戸塚中継所にある謎の自販機
箱根駅伝の前には「路面チェック」と称して、友人のポールさんと箱根駅伝のコースを一通りドライブして、気になるポイントは車を降りてあるいて確認するということをやっている。ポールさんの全盛期は箱根駅伝テレビ中継を通しで6回は見ていたらしく、そのうち1回は選手の上半身をダンボールで隠して、路面と接地だけを観る回というのがあったらしく、接地だけで、選手がわかった時期があったそうだ。
確かに一緒にドライブをしていると、同じ国道でも自治体によって路面のあれ具合が違ってくる。「意外とこういうアスファルトに足をひっかけてしまうことがあるんですよ」と、本来は投擲選手であるはずなのに、やけに選手心理にも詳しいのも、ポールさんのおもしろいところだ。
「箱根駅伝のコースチェックはどんな人でもやるだろうけど、さすがに路面チェックをする人はポールさんくらいじゃない?」とからかうと、「いや、ぼくよりも入念なチェックをしている人がいました。瀧さんです」と真面目な顔をして返してきた。瀧さんとは、今シーズン青学から東海大に電撃移籍をした瀧川コーチのこと。彼も箱根駅伝が好きすぎるがゆえに、暇を見ては原付バイクに乗り、アスファルトの状態をチェックしながらツーリングしていたのだそうだ。
「路面チェックの先駆者は瀧さんです」と。いまはさすがにやってはいないだろうが、そういう目でコースを歩いてみるのも面白い。工場地帯にほど近い蒲田などは、大型トラックなどの出入りも多いからアスファルトの削れも激しい。2008年に東海大のアンカーが蒲田の踏切で足を取られて棄権したこともあったけど、そんなことも影響したのかもしれない。
毎年のコース確認でも、毎回かかせないのは戸塚中継所だ。
一応、タックルベリーの中にも入り、駐車場を囲むように営業しているラーメン屋の屋号の確認などをすませ、自動販売機でコーヒーを飲みながら一休みするのが、毎年のルーティーンなのだが、昨年は違った。
「この自動販売機、気になりませんか?」
とポールさんがポツリとつぶやいた。
「1回1000円」と書かれた自動販売機には、1000円ではおよそ手にはいらないものスイッチやデジカメの写真がならんでいる。お互いもういい年をした大人だし、とスルーしてたら、ポールさんは「これ、2区を走り終わったランナーが買うかもしれませんから、一応、チェックしておきます。スイッチほしいですし」と1000円を投入した。
ガチャンと大きな音がして白い箱が出てきた。
出てきたのは、しょぼいイヤフォン。
いやー。こりゃ1000円高くついたねー。と二人で笑っていると。ポールさんが「うわーっ」と大声を出した。
な、な、なんと。イヤフォンかと思ったら、イヤフォンは入ってなく、イヤフォンをいれるケースだったのだ。
今年も戸塚中継所に行ったら運試しのように、あの自動販売機に1000円を投入してみよう。スイッチでてくるかもしれないし。
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月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…
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