最強の売り子

その売り子さんは軽トラに乗って
ぼくの住む小さな町を回っている。

一軒一軒訪ねては、
「野菜はいらんかい？今日はほうれん草がありますよ」と売っていく。
売れる確率は相当高いと思う。なぜなら最強の売り子さんだから。

どうしてその売り子さんが最強なのかというと背中の丸くなった80歳くらいのおばあちゃんで
運転席から前が見えてるのか？と思うくらい小さい。
そんな売り子さんが、一軒一軒回って野菜はいりませんか？と来る。
「いりません！！」とは言えない^_^:

うちの奥さんはいつも
「断られへんかったわ〜」といいながら、野菜を買ってる。

今日も「家にほうれん草あるのに、ほうれん草を売りに来たおばあちゃんから買ってしまったわ。他の野菜はないんか？と聞いたけど
ほうれん草しかないって言われた。それで結局ほうれん草買ってしまったわ〜」と。

うちのおばあちゃんは、営業の電話を断るのがものすごく上手い。
しかし、その売り子さんの野菜は断れずに、いつも買っている。

その売り子さんは、とても元気で
背中は丸いけど、耳はしっかり聞こえてるし、やりとりもスムーズに出来るし計算も早い。
ものすごくしっかりしている。

そんな売り子さんが雪のちらつく日にほうれん草を2つ持って
「残りはこれだけなんやけど、2ついらんか？」と言われたら買うしかない。

息子さん夫婦と一緒に農家をしているらしいけど
あのおばあちゃんを売り子にする息子さんは戦略家だと思ってる。(ぼくの完全なる想像ですがw)

商売の上でもキャラクターを起てるのは重要だと思うけど
あんなにキャラクターの起った売り子さんはいない。