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第27回 ごめんでは済まないんです

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは2014年5月8日に水戸市の「文化問屋みかど商会」にてファクシミリ配信誌に掲載されたものです。COVID-19のせいで、海外へ出かけられることは少ないかもしれませんが終息後に、海外でトラブルに巻き込まれたときに備えて、読んでいただければ幸いです(著者)。

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

【受講生募集のお知らせ】

徳田孝一郎の主宰する英会話・英語スクール「英語・直観力」では、確実に英語力・英会話力を向上させたい受講生を募集しております。
中学生から社会人まで、受験英語・TOEIC・英会話、すべての英語のお悩みに対応可能です(レッスンはSkype・zoonなどで行いますので、安全です)。ご興味がございましたら、eisoco@eigoryoku-appu.comからお問い合わせください。

指導実績

<英会話>
在日アメリカ大使館やメリルリンチ日本証券株式会社、パナソニック エクセルスタッフ株式会社をはじめとする企業における口頭英語力の審査基準となっているVERSANT テストにおいて、1500名の指導をし、その85%の受講生をスコアを伸長させています。

スコアアップ目安
片言(VERSANTスコア30前後)から意志疎通ができるレベル(VERSANTスコア40前後)、また、意志疎通ができるレベルから交渉ができるレベル(VERSANTスコア50前後)までに引き上げ。

主な受講生の職種は、
大手広告代理店(海外営業)、
外資系製薬会社・薬学博士、
大手電機メーカーのプロダクトマネージャー、
大学病院・勤務医、
素材メーカーの海外営業、
外資企業・顧問弁護士、
遺伝子工学・大学院生、
通信系システムインテグレーター・エンジニア、
大手外資銀行・為替ディーラー、
などの業務で忙しい方々の英会話力を、短期間で目標のレベルまで引き上げ。

【本文】

 ごめんで済んだら警察はいらない。というのは、いつごろから言われているか判りませんが、わたしの世代ではよく言われたものです。サッカーをしていて隣の家のガラスを割ったりして、親に怒られて、謝る。そうすると、このセリフ。じゃ、行くぞとばかりに家を連れ出される。
 おまわりさんに突き出されるのは嫌だとドキドキ泣きそうになりながら、しぶしぶついていくと、行先はなんのことはない、ガラスを割った隣の家で、先ほどとは打って変わった声色の母がわたしの代わりに謝ってくれる。わたしも半泣きで謝ると隣の家の人も許してくれて、ガラスの弁償代はいいよ、これからは注意するんだよと、仏様のようなお言葉、ああ、助かったと思ったのもつかの間、突然母が、
「そうはいきません。ガラス代は弁償させていただきます。この子のお小遣いから出させますから」
 と、鬼のような一言
 ああぁ、好きな本が買えなくなる。クラッシャー・ジョウの最新刊が出るのに。どうしようと。
 これまた半泣きで、世の中というのはごめんでは済まないんだなぁと、小学生にしてちょっと世間のつらさを知った気分になります。
 ルールを犯してしまって、それを認めて謝罪し反省したとしても、それなりのペナルティを受けるというのはわたしの経験上当然のことで、謝るという事は償うことがセットになっていると思っているのですが、どうもこれは違うらしいと気付いたのは、英会話スクールのマネージャーをしていたころ、Native English Speaker スタッフのRichと埋め合わせを受け取ってくれない受講生たちのことを話していた時のことでした。

「ピロロロ」
 と、デスクの電話が鳴る。
 徳田は、時間を確認しながら受話器をとった。
 夕方6時45分。この時間帯の電話は心してとる必要がある。
「と、徳さん!」
 出た途端に、Dickの慌てた声が飛び込んできた。
 あちゃぁ、やってくれそうだと徳田は頭を抱える。案の定、
「本当にごめん。前の仕事が長引いてしまって、7時に着きそうにない」
 徳田の顔から血の気が引く。
 なんてこった、こういう時に限ってバックアップのRichが有給で休んでいる。レッスンに穴が開く。
「わかった。Dickが着くまでつないどくから、何時頃着きそう?」
「えっと、7時15分かな? その分、長くレッスンするから」
 ディックは殊勝なことを言う。
「休み時間なしで、頑張ってもらうからな。Dick」
「もちろん。頑張るよ」
 徳田は、受話器を置くと深く背もたれに躰を預けた。

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