読書 - 他者と働く


私の働く部署の人数は10人であるが、私を除いた人数の平均年齢は52歳。私は役職的には1番な下っ端であるが、色々指示を出さないとならない人たちの集団である。オペレーションフローを変えた方が良いのではと提案してもなかなか聞き入れられず自分の業務部分のみのシステム化に留まっている。他の人も同じように動いてくれると指数関数的に変化されることができる。その知恵が欲しくてこの本を手に取った。

他人との関係で重要なこと


組織にはびこる問題は、問題に対する明確な解答がある「技術的課題」と問題自体が不明瞭で人間の関係関係性または組織の関係性から生じる「適応課題」の2つに分かれる。組織の問題のほとんどは適応課題であり、結論からいうと、この適応課題の解決方法は適切な対話である。

対話とは 新しい関係性を構築すること、自分の中に相手を見出すこと、相手の中に自分を見出すこと、双方向にお互いを受け入れる、ナラティブの溝に橋を築く行為
ナラティブとは 語りを生み出す解釈の枠組み、考え/前提の違い
Ex) 部署間対立がわかりやすい、経理部と営業部で経理部は経費精算を期限通りにやってもらわないとタイムリーに実績数値を集計し経営に報告できないが、営業部は1円も売り上げにならないため優先度が下がり、お互いのニーズがマッチしていない状況

人間同士の関係には、2種類ある。相手をきちんと人間として接する「私とあなた」、相手を道具的に扱う「私とそれ」である。よくあるのは「私とそれ」であり、これは一方的な要求となるため、それをよしとする人間であれば上手くいくが、たいていは上手くいかない。相手との対話をいかに「私とあなた」の関係に持っていくことが大切である。

適応課題とは

適応課題は以下の4つのパターンに分かれる。

ギャップ型 大切にしてる価値観と実際の行動にギャップあるケース
対立型   互いのコミットメントが対立するケース
抑圧型   言いにくいことを言わないケース
回避型   痛みや恐れを伴う本質的な問題を回避するために、逃げたり別の行動にすり替えたりするケース

適応課題を解決するには、
「準備」→「観察」→「解釈」→「介入」
という流れを経る。

準備 相手と自分のナラティブの溝「適応課題」があることに気付く
観察 相手の言動や状況を見聞きし溝の位置や相手のナラティブを探る
(自分の考えを脇に置いて相手の置かれた立場/境遇などを踏まえて話を聞いたり、振る舞いを見る。不安やかかっているプレッシャーなど)
解釈 溝を飛び越えて橋がかけられそうな場所や架け方を探る
(相手の境遇などを踏まえたうえで、こちらのニーズを満たせるようなものがないかを考える)
介入 実際に行動することで橋を築く

要は、相手を動かすには相手にとって意味のあること、相手の役に立つことでなければ受け入れられないということである。
従って、何が相手に役立つのか、何に潜在的に困っているのかを理解して具体的な施策まで展開し落とし込むということである。

組織変革に向けて

組織変革をする際に立ちはだかる適応課題は、抑圧型と回避型である。
組織でよく見るのが、概論OK、各論NGである。こう思うことがでるのは、直属の上司と直属の上司の上司(2つ上の上司)のビジョン(ベクトル)が一致していないため起こることである。もっというと、直属の上司が2つ上の上司が何をやりたいのか、やりたいことがわかってもその真意を理解していないということ。
従って、解決方法としては、2つ上の上司と非公式に意見交換をすることでその意見を反映した動きをすることで直属の上司を動かすことである。(相手のニーズを満たし、現場側の意見をアレンジして橋を架ける)

本書に記載されているが、上司を悪者にすることは簡単、立場の違いで視点が違うことを念頭に置いてきちんと対話すること。

もう1つ記載があるのは、実行部隊となるには縦と横のつながりを再構築しておく必要があること。
縦のつながりは、上の立場の人の仕事を下に共有し、部下に仕事を落とす。(上司は部下より優れてなければならない前提を横に置く)
そうすることで、部下と上司は同じ論点/土俵で対話をすることができるので、より強固な関係が築けるし、副次的に部下が育つので上司はより付加価値の高い仕事ができるようになる。

横のつながりは、同期や同僚のような人たちを大事にすること。これは、同じような境遇に立ちやすいため、似通った課題や悩みを共有することでより強固な関係が築け、対話の中で新たな発見を得られることができる可能性がある。

最後に

普段文句を言ってしまっているようなことが、思いっきりこの本にかかれていたりと、非常に有益であった。自分が相手に役に立つと思っていても、相手がそう思わないと意味がない。そのため、相手のメリットや役に立つことまで自分のやりたいことをもっと拡張して、ニーズを満たす必要があるのだと感じた。まずは、相手が何に困っているのかを些細なことでもいいので拾うことから始めるべき。そうすることで自分のプロジェクトに徐々に巻き込む戦略を取ろうかと思う。要は、人を動かすには携わる人間を仕事の主人公にすることで、その人自身がやることに意味を見出させること。

「組織改革に向けて」のことは、経営方針を掲げても現場がそのように動かないという会社も同じ論点である。現場は経営方針を理解しているが、その方針を実行できない環境に置かれている。現場には現場の理由があるのである。これは上記でいう直属の上司がきちんと機能していないことから生じている問題である。
本書は、これ以外にもMBAの人が陥る組織の事象なども記載されている。

興味を持った方がいれば是非本書を手に取っていただき、詳細に読んでみてほしい。特に、うちの部署は変わらない、上司が使えないからだと思っている20~30代の方に読んでほしい1冊である。

最後まで目を通して頂きありがとうございました。いいなと思うかことがあれば「すき」を押していただけると大変励みになります。