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運命の絆~最高の友~2000字のドラマ

とある高校に 一人の転校生がやってきた
人野 心(ひとの しん)
彼は身長も高く 目鼻立ちも良く
いわゆるイケメンと呼ばれる部類に入っている

授業がはじまるとますます彼の存在が際立った
頭脳明晰 容姿端麗
天は二物を与えていたと誰もが思った

そんな彼には誰にも言いたくない秘密があった

それは

「人野!何やってんだよ!パス!パス!」
「あ”~~!」

運動がまったくもって苦手だった

「ありえん!お前位の身長があったら、何となくやったって入りそうなもんだ!」
「ごめん(笑)」
「よし!今日からこの牧野雄二(まきのゆうじ)さまが特訓してやる!」
「牧野、お前は人野に勉強を教えてもらえ!」
工藤一真(くどうかずま)は牧野を小突いた

工藤は勉強も運動もそこそこ出来る、いたって普通の学生だった
3人は何となく気が合い、自然と毎日つるんでいた

ある日、牧野は学校を休んだ
「どうしたんだろう」
工藤は心配そうに人野に言った
「帰りに寄ってみようか」
人野の言葉に工藤はうなずいた

牧野の家は、川沿いの道を進み長く急な坂を上った所にあった
インターフォンを押すが応答がない
工藤はもう一度押した
「…はい」小さい声だったが、牧野の声だった
「おい!牧野か?」
「…あぁ」か細い返事が聞こえた
「ちょっと開けてくれ、話がしたい」
鍵が開く音が聞こえ、牧野がドアの隙間から顔を覗かせた

牧野の顔はひどく腫れて傷だらけだった
「どうしたんだよ!何があった!ちょっと入るぞ」
工藤と人野はドアをこじ開け、中に入った
そばで見ると思った以上にひどかった
「何があったんだ?」人野もすごく心配そうな顔で言った

牧野は重い口をあけた
「ちょっと、義理のおやじにボコられた」
「あのおやじか!」工藤はどうやら知っているようだった
「あいつ!許せねぇ!とうとうやりやがったな」
工藤は状況がまったくわかっていない人野に説明をした

牧野の家は両親が離婚したのち、母親は今の義理の父親と再婚した
再婚してから、すぐに母親が病でなくなり、今は義理の父親と牧野の二人暮らしだった
母親が亡くなってから、義理の父親の態度が急変した
手をあげる事はその時まではなかったが、食事は一人で外食したりして牧野には一切何もしなくなった
牧野はバイトで自分の食事代や学校の諸費用などを稼いでいた

シェルターみたいな所がある
しかし、そこだと高校に通えない可能性が出てくる
牧野は仕方なく、そのまま家から通う事にしていた
しかし、夕べ酔っぱらった父親が帰って来て、急に
「この家を売る。お前は好きな所に行け」と言われたそうだ
この家は前の父親が母親と牧野に置いて行ってくれた物だった

「ひでーじゃねぇーか!」工藤は怒りの矛先を壁に向けた

「俺もそう言ったさ。ここは母さんと俺の為に…それで殴り合いの喧嘩になった」
「それで、あいつは?」工藤は聞いた
「あぁ、病院に行った」
「僕たちだけじゃ、どうにも出来ないな。とりあえず、病院に行った方が良くないか?」
人野はそう言うと、1本の電話をいれた
内容は二人には聞こえなかった
3人は病院に向かい牧野の治療が終わると病院の外に出た

外には黒塗りのリムジンが停まっていた

「坊ちゃん、こちらへ」
「うん」人野はそう言うと二人に「乗って」と言った
二人は恐る恐る車に乗った
「坊ちゃん、先ほどの事は早急に対処させております」
「ありがとう」
「それとは別に、私の独断で少しやらさせて頂いております。勝手な事をしてしまいましたが」
「お前の事は信じているから。ありがとう」

運転手と人野の会話に二人はついていけなかったが、希望に満ちた何かが始まろうとしている事だけは感じていた

1週間後、顔の傷も癒された頃、牧野が教室に飛び込んで来て
「人野!お前何やった!」と言った

工藤はキョトンとした顔をしていた

「ん?僕たちに出来ない事なんだから、大人に相談しただけだよ」
人野は笑った
「なんなんだよ!俺だけ全然話が見えないじゃないか!」工藤は自分だけわかっていないのを悔しがった

「まぁ、待て!順を追って話す。まず、あいつは家を出た」
おぉぉ!工藤は「良かった!」と大声で叫んだ
「まだ続きがある!遺産を放棄したから、あの家は俺の家になった!」
おぉぉ!人野は面白がって一緒に叫んだ
「それから…離れてたおやじが連絡してきて俺の保護者になってくれた」

人野の運転手が「独断で…」と言っていた事はこの事だった

人野の父親は腕の良い弁護士だった
そして、何よりも「人の心を大切に」がモットーだった
人野の名前はそこからつけられていた

「バイトもやめたぜ!これで、思う存分バスケが出来る~」
「人野!約束通り、俺様がバスケの特訓をしてやる~」
牧野は教室内を走り回っていた

「牧野~!お前はまず人野に勉強を教えてもらえぇ!」
工藤も嬉しそうに牧野を追いかけ教室内を走った

友達の事を思い切り思いやる工藤
明るくて我慢強い牧野

この学校に来て本当に良かったと人野は思った

そして自分も笑いながら二人を追いかけ教室内を走った

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