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第34回 誰に対しても

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

【お知らせ】
最新刊! 「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト2 基本時制 現在形 進行形 未来」販売開始!

 わたしの主宰する英会話スクール「英語・直観力」で、企業英語研修用に使っているテキストを一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 第2巻は、現在のことだけを伝えると誤解されている「現在形」、そこでやってることだけを伝えると誤解されている「進行形」の誤解を解いて、気持、意見を正確に伝える判断基準を習得していきます。現在完了の使い方がいまいち判らないというあなた、それは、現在形、進行形についての誤解から生じてるのです。急がば回れで、手に取ってみてください。

 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは2014年7月3日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。Native English Speaker の独特のコミュニケーションを扱っています。オリンピックが開催されて、Native English Speaker とやり取りされる方もおられると思いますが、Native Japanese Speakerとはちょっと対応を変えてあげてくださいね。(著者)。

【本文】

「徳さ~ん、ちょっと」
 土曜日の朝、レッスンを終えたCatherineが受講生を送り出したあと、徳田に声をかけた。
「なんかあった?」
 先ほどの受講生との間で何かあったのかと、徳田は仕事を中断する。また、デートにでも誘われたのかな? と心配する。美人過ぎるのも、トラブルのもとなのだ。
「?」
 金髪碧眼の綺麗な美少女(美少女に綺麗を重ねるほどきれいってことです)のCatherineが手で右目をかきながら、徳田の前の椅子に座った。
「I’m feeling my eye too sticky. I can barely keep my eye open.」
 ネチャネチャする? 目が? どういう表現だ?
 徳田はきょとんとしながらCatherineを見た。少なくとも眠たくて目が開かないわけではないらしい。そういっている間にもかゆいのかCatherineは右目をかく。
「ああ、かかないほうがいいよ。ばい菌が入るから」
「うん。ちょっと見て」
 徳田は近づいて、Catherineの菫色の目を見た。
 確かに、目やにっぽいものが目頭についていて「ネバネバ」というのは判る。
「ちょっと、赤くなってるね。大丈夫?」
 徳田はティッシュを渡しながら尋ねた。
「う~ん、ちょっと難しいわ。かゆみもひどいし」
 徳田は、Catherineのスケジュールをチェックする。午後にあと2レッスン入っていたはずだ。1時からと2時からだ。ちょうどバックアップのRichのスケは開いている。
 徳田はRichをちらっと見た。
 テキストを作っているRichがディスプレイを見ながら、サムアップしてきた。阿吽の呼吸。息が合うとこういうものだ。Native English SpeakerもNative Japanese Speakerも関係ない。
「Richが大丈夫みたいだから、今日は早退しなよ」
「うん、本当にすいません」
 普段は『率直な意見』を言うが、それ故に『責任感が強い』Catherineは体調不良になってしまったことが、悔しいのか、うなだれて謝る。
「まあ、気にしない、気にしない。一コマ目だけでもやってもらって助かった」
 徳田はそう言いながら、ディスプレイに向き直った。さっきのメールの続きを書き始める。
「あのぉ、徳さん?」
「ん?」
 そのまま帰る準備をするのかと思っていたCatherineがめずらしくグズグズとそこに座っていた。『率直な』Catherineらしくもない。
「本当に申し訳なんだけど、病院に一緒に行ってくれない?」
「ええ?」
 徳田は驚いた声を上げた。

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