読書 - もう銀行はいらない

はじめに

この本の帯に「銀行の9割、銀行員99%は消える」と書いてあったことから、興味を持って手に取ったものである。
この本は、銀行員から独立して起業したが、起業した際に銀行からあしらわれた扱いを受けたストーリーから始まる。

なぜこの題名なのか。


端的にいうと、ほとんどの銀行員には貸出する能力がないためである。ここまで生き延びてこられたのは、マクロ経済の恩恵、詐欺的な貸付を行ってきたためである。

マクロ経済の恩恵


マクロ経済の恩恵とは、具体的には朝鮮戦争から高度経済成長期付近の時代のことである。当時は、企業側の問題として内部留保が小さく、また経済環境として物が不足している状態の経済であったため作れば売れるという状況であったため、企業は設備投資のためにお金を借りたとしても貸し手側はほぼリスクなく貸付が可能であった。(物を作れば売れる需要超過時代のため)
また、当時は欧米企業のフォロワー経営であることから、小リスクで企業を成長されることができる環境であったのも要因の一つ。
また、1960年付近では朝鮮戦争時代のやり方が陳腐化してきて日本経済の成長が鈍化し始めたタイミングで、エコノミストたちは「過去に作られた設備の生産性はいずれ下がり、投資利回りは低下する」と考えていたが、当時の大蔵省官僚の下村氏が「技術革新によって生産性は高まり、投資利回りは落ちない。」と考えており、技術革新を促すような投資を促進していけば、日本は2桁成長を維持できると考え、この考え方が採用され国の政策として実施された。
また、1980年代のバブルも「プラザ合意」の急速な円高による経済停滞のリカバリーとして日銀の指導により、市場への貸出を無制限にやるような施策が出されており、当時閉鎖的なマーケットであった不動産や株式に資金が向けられた。これによって引き起こされた「バブル経済」である。

詐欺的な貸付


1990年代マイホームブームがあり、ステップアップローンと呼ばれる一定期間低利率で、一定期間経過後に利率が引きあがる仕組みのローン(終身雇用、年功序列の給与体系が背景にある)が流行った。しかし、バブル経済の崩壊の尾を引きずり、利率が上がる2000年前後は給与が想定以上に上がらずデフォルト発生率が急速に上がった。これを証券化し農協に売り払ったりし、難を逃れたのが銀行である。また、直近では「かぼちゃの馬車」に関連したスルガ銀行の事件も同様の部類である。

上記のような状況から、貸付能力のような銀行の主体的業務ではなく周辺業務でかつ他人の相乗りで設けてきたのが銀行ビジネスであり銀行員なのである。従って、銀行業界にIT企業やテック企業が参入してきてもうまい防御線や予防線が晴れていない状況である。また、彼らのほうがカスタマージャーニーの分析等が従来の銀行よりもできていることから顧客がとって代わっていく可能性が高い。

これからの銀行

現状の日本経済は、金融後進国である。これはハンコ文化に起因したペーパー文化や手渡しの現金の取り扱いを重視しているのが関係している。キャッシュレスは流通量の20%ほどしか日本は締めていないが、海外では、特に韓国は9割を超えているし中国も6割を超えてきている。このあたりを今後どう考えて対処していくかが重要なファクターとなっていくものであろう。

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