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隙間も大事「英語のそこのところ」第125回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2017年1月5日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 Native English Speakerってのは責任の所在をはっきりさせたがる人々ですが、その理由をびっくりしたというお噺です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル14」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっています。
 この「ドリル14」ではQueen のWe are the champions を題材に英文を作っていきます。

何度も刑期を務めているさ。
宣告された刑罰をやってるさ。
でも、本当は何も悪いことはしてない。
そりゃ、1つ、2つ下手を撃ったことはある。
砂を蹴りつけられたことだってある。
でも、ついにやり遂げたんだ。
ああ、私たちは続けていくよ。
おれたちは、チャンピョンだろ? 友よ。
そうさ、最後の最後まで戦い続けるのさ。
敗者のための時間はない。
私たちは世界のチャンピョンなのだから(from We are the champions)
英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

 あけましておめでとうございます。みなさん、今日5日あたりから始動されているのではないでしょうか? 年始の挨拶廻りに行って帰ってこられたころかもしれません。取引先で勧められてちょっと昼からアルコールが入っていい気分、暇つぶしに「英語のそこのところ」の戯言でも読んでやるかとアクセスしていただいているのであれば、こんなにうれしいことはありません。気軽に読み飛ばしてください。

 でも、なかにはまだお休みの方もおられるかもしれません。今年のカレンダーは元旦が日曜日でしたから、その分正月休みが後ろに伸びて今日明日と休んで、あれ、また土日なんで休み。んでもって、ハッピーマンデーの成人の日が来て、おお、9日間も休めるなんて人もいそう。羨ましい限りです。

 そんなことを言ってはいますが、昔、私が勤めいていた英会話スクールは生意気にも正月休みが長くて、大学からの友人で編集者をやっているやつに、
「おめぇ、いいかげんに働け」
 と、この期間に会って呑むたびに言われていたものでした。だって、いつ連絡が入ったって、
「ああ、休みだから呑めるよ~」
 って答えているんですから(笑)まったくの極楽トンボでして。
 ただ、私だって休みたくて休んでいたわけじゃない(本当か?)。
 英会話スクールという仕事は実はどうしても年末年始の休みが長くなっちゃうんです。どうしてかというと、講師のNative English Speakerたちが休みたいのは、クリスマス。なので、当然12月の23日ごろからNative English Speakerたちは働かなくなる。ほかの英会話スクールがどうかは判りませんが、前の会社はほとんどのNative English Speakerたちが登録講師だったんで、この時期にレッスンを頼んでも、
「徳さ~~ん、今日はなんの日か知ってる? クリスマス・イヴだよ? どこの世界にクリスマスに働くやつがいると思うの?」(ここにいるんですがね)
 なんて言われて、仕事にならない。
 で、ようやくクリスマスが開けて27日ごろからNative English Speakerは動き出すんですが、今度は日本人スタッフが、
「徳さ~~ん、もう年末ですよ。どこの世界に大晦日近くまで働く(以下略)」
 ということになって、これまた仕事にならない。
 結局、23日ごろから明けて7日ごろまでの長期休暇。小さな会社なのに2週間近くの休みがありました。まぁ、それなりに売上には響くんで困ったものだったんですが。
 こんな話を始めたのは、そんな長期の正月休み明けにこんなことがあったからでして。

「おお、久しぶり? Didoはアメリカに帰ったの?」
 徳田はエレベーターで一緒になったDidoに声をかけた。
「あけましておめでとうございます。おれは帰らないよ。彼女と温泉に行ってた」
「おお、うまくやってるな。Richは?」
 Didoの隣に立っているRichにも徳田は尋ねる。
「おれも帰らないよ。この時期の飛行機代、馬鹿馬鹿しいもの」
「確かに。じゃあ、ビデオゲーム三昧だな」
 Richはイケメンなのだが完全にインドア派、ゲームオタクなのだ。
「そう。テロリストの牙城を全滅させたよ」
「おお、イーサン・ハント」
「いや、ジェームス・ボンド」
 すかさずEnglandのヒーローにRichが訂正した。RichはEnglish man なのだ。
「おっと失礼」
「イーサン・ハントはおれのほうかな?」
 AmericanのDidoが口を挿む。
「え? じゃあ、退役して随分とお経ちになるのでは?」
 Richと徳田がふたりしてDidoの雄大な腹を見る。
 Didoがサムアップしてそれに答えた。なにを意味している合図なのかは謎だ。
 エレベーターがフロアについて会社のドアを開ける。
「あけましておめでとうございます」
 と言った瞬間にスタッフが振り返った。それぞれの席についているのではない。道路に面した窓に向かってみんな立っている。
「どったの?」
 徳田が手近のスタッフに声をかけた。
「徳さん、休みの間、窓が開いてたみたいなんです」
「ええ?」
 徳田は窓の側にあるコピー機やPCに近寄る。書類が散乱して、水浸しになっている。酷いところは水たまりができていた。
「あちゃぁ~。雪が降ったからなぁ。吹き込んだね、こりゃ。初仕事は掃除だな」
「そうですね。まずは部屋を綺麗にしないと」
 話しかけたスタッフが同意すると雑巾をとりに動いた。
「しょうがねえなぁ」
 とほかのスタッフも動く。
「ああ、れいんはサーヴァのチェックしてみて。水がかかっている可能性があるから」
 と、徳田がれいんに頼んだ。れいんと言ってもれっきとした日本人だ。イベントや重要な日に必ず雨を降らすので「雨女」でれいんと呼ばれている。
「さっき見たんですが、大丈夫そうです。でも……」
「徳さん!」
 れいんの言葉は、徳田を呼ぶDidoとRichの声にかき消された。
「なに? まだ、なんかあった?」
 徳田がふたりに近寄る。
「なんか壊れてる?」
 ふたりが同時に頸を振る。めずらしい、英米同盟だ。
「?」
 徳田が首を傾げる。と、Didoが、
「そんなことより、いったい誰が、窓を閉め忘れたかを突き留めようよ!(Whose fault is it?!)」
 と口走った。
「え?」
 予想外の言葉に目をぱちくりさせながらも、徳田はRichを見る。こちらも強く頷いている。
「こういうトラブルは、だれに責任があるかをきちんと決めてから、その責任者に協力する形でトラブルを収めなきゃ!」
「ええ、ええ?」
 Richの追撃の言葉にぱちくりでは済まず、今度は徳田が目を剥く。
「おれは、窓開けてないよ」
「おれは、窓を触ったこともない。だからおれ、じゃない」
 はぁ、と徳田は頷いた。

 いやぁ、この時は本当にびっくりしました。この手の誰がやったかわからないようなミスから起こるトラブルの場合、我々Native Japanese Speakerはまずそのトラブルのリカヴァリィを優先して考えるものです。でもNative English Speakerの場合は違っていて、まず犯人捜しから始めるんですね。で、犯人が見つかったらそいつに謝罪させて、そいつを手伝う形でトラブルを収める。こんな所にも『日本語・日本人』と『English & Native English Speaker』の違いがあるんだなと、変な感心をしてしまいました。

 でも、その時はそんな変な感心をしてばかりもいられなかったんでなんとか英米同盟を説得して、仕事初めから大掃除。正月休みで鈍った躰には応えました(笑)

 で、そんなトラブルがおさまった後にDidoとRichにどうして犯人捜しが優先するのかと尋ねたんですが、この答えが揮っている。
 だって、だれの責任かはっきりしないと、貸し借りが判らなくなるじゃん、
 おれじゃないことをはっきりさせないと、気持悪い、
ですって。
 まぁ、なんと申しましょうか、さすが”Give & Take” をハッキリさせたがる「自分の中の正しさ」を守りたい人々の思考の流れには、驚かされることしきりです。
 ところで、この強力な「英米同盟」を私がどうやって説得したか気になりません?
 あ、気にならない。
 じゃぁ、この話は「おあとがよろしいようで」となっちゃうんですが、そんなつれないこと言わずに気になることにしてください。
 私はその瞬間に、納得してないけどいっしょに大掃除してもらうことを「私の借り」にするとか、業務命令だと言いきっちゃうとか思ったんですけど、あまり巧いやり方じゃない。前者だと、私が借りを作るのは筋違いだと言われるだろうし、業務命令だとギスギスする。で、私がどう攻めたかというと。

「あ、でも、だれがやったか、おれ知ってるんだよ」
「え? だれ? ケンジ?」
 Didoがいかにもその手のミスをしそうなスタッフの名前を上げる。
「いや、ちがう」
「じゃあ、りっちゃん?」
 りっちゃんは頑張り屋でいつもオフィスに最後までいるスタッフだ。
「ちがうよ。りっちゃんはそんなに抜けてないさ」
「じゃぁ、だれだよ?」
「責任被るために、徳さんが自分だっていうのはないからね。最終日の打上げに一緒に早めに出たことを憶えてるよ」
 Richが徳田の年末の行動をエビデンスとして上げてくる。まったくもって白黒はっきりさせたがる。
「実はさ」
「実は?」

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