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研究室のお作法

それぞれの研究室にはそれぞれのルールがあって、私はそれを「お作法」と呼んでいます。

私はずっと流浪の研究者だったので、いろんな研究室に行きました。研究室によって違うお作法に対して、いちいち異を唱えずに受け入れるのが大人としてのタシナミというもの。おかげで「正攻法は一つじゃない」ことを肌で知りましたよ。

昨日も書きましたが、私世代の研究者は学部・修士・博士とも同じ研究室であることが一般的。

そういう、「学部・修士・博士が全部同じ研究室」の場合、ずっとその研究室の中で過ごしているので、その中のお作法が「アタリマエ」になってしまいます。まさか他の研究室では別のやり方をしているとは思わないわけ。

ずいぶん前ですが、当時いた研究機関のある研究室に、若い女性教員が赴任してきました。学位を取ったばかりの新進気鋭。

この方がまさしく「まさか他にお作法があるとは思っていない」方でした。学生の横で「フツーはね、こうやるのよ。フツーはッ!!」と叫びながら連呼していたものです(パワハラとかない時代)。

最初は「若くてきれいな先生が来た」といって学生も喜んで懐いていたのですが、徐々に距離を置くようになりました。そうなると目の届かないところがで学生が自分の意に染まないことをしているのでさらにその先生もプリプリ怒る。

時間とともにその亀裂が深まってしまい、結果的にはその先生が孤立していくわけですが(ご本人は案外気にしてなかったようですが)、いずれにしても「お作法はそれぞれ違う」という理解がないことに起因していた気がします。

もっとも、今は各試薬会社のサイトを始め、個人のサイトや動画で、「○○の実験はこうやるとうまくいくよ」みたいなコツを惜しげもなく披露してくれてますからね。それぞれの研究室に伝わる独自の「お作法」はそういった新情報と合わさって、徐々にミックスしながら最終的には共通化されていくのかもしれませんね。