「バカラシイ」を超えてー2022年東大・京大現代文の芸術家の文章より・その1
個人的美しい文章ナンバーワン
今年の東大現代文の第4問のエッセーは、
20世紀の日本を代表する作曲家、
武満徹の文章でした。
大学時代、武満徹のエッセー集
「音、沈黙と測りあえるほどに」を
古本屋で発見し、
「こんな美しい文章は読んだことがない!」
と感動。
1日1エッセー読む!と
気合を入れて読み進めようと思ったのですが、
1週間ぐらいで挫折してしまいました。
そもそも武満徹の音楽も、
一番有名な「ノーヴェンバーステップス」の
小澤征爾のCDを持っていたくらいで、
しかも多分そんなに聴いてない。
クラシック音楽に自分を浸すより、
ゲームを攻略した方が楽しい。
酒を飲んだり、
女の子と
イチャイチャしていた方が(←見栄)楽しい。
そんな武満徹と大学生の自分の
バカラシイ思い出。
本もCDも、引っ越しを繰り返すうちに
どこかに行ってしまいました。
「ちょっとした振動」のダブルミーニング
では、東大の2022年第4問、
武満徹の「影絵(ワヤン・クリット)の鏡」より。
「どういうことか」
内容説明は基本イイカエですから、
周囲の空気=
私たち人間の意識(空想や思考、形容)を超越した火口の様子を眺める、人びとの沈黙。
かれ=ケージ
ちょっとした振動=
ケージの言葉「nonsense!」「バカラシイ」という言葉によって、
・眼前にあるのは穴にすぎない
・それを気むずかしい表情で眺める人々はおかしい
→状況を言語化、メタ的に捉える、客観視、相対化
・人々はそれを否定的に受け止めていない
→ケージの言葉(状況の言語化)に納得・共感
「そうなのだ、これはバカラシイことだ」
→沈黙が「振動」した→少し雰囲気が和らいだ
・ケージはこの沈黙の劇に註解をくわえようとしたのでもない
→状況の本質や詳細を説明したものではない
「バカラシイ」という言葉だけでは、
この状況を
きちんと説明したことにはならない。
ケージの言葉はあくまでも
「ちょっとした振動をあたえたにすぎない」
100字以内ならまあなんとかまとめられるか…
でも東大はこのような情報を
60字程度でまとめないといけない…
ムズイなあ。
ちなみに
問題に取り組むと分かるのですが、
「ちょっとした振動」とは
①沈黙に対する振動=場を少し和らげる
②「ちょっとした振動をあたえたにすぎない」
→「バカラシイ」という言葉は
状況の本質を表現したものではない
の2点を盛り込まないといけないと
個人的には思います。
S台の解答例は振動を与えた
ケージの言葉の説明にとどまっていて、
振動そのものの説明がないし、
K塾の解答例は①の説明のみにとどまっています。
いやでも、字数制限が鬼ですな。東大は。
それにしても、
「ちょっとした振動をあたえたにすぎない」
という表現によって
重苦しい周囲の雰囲気が少し和らいだことと、
巨大な自然に圧倒される人間という状況は
客観的には「バカラシイ」にもかかわらず、
それで済まされない何かがあること、
という
2点を同時に表現している。
やはり卓越した文章というのは、
読んでいて「なるほどねー、すげえなあ」
と思わされます。
長い文章をお読みくださり
本当にありがとうございます。
続きはこちらです。
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