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「お袋の味」は本当に素晴らしいものでしょうか?

小さいころに正しい味覚をつけておいた方がいい。例えば、カップ麺よりも、昆布とかつ節で出汁をひいたうどん汁で蕎麦を作る。レトルトのハンバーグよりも手首がいたくなるほど捏ねた手作りハンバーグで添加物なし。といった具合です。


■幼少期に頻回に食べた家庭料理が‥


昭和世代は手作りで育っているせいもあって、母親たるもの手料理は当たり前でした。

どこで食べても同じファストフードとは違い、同じ料理でも家庭によって微妙に味がちがう、それが「お袋の味」です。

お袋の味(おふくろのあじ)とは、幼少期に経験した家庭料理によって形成された味覚。またそれらに懐かしい想いを発するものだと思います。

なので頻回に食べていたものが「お袋の味」になるのではないでしょうか。

昔は郷土料理だったり煮物だったりしたのでしょうが、今はハンバーグやカレー、唐揚げなどもそうかもしれません。


■お袋の味は愛情表現

一言でいうと「お袋の味」とは母親の愛情の現れです。

同世代の母親たちは離れて暮らす子供に何種類もおかずを作って、タッパーに詰めて宅配する「仕送り飯」に精をだしたりします。
または時間や交通費をかけて、下宿先で料理を作ってあげたりと、にわか家政婦さんに変身する母親も少なくはありません。

それはやっぱり「栄養のあるちゃんとしたものを食べさせてあげたい」という母ごころからです。


■これが正しい食生活の刷り込み

確かに昔は不便だった。母親の手作りに頼らないと、まともなものは食べられませんでした。それが今や、捨てるほどに食べ物が有り余っている時代になりました。

大人になった子供にいつまでも「お袋の味」を届けるのは、愛情の中に隠された「これが正しい食生活」という刷り込みではないかと思うのです。


■ちゃんとした食事へのプレッシャー


この「お袋の味」や「手料理」が忙しい女性に対して「ちゃんとした食事」のプレッシャーになっているのではないかと思います。

女性だから母親だからといって誰もが料理好きではありません。
料理が嫌い好きじゃない女性はたくさんいます。

私はたまたま食いしん坊がゆえに料理好きですが、どれも美味しいかといえばそうではありません。

せっかく丁寧に作っても、子供達には不人気で食べないということも少なからずありました。

だったら作らずに、何か買ってきた方が良かったんじゃないかと思うこともしばしばあります。

それでも作ってしまうのは「お袋の味」と「ちゃんとした食事」への義務感です。


■子供ができると途端に増える家事負担


男女雇用機会均等法が発令して30年以上たちます。

社会での役割は平等なのに、子供ができると、とたんに女性の家事負担が増えていくのも事実です。

これは反省するべき点ですが、子供に台所仕事を手伝わせた経験がほとんどありません。

欧米のように簡単な食事で済ませたり、小さくともお手伝いをする習慣もありませんでした。

それは家庭料理は母親が家族に対するおもてなし料理だと思っていたからです。

そんな母親の考え方こそが、子供、特に男性が料理に関与しない悪因ではないかと思います。

■一歩進んで「誰かの手作り」でいい


最近、家庭料理が得意な人が自宅に来て「作り置き料理」をしてくれるサービスが人気です。

これは母親の手で作られた料理でなくてはいけない。というところから一歩進んで「誰かの手作りでいい」という風潮になってきたと言えるのではないでしょうか。

タイのように家庭に台所さえない食生活とまでいかずとも、家庭料理は誰が作ってもいいんだという概念が生れてきた証拠。

「お惣菜」や「テイクアウト」更には「家事代行」に母親の罪悪感を乗せなくてもいい、当たり前の時代にがすぐそこにきているのだと思います。

■「お袋の味」の伝承は要らない


次男が結婚したときにお嫁さんから「お母さんに手料理を教えて欲しい」や「お母さんの手料理を食べたい」なんて嬉しい言葉をかけて貰いました。

ですが、「はい喜んで!うちの味を伝承します」なんて御免被りたいと、笑顔で聞き流していました。

そもそも、妻になっても嫁にはならない時代です。

夫の実家のしきたりや味を継いでいくという感覚は私にすらありません。

息子たちは新しい食文化を作っていけばいいのではないかと思います。

しかも息子夫婦は共働きのうえ、まだ手のかかる娘がひとりいます。「お袋の味」より「おやじの味」も子育てには重要な役割です。


■「おやじの味」は味噌汁から


とはいえ「おやじの味」という言葉に対し認知は広がっていません。
これはいったいどういうことでしょうか。

共働き夫婦が増えたとはいえ、いまだに男性の家事負担が少なく、料理を作る機会が少ないからだろうと思います。

しかも昔から一汁三菜が和食の基本などと言われています。ごはん、汁もの、主菜に副菜2品が一般的献立形式です。


でも、忙しい母親が3品も作るのはほんとうに大変です。だったら一汁一菜で、おみそ汁を具沢山にして「おかず」に昇格させればいいのです。

わが家も、おかずを作るのがめんどうな時は、とにかく冷蔵庫の残り物で具沢山みそ汁を作ります。

出汁をとるなんて面倒な作業はせず、顆粒ダシを使えば5,6分で出来上がる「みそ汁」は誰にでも簡単に作れます。

たまに張り切って父親が料理してドヤ顔をされるより、毎日役割分担し料理が共同作業になる台所を目指す。

まずは「お父さんの作るお味噌汁は美味しい」から始まる「おやじの味」を家庭に取り入れてみるのはいかがでしょう。

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