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【読書】『敦煌』井上靖

ひさびさの久々の小説。
やっぱり歴史小説は面白い。

私は史実自体もあまり知らなかったし、中国の西域は興隆が激しいし、当時のこともあまりわかってなかったが、結構楽しめた。日本人が書いているし、主人公の趙行徳が馴染みやすいのか?(大学受験で世界史を選択したため、中国の国の移り変わり歌を覚えたのを思い出した)

とはいえ、基本的には史実は一部であり、「誰々がどこどこを滅ぼした。どこどこでなになにが見つかった」みたいなもので、それに対してフィクションで作り上げた主人公含む3人を中心に話を固めているそう。あとがきによると。(ってことは、原さんの『キングダム』と同じような作り方ですね)

ただ、経典をめぐって確かに裏でそんなことあったのかもなぁと思わせるストーリーでした。ロマンがある。


まず、登場人物として主人公の趙行徳はいいですよね。魅力的。科挙に落ちて、偶然出合った売られそうになっている西夏の女を助け、そのバイタリティに魅せられ、衝動に導かれて、西夏まで旅して、その場に住んで〜とつながっていく。

たしか、福沢諭吉?もそうですが、自分の手に職があり、どこかへ旅をして、そこで自分のできることでお金を作って生活し、また旅をする、みたいな生活の仕方を昔の人の伝記で読んだりするけど、生活力高いですよね。現代と違い、就職というのもないし、なりわいの考え方が違うかもしれないですが、その場にいたら、自分もそんな風に稼いでいけるのか?そう在りたいものです(書いてて思ったけど、アンダードックのグレン・スターンズはその手の現代版で最強のひとりですね)


次に、西夏が中心の国のひとつに出てきますが、西夏は中国最後の王朝である清を作った国ですよね。この敦煌の時代がたしか1000年から1200年位だったと思うので、その時から文字ができ始めてるっていうのもちょっと面白かったです。遊牧民だとしても独自の文字を作り、自国の歴史や文化を築いていきたかったのだろうなと。(でもどうなんだろ。やはり、言葉は独自でないと独自の思考はできないのか?言葉の意味みたいのは違いが出るのはわかる。「牛」なのか、「茶色の牛」なのかで、言葉が違ったら世界の切り取り方は違うから。ただ、日本語の中の中動態の世界は、日本語の中で存在しないと翻訳できない世界か…。やはり独自の言葉と世界の切り取り方はリンクしますな)


最後に、人生で何かを残すとか、それをやるために自分は産まれてきたのだ、と思える人生っていいなと改めて思いました。(行徳はよかったですね!意固地ところがある性格もいいのかもしれません)


ドラマだか、映画もあるらしいので、機会があれば観たいと思います。オススメです!

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