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コロナ禍でふと立ち止まる。川と鳥とわたし

こんにちは。東京都在住のさつきです。
コロナ禍の生活、みなさんはどの様にお過ごしでしょうか。おうち時間、リモートワーク、オンライン授業…。日常生活の急激な変化を体験し、心と身体のバランスを保つことが難しく感じる方も少なくないと思います。

その一方で、「いつもの生活に変化を」という気持ちから何か新しいことを始めたり、探したりしている人もいると思います。
その過程で自分の時間をもう一度見直し、それまでの自分の生活とじっくり向き合うことも増えたのではないでしょうか。

私もその一人です。大学もオンライン授業に切り替わり、空いた時間に散歩をして地元を歩くことが増えたこの一年、身近なところで起こる小さな変化に気づくようになると同時に自分自身にも変化が起こった事に気が付きました。

この記事ではリモート生活の中で見つけた私の小さな変化と大きな発見をご紹介したいと思います。

川と鳥と人と

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突然ですが、私の住む地域には平成の名水百選(環境省ホームページより)にも選ばれた川が流れ、湧水地も点在しています。都心まで電車で30分ほどの場所でありながら、ゆったりとした時間を味わえる、「ここ本当に東京?」と言われてしまいそうな場所です。

この豊かな水を中心に、季節ごとに移り変わる様々な種類の鳥の姿を見ることができます。昨年の秋から冬の終りごろには、私の散歩コースでも「混群」と呼ばれる小鳥たちの集団を何度も目にしました。

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混群とは、秋から冬の季節に、異なる種類の鳥たちが食料を探して一緒に行動する鳥の集団の事です。エナガメジロシジュウカラなど、普段は同時に見ることの出来ない小鳥たちが、枯れ木の間をおしゃべりをしながら賑やかに移動していく様子は、寒くて沈みがちな気持ちも明るくしてくれます。

そんな小鳥たちもよく見ると、常に上へ下へ、木から木へ忙しく移動する子、一つの所で集中してエサをついばむ子など個性が見えてきて飽きることがありません。でもそんな楽しい季節(私にとって)も束の間、暖かくなればこの集団は解散し、種ごとに巣作りや子育てに取り掛かかります。

川遊び

暖かい時期になると今度は人が自然の中に姿を現します。今はコロナ禍という事もあり例年に比べて人の数はまばらですが、野菜を湧水で洗う人、川遊びをする子ども、そのようすを眺める人など、みんなが思い思いに川で時間を費やします。この町の川は、そんな憩いの時間をゆっくりと流れているようです。

自然と人が一体となるひととき

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先日、この川の近くではっと息をのむような出来事に遭遇しました。

いつものように川の遊歩道を歩いていると3、4人の人が立ち止まってじっと何かを見ていました。その視線の先をたどってみると、そこにいたのは川沿いに生えた木の枝に止まっている一羽のカワセミ。

体長は17㎝ほどで、人間の手に入ればすっぽり収まってしまうぐらいの大きさです。でも、太陽の光を反射する川の水によってカワセミの翡翠色の羽はきらきらと輝き、まるで生きる宝石のような存在感...。

そんな事を考えていると、私の近くで見ていた女性が「あっ」と声を出し、それと同時に走る一瞬の緊張。先ほどのカワセミは、私が瞬きをする間もなく水の中に滑り込み、次の瞬間には小魚をくわえて木の枝へとまっていました。

ほんの数秒の出来事でしたが、その時私は何かとても神秘的なものを見たような気持ちで落ち着きませんでした。それは、一緒に同じ光景を目撃した周りの人も同じようでした。あとで振り返ってみると、単にカワセミの狩りの能力や生命力に対して感動しただけではないように思います。

それは、自分の身近でもこんな食物連鎖が起こっているという発見と、それを目の当たりにした緊張、そのような力強くて美しい生命の循環を包摂している自然への畏敬の念だったのかもしれません。

木

歩いてふと立ち止まる時間

コロナ禍の生活の中、空いた時間に外に一歩踏み出すだけで、今まで気づかなかった発見がありました。ここまで自信満々でわたしの地元での体験をご紹介してきましたが、恥ずかしながら去年までは自分の住む町がここまで自然豊かで多彩であるということを知りませんでした。
去年までの自分の生活を振り返ってみると、周りの流れに遅れないように常に前に向かって急いでいた毎日だったように思います。通学時間はなるべく短くするために自転車を使い、川に架かる小さな橋なんて数秒で通り過ぎていました。「朝はちょっと近くの緑道や川に散歩へ...。」なんて事を考える余裕は少しもありませんでした。
そんな慌ただしい生活の中で私がよく口にしていたのは「時間がない」という言葉でした。確かに、学生時代は人生の全体でみればもっとも短い時間かもしれません。しかし、ほんの10分でも早起きをすれば、少し外を散歩する時間くらい作れたはずです。

外に出て、風を感じ、季節ごとに移り変わる鳥の声に耳を傾ける。
少し歩いて林へ行き、木々の隙間から入るこもれびに目を落とす。
林を抜けて川に沿ってゆっくり歩き、そこに暮らす生き物たちと時間を共有する。

今までの私は「立ち止まること」を怖がっていたのかもしれません。しかし、自然の中に身を置くことはわたしの人生の「ひと休み」であって、それは自分の生活のなかで新しいことを発見したり、目の前にある選択肢についてじっくり考えるための重要な時間でもありました。
このように一日の生活の過ごし方をほんの少し変えただけで、私の見る世界は変わり、「時間がない」学生生活は確かに変化したと言えます。

自然はわたしが見つけるよりもずっと前から身近にあって、時間のない学生がふと足を止める空間を用意していました。それは、「ちょっと面倒くさいけど、靴を履いて外へ出てみようか」という小さな生活の変化によって見つけることができました。

みなさんは毎日の生活の中でふと立ち止まる時間はありますか?
この記事を読んで下さったあなたも、小さな変化で日々の生活で見えてくる景色が変わるかもしれません。ぜひ一歩外に出てみてはいかがでしょうか。


Text by さつき(心の旅人さつき)

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