~僕の声届いてる?~(だいたい2000字小説)
白くふわふわした世界
そこから下をのぞきこみ何やらブツブツ言っている子がいた
「ああ、何でそっちに行くのよ!違うでしょ!」
「まただ、あの人も間違っちゃってるしぃ」
イライラ、ブツブツ、体全体をバタバタさせて騒いでいた
「こらこら、静かにせんかい」
光輝いた大きな人が言った
「ねぇ!神様!早く僕を下に下ろしてよ!」
「まだ準備が出来ておらんじゃろ」
「もう、飽きちゃったよ~」
そう言うと、また別の場所に移動して同じように騒いでいた
「神様~助けて~」
別の子がやって来て神様に泣きついた
「もう無理!人間嫌い!自分勝手で、感謝もしない!手柄は全部自分のおかげ、失敗は全部他人のせい!」
「ふむ、それが人間じゃ」
神様は優しく微笑んだ
「でも、もう僕は嫌だからね」
そう言うとその天使はその場を走り去った
「うーん、どうしようかのぉ」
目を輝かせてその場に座ってこちらを見ている天使をチラッと見た
「ふぅ、仕方がない。お前が行って来なさい」
「やったー!」
大喜びの天使は下を見た
「どの人間にしようかなぁ…この人はだめだ、こっちの人も…」
「あっ!神様!僕この人にする!」
天使は一人の男性を指さした
「ん?彼は大変だぞ?」そう言うと神様はニヤリとした
「いいの!僕、彼に決めた!」
天使は準備を始めて「行って来まーす!」と下界に降りた
「あっ、待ちなさい…あぁ、大切な事が言えんかったのぉ」
神様は心配そうな顔をした
「やったー、ここが下界か~ワクワクするな!」
天使はまずは下界を楽しんでいた
「あの人はどこだっけ…あっ!いたいた」
天使は彼を見つけるとすばやく近づいた
「ねぇ~ねぇ~!僕が君の担当になったよ」
嬉しそうにそう言うとニコリとした
暗い顔をした男はただ前を向いて信号が青になるのを待っていた
天使にはまったく気が付いていなかった
「ねぇ~ねぇ~、僕の事見えないの?」寂しそうに言った
人間にはどうやら天使の姿が見えないようだった
「そっか仕方がない。まず何をしようかな」
担当の男の名前はアラン、小さな旅行会社に勤めていた
天使はアランと一緒に会社に向かった
アランは企画担当を受け持っていたが実績はなかった
どれもこれも似通ったものばかり
アランは転職も考えていたが何一つ自分には向いていないような気がしていた
「自信がないの~?」天使は聞こえるはずもないのに、そうつぶやいた
「う~ん、僕はどうやって励ましたら…」
アランは昼食をとりにカフェへ向かった
「いらっしゃい!いつものでよろしいですか?」カフェの定員は微笑みながらそう言った
「…あ、はい」アランは少し頬を染めてそう言った
「いつも同じだと、体に悪いですよ。これサービスです」
カフェの店員はミニサラダを置いた
「あっ!この人にお願いしちゃおうかなぁ」天使はこう言うと店員の胸の名札を見た
名札にはマリアと書いてあった
「えー?これはちょっとやりづらいなぁ…」天使はちょっと戸惑ったがすぐに切り替えた
「仕方ないか!とりあえず明日から~」
天使はアランと毎日過ごした
声も届かないのにアランに話しかけるのが楽しい毎日だった
同時にマリアに毎日アランを励ますように色々と工夫もしていた
「ねぇ~ねぇ~、アラン僕の声聞いてみたい?マリアにどんな魔法をかけてるか知りたくな~い?」
「僕、すっごく頑張ってるんだよ?君の為に」
アランには天使の声は届かなかった
ある日、マリアがアランに言った
「ねぇ、今度デートしない?」
「僕と?」
「そう、あなたと私よ」微笑みながらマリアは言った
天使の心にズシンと重い物が落ちた
「うーん、何なのー?これ」天使にはわからない感情だった
ある日の休日、アランとマリアは待ち合わせをし街をブラブラしたり映画を観たり楽しんでいた
マリアの行動力にアランは肝をつぶした
いつの間にか、自分の服や髪形も変わっていた
「うん!こっちの方が断然いいわ!」
マリアはニコニコしながらアランに言った
「こう言うの、やった事がなかったから…少し恥ずかしいなぁ」
アランも照れながらも、まんざらではない様子だった
アランは家に帰ってからも、鏡に向かって自分の姿を映し、右を向いたり左を向いたりしていた
シャワーを浴びに浴室に向かうと、鼻歌まで出ていた
「ふ~ん」天使はふてくされた様子をしていた
「僕の!お!か!げ!」フンと言って、隣の部屋に飛んで行った
その後も、アランはマリアのいるカフェに行っては楽し気に話をし、休みの日にはデートに誘った
天使は天界に戻って来ていた
そして不満そうにブツブツ言っていた
「おやおや、もう弱音を吐きに戻って来たのか?」
「…違う」
「それなら、どうしたのじゃ」神様は優しく聞いた
「…僕、人間になりたい…」
「なんと!!」
「だって、僕の声聞こえないんだもん。僕頑張ってるのにさ!」
「それが天使の仕事じゃ。自分の担当する人間にはお前の思いや声は届かん、あくまでも間接的に接する人間にだけなんじゃ」
神様はこの事を心配していた、そして話し続けた
「人間になるという事は、辛い事だらけになるという事じゃぞ。やりたくない事も、やらなければいけない事も、ありとあらゆる事がお前に降りかかり、お前はその都度苦しむ事になる。もう無理して人間の世界で修行せずともよい位になっておるんじゃぞ」
「うん…でも、アランに僕の声を伝えたいんだ。他はもう何もいらないから!」
天使は一粒の涙を流し、それはコロコロと神様の足元に転がった
「もう、いいから戻って来なさい」神様はふぅとため息をつくと天使にそう言った
天使は天界から、下界を覗き込むと、アランの姿を追っていた
アランはマリアと仲良く過ごしていた
仕事も順調に行き、幸せな毎日を迎えている
天使は二人を見ては、毎日涙をこぼし、コロコロと神様の足元に転がした
しばらくすると、アランとマリアは結婚した
神様の足元は足首位にまで天使の涙の粒で埋まっていた
「ふむ、そろそろじゃな」
神様は足元の涙の粒を拾い集め、天使を呼んだ
「まだ人間になりたいのか?」
「うん」天使は涙をいっぱい浮かべて神様に言った
アランとマリア夫妻に女の子が生まれた
大きな泣き声と共に…
「この子、すごく頑張ってくれたわ。名前はどうする?」マリアは聞いた
「そうだな…天使のような子だから、エンジェル…アンジェにしよう」
そして、続けた
「アンジェ、これからは僕たちの愛をたくさん注いであげるよ」
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