第1回房総半島1周280K 後編
前編はこちらをご覧ください。➡ LINK
A3滝口駐車場 (137km) 17:26経過 3位 区間 48㎞ 6:42 2位
エイドに入るなり3位だと言われたけれど、記憶の中では2人しか抜いていなかったので、少し混乱した。ただ気にしてもしょうがないので、補給に頭を切り替えて卵サンドとフルーツポンチを頂いた。炭酸飲料とフルーツの組み合わせが絶妙で、リフレッシュ!!さらにエイドの方々や、義姉と談笑できて気が紛れた。本当に優しくランナー目線な方々ばかりで、居心地が良く長居したくなった。ただ、これから訪れる昼の天候を考えると、気温が低い夜のうちになるべく進みたかったので、後ろ髪を引かれる思いで早々に出発した。走り始めると、今度は右ふくらはぎが攣りそうな感じが続いたので、右脚に力を入れない意識を強めた。
早く進みたかった理由がもう1つあった。それは、これから訪れる日の出をなるべく綺麗に見たかったからだ。東側の海岸線沿いに行くことができれば、より確率が上がるだろうと考えて走り続けた。段々と空に色が付き始め、夜明けが近づいてきた。その結果、運よく海岸線沿いの神々しい雰囲気の日の出を拝む事ができた。
日の出前後の独特な空のカラーバリエーションを楽しみ、これか始まる灼熱地獄に備えるために一度立ち止まった。ヘッドライトをしまいサングラスを出し、日焼け止めを多めに塗った。塗る際に脚や腕が塩だらけだったので、改めて塩分補給に気を付けようと思い再出発した。日が昇るにつれて、日差しが肌に突き刺さるようになった。まだ7時前にもかかわらず、暑さを感じるようになったので歩きを交えて進むようになった。そんな中、2位を走っていた荒井さんに追い付いた。挨拶をした時の感じは元気そうで、復活するかもなと思えた。そののち、自販機とコンビニで補給しつつ進んでいると100マイル達成!
それでも残り125㎞….。このあと地獄が来るかと思うと心が萎えた。完走することよりは、はやく辞めたい気持ちの方が強かった。ここで、津軽みちのくジャーニーランに参戦中の、Podcast 20HashiruConnect の水野 倫太郎a.k.aミッチーから、グループLINEに、”【募集】股擦れ対処法” の連絡がきた。どうやら、相当な股ズレに遭遇して苦しんでる模様。自分が見聞きした範囲でできそうな事を連絡しつつ、自分も気を付けようと思えた。そして、気温上昇に反比例する形で走る意欲が減るのを体感しながら、何とかA4江見に到着。
A4江見 (165km) 21:44経過 2位 区間 28㎞ 4:17 2位
エイドでうどん2杯とスイカを頂いた。食べている途中で荒井さんも到着。少し復活したとおっしゃっていて、足取りが軽い感じの走りでエイドに来たので安心した。勝手に他の参加者を過酷なサバイバルゲームの仲間だと思うようになっていたので、自分も元気が出た。そのまま先に出発し、荒井さんの走りを意識しながら最初は走っていたものの、8時を過ぎるととんでもない日差しと暑さで走る気力が全く出なくなった。少し走ってはしばらく歩くを繰り返すようになった。コンビニに寄ってアイスや氷を使ったが、やはりたいして走れず、歩く時間がどんどん長くなっていった。ダラダラとしか走れない事を気にして落ち込み、やめたい気持ちが際限なく増していった。このままでは良くないと思い、しっかり歩くことを選択して意識的に進み、CP6仁右衛門島(170km)に着いた。noteを書いていて気付いたが、さっきのA4からたった5kmだったとは…。気持ちの浮き沈みによって相当遠くに感じていた。
その後通った鴨川のビーチには、海水浴客が集まり始め、賑やかでキラキラした世界が広がっていた。そんな中、身体を冷やすために寄ったトイレで年配の方に話しかけられた。何をやっているのかを聞かれたので、大会の事を話したら「こんな暑いなかそんな無理しちゃダメだよ!」と注意された。確かにその通りではあるけれど、なんだかモヤモヤ…。ただ自分は天邪鬼な一面もあるので、完走欲に少し火が付いた。普段の通勤ウォーク(毎月80km位)のリズムを意識し、きちんと腕を振って歩くようにした。鴨川シーワールドに向けて歩いている家族客をどんどん抜かし、リズムを掴みつつ進んだ。選手じゃなくても、人を抜いていく事は元気になると気付けた。ひたすら歩き、たまにでてくる下りだけは重力の勢いを使って走り、CP7誕生寺(186km)に到着。
ついに残り100㎞となった。ここからは海岸線特有の海辺に出たり崖上に上がったりの繰り返しの道になり、より厳しさが増してアップダウンにスタミナを削られていった。途中、行川アイランド駅横を通過したが、とても寂れていた。千葉県湾岸沿いの栄枯盛衰の儚さが凄いなって思いつつも、それ以上に自分の衰退具合が露呈し始め、時速5-5.5kmでしか進めていなかった。このままでは、3日目の昼間に突入してしまう恐れを感じた。すると、自治体の防災放送が流れ、高温のため外出を控えるようにお達しが出た。できる事なら室内でゆっくりしたかったが、ここでも天邪鬼パワーを活かし頑張ろうと思えた。ただ、今度は眠気に襲われ始めた。そのため、カフェインピルを飲みビーチ沿いの日影になっていたベンチで5分間休憩をとった。風があったので、ザックを下ろして身体の全面を冷やすことができて少し体温が下がり、夢も一瞬見られたのでスッキリして再出発。
そこから少し進んだところで、運営の方が車で逆走応援(生存確認)をしてくれていた。この暑さなので、全員走らず歩いていると教えてくれた。自分だけが走れていないのではという不安な思いが解消され、みんなが諦めていないという事の刺激で、前向きに歩き続ける意欲が持てた。
トレイルもロードも、距離や時間が伸びるほど”ゴールしたい!”という欲と”今すぐ辞めてラクになりたい!”という欲のせめぎ合いが激しくなる。そんな中で、少しでも気持ちを浮上させるきっかけを掴み、気持ちの浮上を糧に距離を進める事がとても重要だと感じている。進んできた距離が増し、ゴールが近づくほど、”ゴールしたい!”という欲が強くなるので、間違いなく心が折れづらくなる。ただ、ゴールがないバックヤードはまた別なんですけどねw
そんなこんなでなんとかA5に到着。
A5官軍塚 (204km) 28:09経過 2位 区間 39㎞ 6:24 1位
ここでは、焼き鳥とバームゼリーとバナナを頂いた。バナナはなんと1本500円!!!最初は冗談かと思っていたが、冗談じゃない事がわかり、甘さが格段に増した気がしたw ここのエイドでも運営の方に優しくしてもらい、元気を取り戻し再出発。細かなアップダウンを繰り返し、1回大きく下ったあと、長い登り返しのところですれ違ったデリカD:5がわざわざ折り返して戻ってきてくれた。アップルジュースと冷えた桃を振舞ってくれて、生き返る。さらに、1位との差もそこまでないと教えて貰い、かなり忘れかけていた順位の意識が少し戻り、できるところまでは頑張ろうと思えた。とはいえ、脚の疲労が取れるわけではないので、下りのみを走ることを続けた。夕方になり、少し日差しが弱まってきたところで眠気がまた出てきたため、カフェインピルを摂取して、近くにあった日陰のベンチでまたしても5分間休憩した。今回も少し夢を見る事ができ、すっきりしたので再出発。ただ、今度は少し違和感があった股ズレが痛みに変わってきた。ワセリンを持っておらず薬局までも距離があったため、色々考えた結果、試しに日焼け止めを塗ってみた。メチャクチャしみて痛かった!!ただ、摩擦係数は下がったようで、痛みをごまかせる程度に改善されたし目が覚めた。日が傾き始め、ビーチから帰り始めている充実した表情の人達や、日焼け止めを塗らず真っ赤になった人達が増え始めるなか、汗だく股ズレ&日焼け止め股塗りおじさんがひとり、ビーチサイドを黙々と進んでいった。日焼け止めも効かなくなり始め痛みがまた出始めたので、股ズレ患部とインナーが当たらないように手ぬぐいを腿に巻き付けてみた。意外と痛みが消えるポイントを発見し、テンションが上がったところでCP8岩船地蔵尊(221km)に到着。
ここで近所の方から、「今回の大会の情報を見たよ。頑張って!」と応援されて気をよくして進むも、さっそく200mくらい道を間違えて引き返した。だいぶ日が落ち暑さのピークが過ぎた感じが出たのと、厚木大学や高松山グルグルクラブの仲間からのLINEに励まされて、徐々に走れるようになった。ミッチーも諦めず進んでいるようで、自分もここまで来たからには絶対にゴールしてやろうと思えた。そして、国道128号線に出て薬局を発見。ワセリン、inゼリー、ドリンクを買い、補給しながら夜間走の装備へ変更し出発。しっかりヘッドランプの電池を替える事も出来たので、まだ頭は動いているようだった。ここから少し走れるようになるが、走ると今度はエネルギーを消費するようで空腹感が増した。そのため、数キロ先のコンビニに寄ってざるそばを食べた。今回、唯一コンビニで買った固形物だったが、腹に溜まる感じが良かった。滞在時間短縮を重視し、コンビニでは固形物を避けてきたが、あとから考えるともう少しうどんやそばを食べても良かったのかも。この後は、日も落ちたお陰で、前を追おうと思えてなんとか走り続けられた。ただ、2回目の夜を迎え、1位の人に追いつこうと思った影響なのか、前方に見える街路樹や看板がすべて人に見え始めた。最初は近づくたびに人じゃなくなるので、変だなーと思っていたが、途中から見える人は全て幻覚だと気付いた。そのため、最初から人は幻覚だと言い聞かせる事でやり過ごした。
更にこっちに手を振る親子の幻覚まで見え始めた。ついに脳がバグったと思って走って近づくと、まさかの妻と息子が応援に来てくれていた!お陰で完全に元気を取り戻し、信号以外はすべて走れるようになった。本当にメンタルスポーツだなと実感し走り続けるが、自身の体温上昇に気付くのが遅れ、若干の気持ち悪さが出たためコンビニにピットイン。アイスコーヒーを一気に飲み干し、残った氷をジップロックへ入れ頭に乗せ、凍ったペットボトルを脇に挟んで5分横になった。寒さを少し感じつつ夢を見られたおかげでなんとか復活。ここからは、歩きを交えながら走る事で体温を上げ過ぎないように気を付けた。途中で気付いたが、北進中は追い風になるため、走ると身体周辺の空気が変わらずに冷えにくくなっていたようだった。その後、またしても無限幻覚ループに陥るも、2回家族の応援を貰ったり、ユカちゃん達の応援を刺激に現実に戻ったりして、歩き多めで何とかA6に到着。
A6十割そば風 (250km) 37:29経過 2位 区間 46㎞ 9:20 2位
ここでは、冷奴と甘酒を頂く。ここのエイドでもみんなに優しくして貰ったり、元気だって言って貰えて癒しをいただいた。さらに1位との差が20分だと知り、前の区間の46kmで40分縮めた事から、1位になりたい気持ちが再び出始めた。この意識のお陰で、また淡々と走り続けられるようになった。最初の国道沿いは、車も通っていて刺激があったが、しばらく走っても前にも追い付く気配がなかった。車が少ない道に入ると、疲労と眠気で徐々に歩きが増えていった。そして歩きながらどうやら寝てしまい、時計のコースロストアラームで起こされた。さすがにヤバいと思い、カフェインピルを投入するも多少眠気が解消される程度で、街灯がない寂しい道をひたすら歩き続けてCP9小中池公園(263㎞)に到着。
ここからはただ公園内を通過するだけかと思っていたら、なんと階段トレイルが現れ、かなり登る事に。
さすがに脚が動くようにはならなかったが、少し目が覚め昭和の森公園へ到着。行きたい方向に遊歩道やらサイクリングロードやらが3本以上あり、どのルートが正解かわからなかった。何度かうろうろしながら、方角を頼りに進み公園を脱出した。こんな夜中の公園に、若者の声が響いていたのにも驚ろかされた。ここまでそこそこ頑張ったが、全く1位の人の背中が見えなかった事にさすがに心が折れ歩き続けた。家族が待っていたコンビニに寄り、妻には「もう1位はいいからゆっくり休んで、歩いてゴールするよ」と弱音を吐いた。すると、「30分くらいこのコンビニにいたけど、1位の人通ってないよ」と言われた。確かに、自分も寝ながらロストをしたり、公園を彷徨ったりしたので、1位の人にも何かが起きてどこかで順位が入れ替わったかもしれないと思った。その瞬間、優勝したい欲があふれ出した。コンビニでの補給を早々に済ませ、また走りだす自分がいた。ここからは、後続に追い付かれるかもしれないという恐怖が出て、ひたすら後ろを振り返りつつ走り続けた。30mくらい高度を上げる坂もあったが、それすらも走り抜けられたのには、さすがに自分でも驚いた。改めてメンタルの重要性を感じた瞬間だった。ここまでくると、完走&優勝意欲が相当でてきて、眠気はどこかへ消え去った。そのため、それ以外で脚を止める3要素である、体温上昇、水分不足、エネルギー不足に気を付け、持っているものを使ってこまめに補給を続けた。ただ、どうしても後ろが気になり、補給で寄ったコンビニにいた妻に、「後ろとどれくらい離れているかを見に行ってくれ」と、ある種の暴言を吐いてしまった。普段の自分には全くない感覚だったので妻も驚き、「後ろは気にするな!前だけを見て走り続けろ!」と叱咤され我に返った。徐々に空が明るくなり始めたところで、CP10おゆみ野あきのみち公園(277㎞)に到着。
残り8㎞、優勝したい意欲がさらに高まる。市街地に入ったせいで信号で止まる事が増え、じれったさが増す。そのたびに振り返って後方を確認していたが、幻覚が振り向いた先にも出ていた。もう走り続けるしかなかった。そのうち徐々に幻覚にも慣れ始め、見分けがつくようになってきたが、あとから考えると、幻覚を見分けるってだいぶ脳みその無駄遣いだと思えた。残り3㎞くらいのところで最後の妻の応援を貰い、気力を振り絞り、走り続けて何とかゴール!
ゴール (285km) 43:03経過 1位 区間 35km 5:33 2位
本当に長く苦しい自分との闘いだったが、何とか3日目の日を浴びる前にゴールできた。終盤はこんなに順位を意識するようになるとは思っていなかったし、こんなにも後ろを振り返りながら走るなんて想像していなかった。あれだけやめたいと思い続け、長時間走れず歩き続けたはずなのに、ラストの20㎞は信号と跨線橋以外はほとんど歩くことなく走り切れた自分に驚いた。一緒に走った選手や、長時間対応してくれた運営&ボランティア&応援の方々、一緒に練習している仲間、家族の応援や支えのお陰で心がもったのは間違いなかった。ほとんど単独走だったが、みんなと一緒にゴールを目指している感覚だった。遠いゴールを意識するのではなく、1つ1つ次のCPやエイドをクリアする事に集中して進むのも良かった。このレース中に使ったコンビニは計18か所、自販機は多分5か所。目をつぶっていた時間は合計15分弱で、休憩を最小限にとどめながら進めた気がする。
最終的に、自分の時計では289km、累積獲得標高2222m D+、完走者は62名中12名で、完走率19%というなかなかハードコアな結果になった。
今回、最後まで進めた要因の1つが、自分との対話を楽しめたという点だと思う。途中でも書いたが、走れなくなる理由は、
・メンタル
・眠気
・体温
・水分
・エネルギー
・体力/痛み
かなと思っている。ただ、メンタルは、他がキツイ状況のため落ちるという関係もある。それぞれの状況を感覚的に切り分けて把握し、どれが限界に近いのか、どう優先順位をつけてカバーするのかを考え、補いながら進む事に楽しさを見い出せた気がする。どれか1つでも限界を超えると、途端に移動速度が落ちてしまう。限界手前まで我慢するのか、少し余裕を持たせるのか、などを判断し、対処しながら自分の体で反応を試し続けること。これは、トレイルだとアップダウンの負荷の差の影響因子が大きくなりわかり辛くなるが、ロードだと負荷がほぼ一定となるため、感覚的な変化を捉えやすい気がした。そして、この感覚を得る事でウルトラトレイルにも活かせる気がしてきた。自分はどんなことをやれるのか?という自身への挑戦は、まだまだ続けられそうです!
最後になりましたが、このような広範囲かつ長時間にわたる壮大で暖かみ溢れる大会を開催していただいた主催のNPO HASHIRUの代表や関係者の方々に、お礼申し上げます。このような過酷な大会を、このような時期にこのような場所でやろうと思った発想力と実行力に脱帽ですwww本当に貴重な経験をさせていただき、どうもありがとうございました!
お陰で、「房総半島1周したことあるよ!」って言えるようになりました!w
きっとこれを読んでくれた方も、言いたくなるハズww
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