「彼女は頭が悪いから」@71日目
気分が悪い。
読んだあとに嫌な感触を残す小説はたくさんあると思うけど、今までの「嫌な読了感」とは少し種類が違う。
謎が解消されないまま物語が終わってしまう、登場人物に対する胸糞悪い印象が残ったまま、そういう種類のものではない。
一番近いのは「相手に正論を言われて何も返す言葉がでてこない。」
あの感じだ。
日本社会では「ランキング」をよく目にする。インターネットでもテレビでも、人に好意的な印象を持ってもらうための手段として順位付けが行われる。この小説では、「学歴」や「容姿」が順位付けの例として登場するが、
この行為は僕たちの日常生活の対人関係においても、無意識的に行われている。細かな順位までは判定されていないとしても、「好きな人と嫌いな人」「やりたい人とやってもいい人とやりたくない人」「付き合いたい人と付き合ってもいい人とご飯くらいならいってもいい人」
そんな感じのことは誰しもが経験したことがあるだろう。
そしてこのような順位付けは無意識的な差別意識を生む。
厄介なことに、この差別意識は一切の悪気を伴わない。
「こいつ、そもそも対象じゃないのに。」
相手のことを下に見始める。そんな相手のことなど、頭で考えても理解できない。自分に都合の良いフィルターで、相手の行動を認識するようになる。
男子東大生5人に1人の女子大生(低学歴)が性的な暴行を加えられた。しかも東大生の家で。これだけをニュースで見たらどう思うだろうか?
東大生が悪いのか?のこのこ家に上がった女子大生に非はないのか?
家にに上がるのであれば、そういう雰囲気になるのは、大学生なら創造できるだろう?
そいうった考えはあくまで表面的な見方であって、事実ではない。
僕らが創造できる範囲というのは、とても狭く当事者たちですら、自覚できていない考えや背景が存在する。
「レイプrするつもりはなかった。」この証言も、言っている当人からしたら
本心を述べているだけなのだ。本当に悪気はない。
だって、相手のことを下に見ているから。「こんなバカで容姿も良くないやつに性欲なんか湧かないよ。」こんな思いが言葉の裏には潜んでいる。
「こいつは俺に気があるから勝手に寄ってきているだけだ。」
そういう風にしか相手の行動を受け取れない。
繰り返しになるが、この話の厄介なところは、何も東大生に限った話では
ないことだ。状況や相手が変われば誰にでも当てはまる。
どうやったら、この嫌な気持ちを明確に言葉にできるのか。そして、それを
解決することができるのか。わからない。
それでも、僕は「想像力」をもった人間になりたいと思った。
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