読書のはじまり@35日目
本を読むことが好きだ。
「自分の中で、小さいころから続けている習慣は?」と聞かれたら、迷わず読書と答える。特別文字を読むスピードが速いわけではないので、読んだ冊数は、他の読書家のみなさんと比べると少ないかもしれない。
でも、本を読んでいるときの物語に入り込んでいく感覚、作者の脳みその中身に触れているような体験、ついつい続きが気になって気づいたら朝になってしまった夜など、読書が好きという気持ちはずっと心の中にある。
ふと、いつから本を読んでいるんだろうと考えたときに、まず思い浮かんだのが、江國香織さんの短編集「つめたいよるに」に収録されている「デューク」という物語だ。
ぼんやりとした記憶だが、小学生の時の国語の授業で、この物語と出会ったと思う。たぶん、教室の右斜め後ろの席に座っていた。授業は、読点がくるまで音読し、それをクラス全員で1分ずつ読んでいくスタイルだった。
「歩きながら、私は涙が止まらなかった。」この第一文を読んで、教室が急に静かに感じられた。愛犬のデュークを失って、悲しみに暮れる主人公。その主人公のもとにささやかな奇跡が訪れる。とても短く、たくさん本を読んでいる人からすると何気ない内容なのかもしれないけど、当時の僕には突き刺さった。授業が終わるまで、ずっとデュークの部分だけを繰り返し読んでいた。
この体験から、僕の国語の時間は、教科書にのっている作品をひたすら読む時間になった。理由はわからないけど、何かかが心に残る。僕の読書の始まりは、国語の授業だった。
少し時がたち、そういえばあのとき読んだ作品は何だろうと思い立ち、覚えているフレーズを検索して、「つめたいよるに」を見つけたときは、何とも言えない感動をおぼえた。
あの作品に出会っていなかったら、僕は読書が好きになっていなかっただろう。これからもどんな作品に出会えるのだろうか。とても楽しみにしている。
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