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英語のそこのところ 第3回 外にある正しさ? 内にある正しさ?

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

 そろそろ11月も中盤ですね。だんだんと、12月の足音が迫ってきて、ああ、今年ももう終わり、あれもやってない、これも終わってない。でも、まあいいっか。何にも終わってないけど、忘年会はやっておこう。なんて話が出てくる時期です。

 前の職場の英会話スクールではパーティは欠かせないものでした。特にクリスマス。一年の終わりということで、Native English Speakerも愉しみにしているし、Native English Speakerとの交流を愉しみにしている受講生の方も多い。
 で、イベントとしてクリスマスパーティをやるわけですが、その準備段階でちょっと困ったことになったことがあります。


「ケンジ、クリスマスパーティの参加者どれぐらい集まった?」
 徳田がケンジに声をかけた。パソコンとにらめっこしていたケンジが振り向き困った顔をする。
「どうした?」
 徳田は嫌な予感がする。2週間ほど前の会議でイベント担当になったのが新人のケンジ。前職は居酒屋チェーンで働いていてパーティの盛り上げや人集めはお得意のものということで、担当を任せていたのだ。
「すいません。ちょっと難航してまして」
 とケンジは頭をかきながら、データを差し出した。A4のプリントアウトの表を徳田は眺める。
「これって……」
 徳田の声が途絶える。100名は入るという会場を用意したのはいいが参加者は20名にもいっていない。パーティの開催日まで10日ほどしかない。

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 埋まるのか? 埋まんなきゃ、大恥で、大赤字だ。貸し切りのホテルの広間で閑散とした参加者、呑んでいる人より給仕してくれるホテルのスタッフたちが多い。
 泣きたくなる。

「これ、不味くね?」
「そうっすね。俺もこの人数集めるのは無理っぽいなぁっと思ったんですけど、みんなで話して決まったことだし、いろいろやってみましたけどダメっぽいです」
「無理っぽいって……。そう思ってんなら最初から言えよ」
「だって、みんなで決めたことだから、それが正しいのかなぁって」
 徳田は唖然としてケンジを見上げた。担当だというのに全く責任を感じていないケンジの発言にあきれたのだ。お前、責任感はないのか、と言おうとして徳田は口をつぐむ。ああ、これが日本的な無責任ということなのだ。

 こういうことってありますよね。
 なんとなく、その場の雰囲気で決まって実行しようとしたんだけど、結局うまくいかない。で、あとになって、実は俺は……って言ってくるやつがいる。そういう場合、上席の責任者(今回は私。苦笑)が尻拭いに奔走することになるわけですが、こういう状況は、Native English Speakerにはなかなか起こりません。彼らは、納得しないことは、実行に移さないのが原則です。

 と、ここまで書くと、ビジネス書なんかだと、さすがNative English Speakerは責任の所在をはっきりさせて、物事にあたる。素晴らしい。見習いましょう! ということになりがちですが、実際のところそう一方的に『素晴らしい』とは言い切れないところがあります。

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