マガジンのカバー画像

追憶綴り

3
運営しているクリエイター

記事一覧

煙光に巻く暗黒

地底から更に下界へと続く螺旋階段。閉ざされた煤汚れた紅の門。黒服に開けられ、開かれし線光と白煙の闇。爆音に聴覚が潰れ、埋もれ犇き湧く人混みの端に佇む中、黒服が無感情に人混みの中へと進んでゆく。人をかき分け、それについてゆく。

地底の底より更に下のこの底には上り階段があった。そこをゆっくりと登ってゆく。より一層黒く、煙の綱ガラスの線が入った扉の前に着く。また一人の黒服が立っている。案内の黒服は礼を

もっとみる

光芒と錯覚する檻

僕はクラナンできない。

視界の世界が固定される。
まるで眼球を接着されたように、ただただ目に映る世界を固められてしまうような、そんな感覚。
目のやり場がない、のに、目は閉じない、閉じれない。まぶたの筋肉までもがこの空間に支配されてしまうのである。
どこを向いても人が沢山いて、女も男も沢山いて、そこでは同じ空間を共にしているというだけで、見ず知らずの男女同士が簡単に会話することが許される世界が広が

もっとみる

開闢の箱

今でもたまに思い出す
ずいぶんと前に同棲していた女。
歳上の女で、いわゆる俺は養ってもらう関係だった。俺は彼女と結婚する関係にはならないと思っていて、おそらく彼女も、その事を勘づいていたように思う。いつか終わるこの関係を俺はだらだらと続けていた。終わりは向こうから一本の電話だった。必ず来ることはわかっていたけれど、歳月にして2年。長かったような短かったような。彼女との記憶は俺の人生にとって、とても

もっとみる