見出し画像

カウンターの内と外 「英語のそこのところ」第113回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年7月21日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 海外のバーやカフェで、差別されたという話を聞きますが、本当の原因は我々Native Japanese SpeakerとNative English Speakerの接客の考え方の違いにあるのではないか、と思った話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

新展開 第2弾! 映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル8」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7から、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっていきます。

 この「ESM Practice 8」では、アーサー・C・クラークの「幼年期の終り」とモンゴメリーの「赤毛のアン」のセリフを英語にすることに渡来します。
我々が彼の動機を疑っても不思議ではないでしょう?(from 幼年期の終り)
カレルレンは、彼(ストルムグレン)が決して解けないなぞに付きまとわれたまま、生涯の長い黄昏の時へと踏み込んでいくのを、見るに忍び難く思ってくれていたのだ。(from 幼年期の終り)
彼らは決して最後まであきらめることはない。(from 幼年期の終り)
世界はまだ美しい。いずれは別れねばならないとしても、なぜ出発を早める必要があるだろうか?(from 幼年期の終り)
楽しもうと決心すれば、たいていいつでも楽しくできるものよ。(from 赤毛のアン)
グリーンゲイブルズのマシュー・カスバートさんでしょ?(from 赤毛のアン)

お愉しみに。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

「『お久しぶりですね』とあいさつしちゃいけない」
 いまのバーやスナックではどうなのかは判りませんが、私が学生時代バーテンをしていた新宿のスナックではそんな教育を受けたものでした。

 お客様が知り合いを連れてきたとする。もし前もってそのお客様が「この店はよく来るところなんだよ」とか「この店はなじみでね」みたいな自慢話をしていたら、立場がなくなるからだそうで、ああ、酒場風のやさしさ、おもんばかりだなぁっと感心したものです。
 バーや酒場ってのは、客は背伸びして自分を大きく語るもので、バーテンはそれを黙ってうなずきながら聞くものだというのも、そのスナックで習ったこと。大学の現代哲学でやっていた感情論や身体論を実地に身に付けることができた貴重なバイトでした。

 そういうわけで、酒場のそこはかとないやさしさが好きで、社会人になってからは呑む側にまわってはいますが、バーや酒場はよく行く。私の住んでいる船橋はそれほど大きな街ではないですが、なかなかいいバーや酒場があって、最近は生意気にも若い友人を連れて行ったりもするようになっています。

「いやぁ、よかった。就職おめでとう」
 席について注文した瓶ビールを注ぎ合うと徳田がグラスを上げた。
「本当、良かったすよ。就職できました」
 ほんっっとと聞こえるぐらい溜めて、在原がグラスを上げた。頭を下げて、グラスを合わせる。
「徳田さんのおかげっすよ、高山さんに紹介してもらって助かりました」
「いや、いや、実力実力。高山さんに紹介したって思うところに就職できない人もいるんだし」
 高山は徳田の知り合いで就職支援の会社をやっている人物だ。徳田は半年ほど前に就活の相談を受けて、高山を紹介していた。
「いや、そういうことがなかったら、おれ、どうなってたかわからないっすよ。うちの大学の就職課あてになんないっすから」
「まぁ、基本的なこともできてなかったからねぇ」
 あははと徳田は笑った。
「メールのことっすか。あれは今から考えるとマジ汗っす」
 在原のメールには、はじめ「題名」はブランクで、本文はいきなり要件から入るという高飛車なものだった。徳田が「名を名乗れ」と返信したことがある。
「でも、素直に話を聞いたからね。これならうまくいくかなと、あんとき思ったな」
「いやぁ、徳田さんから言われたからっすよ」
「おぉ、うまいねぇ。じゃあ、おれのおかげってことで、今日は在原君のおごりだな」
「ええ、おれのおごりっすか。まじ?」
 在原が慌てて店を見回す。高級感のあるオーセンティックバーなのだ。学生には敷居が高い。
「だいぶ、うれしいことがおありのようですね」
 在原がきょろきょろしたのを機にマスターが二人に声をかけてきた。
「そうですね。彼の就職が決まったんでお祝いです」
 徳田が言葉を改めてマスターに返事をする。
「ああ、そうなんですね」
 と、マスターが在原を見た。
「ほら、どこに就職が決まったか言えよ」
「え、あ、新日鐵住金です」
 まだ就職もしてないのに会社名を言うのが気恥ずかしいのか、照れながら在原が答える。いい子なのだ。
「それは、すごい。大手じゃないですか」
「はい」
 在原はちょっと顔を紅潮させてうなずいた。
「では、これは私からのおごりです」
 マスターがちょっと後ろを見ると棚からバーボンを下ろす。
「え、いいんですか?」
「徳田さんには贔屓にしてもらってますから。えっと」
 マスターがちらっと徳田を見る。まだ、在原の名前を聞いてなかったからだ。徳田がマスターに在原と告げる。
「では、在原さんもまた来てくださいね。ボトルキープしておきますから」
「あざっす」
 在原がまた頭を深々と下げて礼を言う。
「徳田さん、さすがっすね。常連って感じで、おとなっす」
「まぁね」
 徳田は微かに笑みを浮かべ、ビールに口を付けた。

「と、まぁ、こういうわけでさ。やっぱり常連扱いされると嬉しいもんだよねぇ」
 がははと徳田がまったく大人っぽくない笑い声をあげる。
「おれの株が上がって、いやあ愉しかったよ」
「そりゃよかった。徳さんもたまにはいい事するじゃん」
 これはDidoだ。場所は変わって、秋葉原のビアホールで呑んでいる。Richも一緒だ。
「『たまには』は余計」
 はははっと三人が笑う。暑気払いに呑んでいる。
「でも、意外だな。その話は」
 Richが興味深そうに徳田に言う。
「え、おれがやさしいってこと? 意外でもないでしょ。おれはやさしいさぁ」
「まぁ、徳さんがやさしいのも意外だけど、そのマスターのやさしさがもっと意外だね」
「マスターのやさしさ? なんで?」
 徳田は首を傾げた。
「いや、日本ではそういう客の特別扱いってやらないんだって思ってたからさ」

ここから先は

1,565字 / 1画像

¥ 220

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?