走したら年代別優勝&史上最年少だ!」とか言いまくった。あとから考えると、少し頭を動かすような質問をしても良かったような気がするが、語彙力とアドリブ力がない自分は励まし&声掛けしか思いつかなかった。エイド等のスタッフの方々にはトーヤ君が10代で参加している事を宣伝しまくり、より彼が応援して貰えるようにし、他の選手を抜いたりすれ違ったりするタイミングでは、普段以上に明るく挨拶をして、返答を貰えるように意識した。僅かな返答や応援でも、その積み重ねが完走率向上に繋がってくると自分は信じているからだ。
そのままの勢いで一気にニュウの分岐までいき、4周目のスタートから30~40人抜いたが、さすがに眠気のピークに来たということで、「1~2分寝たいです…。」との申し出を受け入れた。そこでペーサーをやっていたムッキーさんに遭遇。その後は、ドロドロスリッピーだったので慎重に下り、平坦になってからほぼ休まず走ってロードに到着。ロードも登りは軽快に歩き、平坦と下りはちゃんと走っていて順調だった。途中の稲子湯で自分一人がトイレに行っている間に相当差をつけられていて、トーヤ君に追いつくのにキロ5分切りで2km以上かかった(゚Д゚;)その後の本沢エイドまでの登りロードもいいペースで歩けていたし、林道下りも淡々と走って、ついにロードに出ることができた。正直ここでいける可能性が相当高いと感じたが、まだ油断できないので出来る限り走り続けた。ただ、ゴール前の坂だけは5周目のウィニングランにとっておこう!と歩きながら話して会場に到着。何とか制限時間に対して1時間以上余裕をもって4周目を終える事ができた。
5周目
少し余裕ができたので、きちんと補給をすることにした。そばを食べたり色々やっていたりしたら、何だかんだで35分も経ってしまったようで、後から考えるとこの時間は少し勿体なかったのかもしれない…。
ただ、その際にライターの方からペーサーの取材で声を掛けられ、18歳の選手を何とか完走させるために来たという話をしたことで、トーヤ君本人への取材に繋ぐことができた。完走したら公式に絶対に乗せるから!との話を頂けた。それがこれなのかな?
もう4周終わったとはいえ、まだ35kmあるため油断はできなかった。しかも、雨が強まり、じっとしているとどんどん体温を奪われる過酷な状況になってきた。なので、まだ脚の余裕があるであろう登りは、4周目より少しだけ落とすくらいのペースで進むようにした。脚が痛いと言いつつも必死でついてくるし、絶対に完走するという心の強さを感じた。途中、仲間からの連絡でカナちゃんは5周目に突入したが、ケースケさんはダメだったという連絡が入った。その連絡を聞いて、更にトーヤ君は気合が入ったようだった。一緒に練習し、試走までした仲間の気持ちは痛いほどわかるのだろう。自分も何としてでもゴールに連れて帰りたいという想いがより一層強くなった。
その一方で、雨はさらに強まり林道が川のような状況になっていった。そんなタイミングで、また睡魔が襲ってきたようでフラフラし始めていた。なんなら半目をつぶって歩いていた(˘ω˘) 器用だなぁ~と思いながらも、この寒さで眠気と疲労で動きが悪くなり、より体温を上げられずに悪循環に陥る事だけは避けたかったので、とにかく声をかけまくって進んだ。5分寝たいというので次のエイドで仮眠を取ることに決めた。本沢エイドにはコーヤさん&すずさんペアがいたので、自分は少し話をしつつトーヤ君には寝てもらった。ちょうどヒーターがあり、雨を避けて温まりながら休むことができて助かった。
少し寝て休めたお陰で、多少顔がスッキリしていた。ちょうど雨が強いタイミングだったので、長時間雨の中にいる事を避けられたのも良かった。エイドを出てからの下りは走り通し、平坦になってからは歩きに切り替えて進んだ。眠れたこともあり、受け答えもハッキリしてきたので少しホッとした。程なくして稲子湯エイドに到着。そこでなんとシミシミとリョーさん a.k.a“風鈴火山”が待ってくれていた!これはとても嬉しいサプライズで、更にトーヤ君も元気になって楽しそうに会話をしていた。強めの雨が続き、ここからの山パートはさらに厳しくなることがわかっていたので、そこに向けて良い刺激になったと感じた。いよいよ最後の山パートに突入するが、雨の影響でかなり滑りやすい部分が増え、場所によってはトレイルが小川になっているような部分もあり、前に進むには相当過酷な状況であった。そして時折睡魔が襲ってくるようで、会話していたはずが急に返事が返ってこなくなり、後ろを振り返るとしゃがんで寝ていたなんてこともあった(=_=)それでもやはりトーヤ君は登りが強いようで、他の選手を抜きながら登っていった。登りの途中では、コーヤさん&すずさんペアや、ペーサーをしていたタグゾーさんにも会え、やっとの思いでニュウの分岐に到着できた。
時間に少し余裕があり、ここからの下りでケガしてふいにする訳にはいかないので、ペースをさらに抑えるようにした。さすがに足が相当痛いようで、ボロボロで踏ん張りがきかない脚を必死に使ってついてくる姿に胸を打たれまくった…。それでも何とかして前へ進み、ついに斜度が緩やかになった。正直、ここで完走はほぼ間違いない!!!と思えた。そんなタイミングでトーヤ君に「完走の確立はどれくらいですかね?」と聞かれた。「100%間違いないよ!!!」と言って安心させたかったが、最後まで何があるかわからなかったので、「だいたい80%くらいかな~。」と厳しめな答えを言ってしまった。(ごめんね、トーヤ君…)未だかつて経験したことがないであろう痛みや眠気、疲労を味わいながらも、ゴールを目指すひたむきな姿に心揺さぶられた。そして気づかれないようにこっそり泣いた。
良い感じでロードに辿り着いたので、思わずここまでの頑張りや、色々な事に耐えて進み続けた強さなどを褒めた。その結果、今度はトーヤ君が泣いてしまった。自分も泣きそうになり、思わず話題を変えてごまかした(/ω\)その先のロードもゆっくりながらも走って下り、稲子湯エイドを通過。
本沢エイドまでの登りもそこそこのペースで歩き続けたが、やっぱり眠気がひどいとの事で、先にエイドまで走って行き、スタッフの方にコーヒーを作って貰う事にした。それを飲みながら進み、ついに最後の下り林道区間に突入。けれど、トーヤ君の脚はほぼ終わりかけていて、走る事ができずスリッピーな下りをゆっくり歩いて下るのが精一杯な状況になっていた。そのため、途中でポールを出して使って貰うが、速さはたいして変わらず、カナちゃん、コーヤさん、ペンちゃんさんや他にも色んな選手に抜かれた。それでも、必死に一歩一歩進み続ける姿にまた感情が溢れて出てきたので、悟られないように距離を取って歩いていた。徐々にトレイルの終わりが近付いてきて、何とかロードに到着。ついに2人でゴールを確信することできた!!!トーヤ君にもようやく安堵の表情が出ていた。残り2㎞を完走を称えながら歩いて進み、みんなが待っているゴールへ向かった。
ゴールでは高松山の仲間が迎えてくれた。その中でもケースケさんが泣いている姿を見てまた泣きそうになった。ついに仲間に囲まれながらのゴール!
35時間26分、総合99位、年代別(10代)優勝だった!
彼の強さは本物だった。自分は、ロングレースのたびにやめたいと思う事が多々あった。しかし、トーヤ君は「完走しに来ているから、やめたいとは微塵も思わないです。」と言っていたのが印象的だった。絶対に完走したいという想いが身体を最後まで動かし続け、ゴールに導いたのだと感じることができた。奥底に隠されていた新鮮な感覚に触れられたような気がして、自分の今後の励みにもなった。
自分がトレイルランニングを始めた頃は、レースに出るだけで楽しくて仕方がなかった。けれど、いつしかどれだけキツさに耐えられるか?という感覚に変わってしまっていた。今回、トーヤ君のペーサーをすることで原点回帰できたような気がして本当に良かった。
なぜ自分は走るのか?それは人生をより豊かにしたいから。そのためには様々なことにチャレンジし、達成感や幸福感を味わうことがより人生を豊かにできるのではないかと考えている。様々なことに挑戦し、達成感や幸福感を感じる人達が増え続けたら、世の中少しずつ良くなるんじゃないかな?なんて思っている。これからも色々なことにチャレンジしたいし、自分の姿を見てチャレンジしてくれたら嬉しいし、今後もチャレンジしようとしている人を応援していきたい。
いつか100マイルで勝負してくれるって言ってくれたので、それを楽しみにこれからも練習に励みたいと思う!
トーヤ君、本当におめでとう!!そして素晴らしい時間をありがとう!!!
今回のKOUMI100の振り返りとして、トーヤ君と共に、高松山グルグルクラブのヤノケン、ミチタローがパーソナリティを行っているPodcast ”ニーマルハシルコネクト" に出演させて貰いました!もし良かったらお聴き下さい。
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