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【読書】『経営学』小倉昌男

めちゃくちゃ勉強になりました。いろんな人が紹介していて気になっておりましたが、いま読めてよかったです。新規サービスをつくってる自分にはめちゃくちゃ勉強になる思考の深さでした。

また、経営者は「大人な対応」をするイメージもあったのですが、本当に理不尽なことには決別をするという部分も、胆力のある憧れる昭和の経営者という感覚を持ちました。(ただ、自分はまだまだペーぺー、かつキレやすい、そして人に影響を受けやすいので、「絶対に怒らない」「絶対に戦わない」と改めてここに肝に銘じたいと思う)


なぜ読んだ?

みながムリだと思っていた宅配事業になぜ挑戦し、実現できたのかを知るために読んだ。

結論

やらざるを得なかったというところが出発点にある。
というのも、既存事業で負けていて、利益率も低く、長期路線でも後発になっており、既に顧客がついてるなど参入するのも難しかった。

一方で、なぜそれができたのか?

ここではすべての施策を網羅的に整理しない。自分が印象に残ったところをピックアップする。

事業に対する高い解像度と論理的思考

そもそも、「みながムリだと思っていた宅配事業」というのも、(後から考えれば)深く思考されたものではなく、いつどこでニーズが発生するかもわからないものにコストをかけられない程度のものであった。それをしっかりと本当にできないのかを突き詰めて考えたのがまずポイントだったと思う。

具体的には、まず宅配はネットワーク事業である、と。ネットワークインフラをつくることは先行投資になるが、その後トランザクションが増えれば、いずれ損益分岐点を超え、その後は利益が上がるのではないかと考えたこと。

そのために、まず市場規模はどれくらいありそうかを算出することや、ユニットエコノミクスを最小単位の集配車1台まで細分化し、そのユニットで結局いくつ取引があれば利益ができるかを計算するとか。

また、全体と仕組みを作るのに、航空業界の「ハブアンドスポーク」を参考にし、ベース(B)、センター(C)、デポ(D)の体制を考え上げ、また、全国配送とするには何件ぐらいのセンターが必要か計算するなど。なお、その計算もいくつかの他事業を参考にし(小学校や警察署の数など)算出するとか、いちいち考え込まれているのが印象的だ。

それはおそらく、まずはできるというスタンスに立つ、そして、めちゃくちゃ思考しまくるという思考回数と事業理解が凄まじいのだと思いました。(最後に、「経営は論理の積み重ね。論理的思考ができない人に、経営者となる資格はない」とおっしゃっているので、本当にそれを体現していると思います)

アイデアで終わらせない実行力

「サービスが先、利益は後」は有名なフレーズの一つだろう。だが、その徹底度合いが凄まじい。

確かに、儲けるためには「荷物の密度」が必要だし、郵便局との競争に勝つには価格面では差をつけられないから圧倒的な「サービスの差別化」にかけるしかない。それは「翌日配達」だ、というのはわかる。

ただ、通例1日に1便配送をするところ、2便制とすると、荷物の総量は変わらないのに(売上)運行コストは倍かかる。また、不在者対策で在宅時間を考えたときに、配達時間を午後6時から午後8時に延長した際もドライバーに対する人件費が月に何十億円と増えるような施策であったそう。これらを上記標語に沿ってやり切るというのだから、すごい。

(ただ、それもこれも「密度の経済」と考え切っているのがあるから、できることなのだろう。「安全第一、営業第二」というモットーをつくった際も過重労働になる仕事は断りなさいという方針で、「よく安全も、効率も上げなさい」とどちらもやれという中途半端な命令を出す経営者を「戦術的レベル」と批判している。きっちり優先順位を決められるのが「戦略的レベル」とのことで、ここでも論理を突き詰めることが重要だと思い知らされる。)

執着心、胆力

上記のロジックがありつつも、役員会では全員反対。それでも、組合を仲間にし、実現のためのタスクフォースを作り、承認を得る。

ちなみに、組合が仲間となってくれたのはその以前リストラのタイミングで組合員をリストラしなかったから、ということもあったため、見方によっては運が良かったこともあるかもしれない。

ただ、その意思決定をしてきたのも、小倉さん「全員経営」という新たな時代にあった経営スタンスが前提にある。先代の「従業員愛すべし、組合員は叩くべし」を鵜呑みにするのではなく、さまざまな形で勉強し、参考にし、自分の頭で考えて実行した賜物だ。

それも含めて、とにかく考え抜き、実行し切る力が成功を引き寄せたのは間違いない。

最後に

どの打ち手もちゃんと理由づけがあるのが良い。仮にみなが納得、賛成しなかったとしても、その背景に理由があり、説明し切れるのはすごい。経営者なら当たり前なのかもしれないが、自分がまだ弱い点だから、めちゃくちゃ参考にする。

また、何度でも読みたくなるような本でした。
経営のリーダーシップを学びたい方にも、新規事業づくりの作り方を知りたい方にも、また、もちろん運送業界の歴史に興味がある方にも、こちらはおすすめです!

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