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英語のそこのところ 第13回 a(an), the が主役?

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

 時が流れるのは速いもので、この間正月だったかと思えば成人式も終わり、センター試験も終わって1月の下旬に入ってしまいました。正月の書初めで、一念発起、今年こそは○○をものにするとスキルアップを誓われた方も多いと思います。大丈夫ですか? 心理学の本によるとそういう決意は初めの三週間続くとずっと継続するそうですが。。。え? 余計なお世話だって。そういうお前はどうなんだ? はい、私は継続しておりますよ。目標を作らないという目標をここ20年実践しております(苦笑)。

 自分で言うのも何なんですが、変に真面目なところがあって目標を作ると碌でもないことに陥りやすいんです。目標のために、今のその時のことを愉しめなくなっちゃう。

 たとえば、ツアーの旅行なんかがいい例で、「はい。今日はマドリーのプラド美術館、その次に王宮、その次はトレド、またその次は……」という目標を立てられるとよしスケジュール通りに回ってやるぞと変な気を起して、そればかりに躍起になる。ツアーのバスに遅れてくるようなほかの旅行者がいようものならちょっと舌打ちしたりして。で、スケジュールをこなすという「目標」を達成するのはいいんですが、あとにはなんにも残らない。ホテルに帰ってくると疲れた体があるばかりで、いったいどこに行ったのかすらよく覚えてないことになる。「体験」はあるけど「経験」がない(©森有正)というやつです。なんだか、本末転倒で損している気がして大学卒業するぐらいに目標を作るのはやめました。

 で、目標の代わりに意識しているのは、「今、目の前のこと」を愉しもうという気持です。目標達成の喜びは一瞬ですが、「今、目の前のこと」を愉しめればいつでも愉しめますからね。私は欲深いんです。あとは目的を頭の片隅に置く意識でしょうか。なんのために、今のこれをしているんだということですね。実はこれ、われわれNative Japanese Speakerにとっては重要なことなんじゃないかと思っています。最近よくいませんか? 話にオチがない人って。あれって最後に結論を持ってくる日本語の特性のために、話しているうちに何のために話しているか(オチ・〆)を忘れてしまうんじゃないのかなと私は睨んでいるんですが。どうぞオチは頭の片隅に。

 さて、今回は前回に続いてオリジナルテキストのチェック作業をしている際のお話です。変わり映えしない場面で申し訳ないですが、もう少しお付き合いください。これが映画だったり漫画だったりすると画面に変化がないと水戸の編集者さんに怒られてそうですが、エッセイですのでね。

 前回の内容をざっとおさらいすると、名詞には可算名詞・不可算名詞というものが絶対的にあるのではなくて、話し手がそれを数えたい【=個別に見たい】と思うか思わないかがまずポイントで、数えたいものは具体的に捉えているし、数えたくないものは全体的に捉えているということでした(絶対可算名詞・絶対不可算名詞というのもあるのですが、それはごく例外なのでここでは扱いません)。
 これだけでも、怠け者の私にとっては、work とworks の意味をいちいち覚えずに済むようになって大助かりだったのですが、校正作業をしているとこれまた驚きの事実、Native English Speaker独特の考えのフローが浮き上がってきます。今、目の前の校正作業ばかりを愉しんでしまって、全く先には進めません(笑)

「徳さん、このthe はいらないよ」
 と言われて徳田はまたかと頭をかきながら、Rich Eddingtonの手元を見た。するとそこには、またもや無残に修正された英文が。

I bought a cake at the Kobe-ya.

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