ケーキ職人75年歴の話
何年か前の事でしたが、90代男性のケーキ職人と話す機会がありました。彼が約75年前に職人を志した理由は、戦後の食糧難を背景に持つ貴重なものでした。その時代、多くの日本人が飢えと戦いながら生きていました。彼はケーキ店に就職し、後に自分の店を持つことになりますが、その動機は「甘いものを食べる幸せ」にありました。彼は誇らしげに話しました。「甘いものが食べられることがどれほど幸せか、わかるかい?」彼の言葉は、今の私たちが日常的に享受する「甘さ」そして「食」に対する思いでした。田中角栄の言葉にもあるように、「食」は当時、生活の中心でした。時代が進み、高度経済成長期には「物」が重要になります。松下電器(現パナソニック)の創業者、松下幸之助の「水道哲学」が示すように、物質への欲求が高まりました。商品をいかに大量生産し国民に供給できるかが日本経済のテーマでした。そして今、若い世代は「承認欲求」を追い求めています。彼らは、食料と物質が豊富な時代に育ち、バブル崩壊の影響を受けた大人たちの苦悩を目の当たりにしました。結果、彼らの価値観は「食」「物」「金」から「自己承認」にシフトしました。SNSでの「いいね」や「フォロワー」への執着が、この世代の特徴とされています。戦後の食糧難から始まったこの物語は、日本の社会的、文化的変遷を映し出しています。この事から、時代の流れは「食」「物」などの物質的なテーマから「心」がテーマになっている事にきづかされます。
話は戻りますが、その90代のケーキ職人は今でも「甘いもの」携われて仕事ができている事に今現在も誇りをもたれていました。
そして、そんなお話をしていただいている時のその90代のベテランのケーキ職人の目の輝きが印象的だった事を今も思い出します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?