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読書 - コロナショックサバイバル

Afterコロナ、withコロナの議論がされることがあるが、法人として考えるとそもそもコロナの混乱の中で生き残らなければこの議論には参加できないと思う。私の所属する会社はまだ若いので前回の世界的な経済混乱である「金融危(リーマンショック)」を経験していない。従って、このような世界的な経済混乱の中でいかように会社を運営していくのかを知りたく本書を手に取った。

リーマンショック vs コロナショック

リーマンショックは、金融資産の本源的価値と大きくかけ離れた値段が付けられた金融商品が膨大に取引され、その値段が正常に戻る過程が一気に表面化し資金の流れが麻痺した。その影響により、資金の出し手である金融機関が資金確保に努め、実体経済が痛んでいき不況に陥った。
一方で、今回のコロナショックは、人が動かないことによる実態経済、特に地方経済含むローカル経済が傷んでいることである。(店頭販売をしているようなお店を創造してもらうとわかりやすいだろう)
つまり、実体経済から痛んで不況となるのであり、リーマンショックとプロセスが逆となっている。
また、ローカル経済は体力が薄い中小企業中心で全体の大体8割を占めていることから、ちょっとした売上利益減少でも長期間会社が耐えることは不能である。会社の経営が厳しくなると、会社は人員整理などを行い固定費を主としたコスト削減を実施する。そうすると、全体の大半を占める中小企業の雇用者たちが失業する。そうすると、彼らは所得がないため個人消費の観点でのコスト削減を実施する。これは需要減少を引き起こし、より法人の売上が減少し、これが循環することで不況が長期化すると考えられる。
また、長期化しそうな理由はもう1点ある。リーマンショックは金融先進国が大ダメージを受けたが、金融資産を持たないような国は間接的影響は受けてはなく影響は小さかった。当時は、中国がそこまで痛んでいなかったため、中国の消費などに頼った回復であった。一方で、今回のコロナショックは全世界に蔓延しているためどこかの国に頼った回復はできない状況であるため長期化リスクがはらんでいる。
ただし、将来的なことは誰にも分からない。従って、歴史や過去の経験から学び、最適な行動を取り最悪の事態に備える必要がある。

生き残るためには

修羅場の経営の心得
1.想像力  :備えあれば患いなし
2.透明性  :BAD NEWSこそ早く共有
3.現金残高 :利益ではなくキャッシュ、日繰りのキャッシュ管理が全て
4.捨てる覚悟:迅速な断捨離
5.独断即決 :1秒の意思決定の遅れが命取りになることも
6.タフネス :心得4と5を支える精神力
7.資本の名人:現金の積み増しするための複数チャネル
8.ネアカ  :メンバーを奮い立たせる力

「修羅場の経営の心得」は、IGPIプロフェッショナルが実際に経験したことからの示唆である。

この激動の環境を会社が生き残るのに重要な要素は、手元現預金に関するものである。
つまり、手元流動性の潤沢さ、それを一時的に可能とするための金融機関との従来からの信頼関係、恒常的な手元資金生成能力である平時の稼ぐ力と営業CFの厚み、金融機関から最悪資金調達できない場合の自己資本の厚みである。現金生成能力が効率的か否かをみるために、営業CFマージン、EBITDAマージンという指標も重要である。これは、恒常的な手元資金生成のKPIの1つである。

1 想像力

「最悪の想定を置き、最善の準備をせよ」
日々変化する環境でも、想像力を働かせさまざまなシナリオを考え、その打ち手を考える。
振り返って時に、杞憂で終わって良かったとできるようにするのである。

2 透明性

「BAD NEWSをあからさまにせよ、信用毀損を恐れるな」
経営危機時は企業に致命傷を与えかねない重大なニュースのキャッチアップこそが重要である。たとえ、その場をやり過ごしてもいつかその問題は爆発する。また、信用は情報の疑念から毀損する。厳しい治療にあたるには組織構成員とステークホルダーが共通認識を持たなければならないのである。

3 現金残高

「短期的なPL目標は本気で捨てろ、日繰りのキャッシュ管理がすべてだ」
月末残高ではなく出金タイミング大きいところなどを見つけて予測立てるべきであるため、日繰りのキャッシュ管理が重要である。
PL目標を捨てるのは、キャッシュポジションの改善に全力出すためである。利益を出すことは重要であるが、売上増加・利益増加をさせるためには、短期的にキャッシュアウトをすることが多々あり、修羅場の経営ではそれが命取りになるためである。
また、指揮系統はCEOに一本化すべきで、これはクリティカルかつ迅速に止血(キャッシュアウトを止める)し、一気に膿みを出し切ることが重要である。
資金手当のコツは早め早めの対応である。会社の状態がToo lateになると、本来借りることができた金融機関からの融資もできなくなるためである。
危機時は「Cash is king.」の考え方を忘れずに。

4 捨てる覚悟

「何を本当に残すか、迅速果断な「あれか、これか」の「トリアージ」経営を行え」

トリアージ:大事故・災害などで同時に多数の患者が出たときに、手当の緊急度に従って、優先度をつけること

厳しい環境下では、トレードオフは絶対あるので何を捨てなければならないのか迅速に判断するのが重要である。全員を救おうとすると結局誰も救えないのである。トリアージを行うと少なくとも被害を受ける人がでるので、彼らから一時的に批判、恨みを浴びる。そのような厳しい環境になる覚悟を持たなければならない。
余談だが、この捨てる覚悟の節を読んだときに思ったのは、映画「チーム・バチスタ ジェネラル・ルージュの凱旋」のクライマックスの場面が頭をよぎったので気になる方は見てみてもらってもいいと思う。

5 独断即決

「戦時独断ができるトップ、姿が見えるトップを選び、真のプロを集めて即断即決、朝令暮改」
経営トップのタイプは2つある。調整させながら進めるトップと独断で進めるトップである。緊急事態下では後者のタイプが力を発揮する。なぜなら、スピード感あり打ち手が迅速になるためである。また、緊急事態下ではベストではなくベターで話を進めるため、朝言ったことが夕方には変わっているということも起きうるが、事態について真摯に正面から考え抜いていることの証でもあるため、これはこれでいいことである。(経営トップも朝発言したことが誤りだったと認めていることにもなるため)
また、その判断を大きく間違わないようにするため、プロを集めたチーム組成で乗り切ることも検討にいれるべきである。

6 タフネス

「手段に聖域を作るな、法的整理でさえ手段に過ぎない」

トリアージに耐えられる精神力ないと修羅場を超えられない。危機時のリーダーは自分が正しいと信じる目的を実現するためには手段の選択について耐える精神力の有無が非常に重要である。また、「ザ・ラストマン・スタンディング」を目指さなければならない。つまり、何が何でも生き抜くことである。

7 資本の名人

「2種類のお金を用意せよ」
手許現金を積み増す方法は、デットとエクイティの2つの調達方法がある。これはそれぞれ、
デット(融資):短期的な性質、命をつなぐための融資
エクイティ  :長期的な性質、抜本的な改革(外科手術)のための資本
簡単に言えば、資金繰りはデットで賄い、構造改革や赤字填補はエクイティで賄うようにするのが重要である。これはどちらかに偏らないようにバランスを維持するのが重要である。

8 ネアカ

「危機は、新たなビジネスチャンス!「国民感情」に流されず投資や買収に打って出よ」
このような危機時は、世の中の仕組みや構造が強制的に変化をさせられてしまう。例えば、今回のコロナショックでいえば、テレワーク・リモートワーク関連などである。このような新しい市場ができて、自社にとって採算がとれるような見込みであれば、積極的に参入すべきである。(手許キャッシュのバランスも加味する必要があるが)
経営とは、情に流されず理屈通りにやることである。利益を出して、手許キャッシュを恒常的に増やすことが求められる。能力が低い経営トップは、理屈に沿わない事やるから、そこの重要印が不幸(または相対的に不幸)になるのである。また、理屈が通っていれば、うまくいくシナリオを従業員自身も思い描くことが可能であり、ベストを尽くせば明るい未来あると考える。厳しい環境下でも従業員を奮い立たせ、頭をフル回転させ経営が上向くことに尽力しだすのである。

修羅場のべからず集

・見たい現実を見る経営
・精神主義に頼る経営
・人望を気にする経営
・衆議に頼る経営
・敗戦時のアリバイ作りに走る経営
・現場主義の意味を取り違える経営
・情理に流される経営
・空気を読む経営
上記、「修羅場の経営の心得」の逆をたどっているものであるが、反意語があるとイメージがつくこともあるので載せておく。

最後に

緊急事態下での経営では、手許キャッシュがとても重要であることがわかった。また、出血している部分を早く止血しないと人間は死に至るのと同様に、会社としての課題と打ち手の迅速さも求められる。よくよく読むと当たり前のように感じる部分もあるかもしれないが、当たり前のことを当たり前にすることが難しいのである。逆をいえば、危機時だからといって特別なことをするのではなく、手許キャッシュが続く限り基本に忠実に経営を行っていけば危機時は乗り越えられるということを言っていると考える。

最後まで目を通して頂きありがとうございました。いいなと思うかことがあれば「すき」を押していただけると大変励みになります。