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ゆっくりジョグのお手本は設楽悠太選手。

外出ができなくなり、
ランニングブームが思いがけない形でやってきました。
思い立ったらすぐに始められ、お金もかからないランニング。
もともとランニング人口が多いアメリカでも
わざわざ記事にするくらいだから、
この動きはどうやら世界的なものであるみたい。

いつも走っている公園も、
ここ一月ほどでランナーが一気に増えました。
毎日、抜いたり、抜かれたりしながらテクテク走っていると
足運びやフォームで隣のランナーが
どれくらいの走力かというのはなんとなくわかります。
大半がここ最近走り始めた真新しいシューズを履いた新人ランナーたち。

そんな新人ランナーたちをみて、
ずーっと気になっていることがあるのです。
それは

「みんな、ジョグのペース速すぎ」

だということ。
最近、走り始めたばかりの人ほど、
ゼーゼーハーハーと息をきらせながら、
一生懸命走る傾向にあるようです。
そして、1kmも経つと歩きはじめてる姿に遭遇します。
「走ること=追い込むこと」というイメージがあるのでしょう。
とにかくみんな頑張っちゃっているようなのです。

ゼーゼーハーハーと息が切れてしまうのは、明らかにオーバーペース。
さらに、無理をして走っているから筋肉のダメージも大きい。
そうすると翌朝は膝の外側や内側が痛くて
ベットから出るのもままならない。
このGW中は毎日走るつもりだったのに、
そのためにウェアやシューズも買ったのに、
Tシャツで走るには絶好の天気なのに、
膝が痛くて走れない。
走れないだけならまだしも、
膝が痛いと散歩すらままならない。
そういう悪循環に陥ってしまう姿が目に浮かぶのです。

みんなの動向を観察していると、
30分もしくは5kmくらいを目安にランニングを切り上げているみたい。
コロナ前であれば、通勤や通学で往復1時間くらいは
身体を動かしていたでしょうから
これくらいの時間や距離を走っていれば十分でした。
しかし、いまはコロナ外出自粛の真っ最中。
唯一、身体を動かす時間が30分足らずだと、
ちゃんと運動をしているはずなのに、
ちゃんと汗もかいているはずなのに、
実際に身体を動かしている時間は少なくなっているので
カロリーが思ったよりも消費されず
身体は重くなってしまうのです。

ここで先輩ランナーとして新人ランナーに
知っておいてほしいことがひとつあります。
それは、
「30分を超えたところから
  ジョグはボーナスタイムに突入する」

ということ。
30分以上、できれば60分くらい走り続けると
ようやくジョグの効能や楽しみを味わうことができるのです。

走り始めたばかりの素人もオリンピアンも
ジョグの最初の30分は誰でもきつい。
心拍数もグンとあがるし、
身体のそれぞれのパーツの動きも悪いし
身体を動かすエネルギーも糖質を中心に消費されるから
エネルギー効率もよくないのです。

それが、30分を超えたあたりから、
身体のセンサーが反応しはじめ、
エネルギー消費も身体に蓄えた脂質を燃やすモードに変わります。
脂肪燃焼モードに切り替わると嘘みたいな話ですが、
それまでダラダラと流れて落ちていた汗の質まで変わります。
汗もサラッとしてくるのです。

ジョグにおける身体とはハイブリットエンジン。
走っている途中でガソリンエンジンに電気のアシストが加わるように、
ジョグも身体が効率よく長く走れるモード変化するのです。
プリウスも高速道路を一定速度で走行しているほうが
町中で信号につかまってストップアンドゴーしているときよりも
燃費がいいでしょう?あれと同じです。
動き始めを頑張らずに、一定のリズムを刻みつづけていると
次第に楽に身体がうごきはじめてきます。
自転車のギアを一番軽いものから、ひとつあげた感じ。
少ない力で楽に長い距離、長い時間走り続けるモードにかわるのです。
これが、ボーナスタイムの正体です。

コロナ期のジョグは通勤・通学時間に相当する
60分は身体を動かし続けたいところです。
60分走り続けることは、大変そうですが、
これは誰でもできます。
とにかくゆっくり走ればよいのです。

「ゆっくり走れ」と言われると
なぜか人は「ダラダラ」と走る傾向にあります。
「ゆっくり」とは、ダラダラ走ることではなく、

・おしゃべりができるくらい
・口を閉じて鼻呼吸でずっと走り続けられるくらい

までスピードを落とし、

・アチアチと火の上を歩くように、素速く着地をし
・歩幅を縮め

膝が足裏だと思って、
膝下の筋肉をつかわずに足は置くだけ。
お手本のような選手がいます。
それは設楽悠太選手のマラソン前のアップです。

設楽選手のアップはとにかく遅い。
次々と選手たちに抜かれていきます。

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これはMGCのスタート前のアップのもの。最初は談笑して走ってたはずの東洋大学の後輩、高久選手もスピードが合わずに先に行っちゃいます。

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これはスタート直前で、ほとんどの選手が流しを入れるなか、設楽選手は最後まで、びっくりするほど力感がありません。
このアップをみて、設楽選手がとてつもないスピードで独走体制に持ち込むとは、どの選手も思わなかったでしょう。

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足はそっと置くだけ。膝下はまっすぐ。つまり反発をもらうだけ。
レースではヴェイパーフライを履きますが、アップでは薄いNIKE FREEを履きます。足をそっと置くだけだから、レース前でもダメージがない。

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東京マラソンでのアップです。周囲の選手が身体を温めようとスピードを上げる中、動きからも、周囲の選手とのスピードの違いがわかるでしょう?

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ずーっと見てると気づくのですが、スピードは遅くとも、
足運びのリズムは本番とさほど変わらない。つまり、同じリズムのまま踏み込みの強弱でストライドを変化させるのが設楽選手の特徴みたいなのです。

大事なのはスピードじゃなく、リズム。
今日も設楽選手のマネをしながらジョグをするのです。

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左が設楽悠太選手で右が設楽啓太選手。双子でもアップは違うのですね。

というようなことを書いたりする「月刊 EKIDEN NEWS編集部」。

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