英語のそこのところ 第1回 はっきり言っていいんです!!
著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子
徳さんは、変わってるね。
と、Native English Speaker からよく言われる。実際、日本人の友人の間でも変わりもんだという評判(?)を得ているので、英語を使っても日本語を使っても「ぶれない」(笑)ということで、ほめ言葉として受け取っていたのだが、あるとき何かの拍子に突っ込んで聞いたことがあって「へぇっ」と思ってしまった。
私は、日本人ぽくないんだそうで。
何を言っていやがる、おれは九州福岡の産で、顔もきっちり猿顔。たまにイチローに似てるなんていってくれる人もいるが、ブラピだのトム・クルーズだのに似ているなんて言われたことなんてない、馬鹿にするな、って嬉しがっていたら、そういうことじゃない。
意見がはっきりしているので、話しやすいということらしい。
ああ、なんだそういうことかと納得するわけですが、それは確かにわかる話なのです。
20年以上英語をお伝えする仕事に関わってきていて、そのうち7年ほどNative English Speakerを日本人にご紹介する会社にいました。最初にNative English Speakerをご紹介する際に私も同席するのですが、そこで思うのは、英語力以前に日本人は意思表示と理由付けに慣れていないなぁということです。
たとえば、アイスブレークトークでNative English Speakerが、
"What country would you like to go?"
とたずねる。もちろんお客さんが意味をとれないこともあるけど、前の会社の講師たちは我慢強いのが採用条件だったから英語をノートに書いて見せたり、身振り手振り、絵を描いたりと涙ぐましい努力をしてくれて意思疎通させるわけです。
そこで、お客様が
「ああ、どこに行きたいかね」
とやっと伝わる。
でも、これはこれでいいんです。なんと言っても英語ができないから英会話スクールに応募しているわけですから。問題はこのあと。
「行きたいところかぁ」
と熟考が始まる。この熟考の内容にはさまざまなパターンがあります。
その一、本当に行きたい国のことを考えていないパターン
その二、行きたい国がないので、どう言おうかと悩むパターン
その三、行きたい国を無理やり作り出そうというパターン
その四、行きたい国はあるけど、このNative English Speakerの母国でないと気分を害すんじゃないかと思っていえないパターン。
代表的なのはこのあたりでしょうか。
とくに、三と四なんて日本人の相手への慮りが良く出ていて素晴らしいと思うんですが、どちらにしても不味いのは、この熟考⇒沈黙ということです。
沈黙が長く続くことで、Native English Speakerは回答を拒絶された、ひいては自分を拒絶されたと感じてしまいます。
もらったパスはどんな形でもいいから返す。というのが英語の原則なんですね。
だから、ここははっきりといったほうがいい。
行きたい国はない とか、
想像がつかない とかね。
そんなこと言ったんじゃ、会話が冷えてしまいそうで怖いと思われるかもしれませんが、それは日本語のコミュニケーション。
英語のコミュニケーションでは、「なぜなら~」を続かせて自分がどういう嗜好を持っているかをはっきりさせて、相互理解を深めようとします。「そうだなぁ、ヨーロッパ方面に興味があるかなぁ」といった具合に言葉を濁して、意思表示を逃げてしまう日本語と大きな違いです。
その点で、私は英語を話すときは意思表示をはっきりさせていました。
それは、日本語を話す際にも実は同じで、意見ははっきりしているんだけど角が立つから曖昧にと心がけていたからだと思います。このあたりは転校を繰り返して、意見をはっきり言うと酷い目に会うという経験をした知恵なのかもしれません。
それはともかく、そのあたりが英語では取り払われて、はっきり意思表示がされて、しかも、その理由をすらすら言うから日本人ぽくないということだったわけです。
まあ、生来の理屈っぽさが役に立った稀有な例ですね(笑)
でも、こういう理屈っぽさ、英語でコミュニケーションする際には役に立ちますよ。ちょっと心がけてみてください。
ということで、
"What country would you like to go?"
と問われた際の返事を作ってみてください。
「そうだなぁ、フランスには行ってみたいな。だって、フランスには美味しいものもいっぱいあるし、私、ベルサイユのバラのファンなんだよ。ベルサイユ宮殿を見てみたいんだよね」
という返事を英語にしてみましょう。
英語のコニュニケーションは、「意志表示⇒その理由」という流れで話を膨らましていくのが特徴です。
(初出 水戸みかど商会ファクシミリ誌 2013年10月31日)
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