英語教育はコミュニケーションを意識するだけで変わる【活動例あり】
英語教育が根本的に変わるたった1つの魔法。それはコミュニケーションを意識することです。
この考え方をきちんと理解できれば、
・子どもが楽しんで自ら学ぶ
・大幅な成績アップ
・実践的に使える英語の習得
・教師も授業の方針が立てやすくなる
などなど、いいことずくめ!
私自身は、教員5年目にこのことにようやく気づき、びっくりするほど授業がやりやすくなりましたし、子どもの成績もグングン伸びるようになりました。
ちなみに、コミュニケーションは学習指導要領の目標にもある重要な話です。
第1 目 標
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_010.pdf
なので、英語教師なら聞いたことあるはず。
しかし、残念ながら多くの先生は「コミュニケーション」の大切さや、授業への取り入れ方に、本当の意味で気づけていません。
「コミュニケーション」が腹の底から大事だ!と思えた時、あなたの授業は確実に変わります。
そもそも英語を学ぶのはなんのため?
そもそも、なんのために英語を学ぶのでしょうか?
もちろん自分しか見ない日記を書く、頭の中で思考する、英文学を原作のままで読むなど、自己完結する目的のために英語を学ぶこともあるでしょう。
ただ、多くの場合、会話したり、メッセージを送ったり、他者とコミュニケーションを図るためではないでしょうか?
つまり、
英単語を一生懸命覚えるのも…
英文法を学んでドリルを解くのも…
教科書を音読して英語が発音できるようになるのも…
すべては他者とのコミュニケーションが目的となるはずなのです。
英語を習得することそのものはあくまで手段。ゴールはコミュニケーション。
けど残念ながら、学校教育ではこの本来の「コミュニケーション」という目的を忘れがち。
具体的には「テストでいい点をとる」という目的にすり替わったり。
また、「1000単語覚える!」「文法を理解する」「教科書をスラスラ読めるようになる」みたいに手段と目的がぐちゃぐちゃになることもあります。
それらははっきり言って、多くの子どもにとって魅力的な目的とは映りません。
コミュニケーションを意識することは、英語を学ぶ本来の目的を思い出すこと。
人間は社会的な生き物です。だから、コミュニケーションは人間の根源的な欲求にもとづいています。
「コミュニケーション」という目的を意識することは、授業に生命を吹き込み、子どもが英語を学ぶ本当の楽しさに気付き、彼らの心に火をつけることへとつながります。
コミュニケーションの2つの分類を知ろう
では「コミュニケーションを意識する」とは具体的にどうすればいいのでしょうか?
ここで、コミュニケーションを意識するために、コミュニケーションにはそもそもどんな種類があるのかを知りましょう。
私が授業でよく使うのは以下の2つの分類です。
コミュニケーション2つの分類
・チャット(続けることが目的のコミュニケーション)
相手と仲良くなるための雑談、おしゃべり
・ネゴシエーション(用事が済めば終わるコミュニケーション)
買い物の値引き交渉、問い合わせ、依頼、会議、道をたずねるetc.
なお、ここら辺の話は学術研究もあると思うので、厳密に学びたい人は調べてみてください。
これは、私が実践の中で編み出した分類にすぎません。(少なくとも授業づくりではかなり使えます)
また、他者とのコミュニケーションの全てが、先の2つに分類できると言いたいわけではありません。
プレゼンテーション、広告、SNSやYoutubeなどの動画での一人語り…
これらもコミュニケーションだと言えますが、「チャット」「ネゴシエーション」という2つのコミュニケーションの応用編として考えていくこともできるでしょう。
数多くのコミュニケーションの中で、チャットとネゴシエーションは特に基礎的で、重要度も高いと考えています。
①チャット(続けることが目的のコミュニケーション)
まずは、チャットからみていきます。
チャット(chat)は、日本語では「雑談、おしゃべり」という意味。
相手と仲良くなるために、終わりなく会話するコミュニケーションです。
例えば、気になるあの子と電話で話す場面。
このとき、基本戦略としては「できるだけ長く会話を続けること」です。
チャットとは?
相手と仲良くなるために、終わりなく会話するコミュニケーション。会話はできるだけ長く続いた方がよい
②ネゴシエーション(用事が済めば終わるコミュニケーション)
次に、ネゴシエーション。
ネゴシエーション(negotiation)は、日本語では「交渉」という意味。
会話の目的が明確で、交渉が成立し会話の目的が達成されたらやりとりが終了するコミュニケーションです。
典型的なのは買い物の値引き交渉です。
①希望の値段まで安くしてもらう、という目的がはっきりしている
②希望の値段まで下げられるまで交渉が継続する
③希望の値段で話がまとまったら、交渉は終了する
これが、用事が済めば終わるネゴシエーション。
日常の様々な場面でネゴシエーションが発生しているのがわかるでしょう。
そして、自分の目的がきちんと達成されるのが、よいネゴシエーションです。
ネゴシエーションとは?
会話の目的が明確で、交渉が成立し会話の目的が達成されたら、やりとりが終了するコミュニケーション。自分の目的がきちんと達成されるのが、よいネゴシエーション
ここでのポイントは、ネゴシエーション(交渉)が必要な場面でのみ、コミュニケーションが発生するいうこと。
逆に言うと、ネゴシエーションが必要でない場合は、コミュニケーションは発生しないということなんです!
例えば、教科書を見ると、以下のような例文が出てきます。
A: Excuse me. How much is this?
B: It’s 950 yen.
A: OK, I’ll take it.
このとき、これを使って…
「買い物でのコミュニケーションを身につけましょう!ペアになって、買い物の場面でコミュニケーション活動してください!」
みたいにやること、ありますよね?
けど、このような活動をする先生は、はっきり言って「コミュニケーション」を理解していません。
ちょっと考えていただきたいのですが、こういう場面って実際どれくらいあるでしょうか?
コンビニやスーパーで買い物するとき、値段なんて書いてあります。
レストランに行っても、ほとんどの場合メニュー表を見れば値段が書いてあります。
そして、自分がその値段に納得している場合、店員といちいち交渉するでしょうか?
コンビニやスーパーに行っても、店員と一言も会話しないこと、実際ありますよね。
つまり、ただ「買い物をする」というだけでは、ネゴシエーションの必要などないのです。
そして、ネゴシエーションの必要がないと、コミュニケーションなんて起こりません。
海外旅行に行ったことある人はわかると思うのですが、海外に行ったからといって、たくさん外国語を話すかと言われたら、実はそんなことありませんよね?
なぜなら、交渉する必要がない場面では、相手と会話する必要がないからです。
買い物の場面だとしたら、値引きをする、ぼったくられるなどの事態が発生したとき、初めてネゴシエーションが生まれ、コミュニケーションが起こるわけです。
ネゴシエーションがあるときにのみ、コミュニケーションが起こる
→コミュニケーションさせたければ、ネゴシエーションが必要な場面を選ぼう!
すべての授業をコミュニケーション活動につなげよう
本来の目的である「コミュニケーション」を意識すれば、英語教育が変わること。
数あるコミュニケーションの中でも、ネゴシエーションとチャットの2つが重要であることを確認しました。
というわけで、とにかく文法や教科書本文など勉強したあとは必ずコミュニケーション活動につなげると決意してください。
単元ごとある程度まとめてでOKですので、文法だけ、教科書だけで終わらないことが大事。
そして、コミュニケーション活動をつくるとき、チャット型かネゴシエーション型かの、どちらかを選びます。
コミュニケーション活動のアイデアを2つ示します。
まずは、チャット型コミュニケーション活動から。
チャット型のコミュニケーション活動例
言語材料:
・be動詞
・一般動詞の基礎基本 (Are you〜? Do you〜?など)
場面:
入学式初日、クラスで初めて出会った友達と仲良くなるために、会話を続ける
会話例:
A: Hi, I’m Tom. Nice to meet you.
B: Oh, hi. I’m Rin. Nice to meet you, too.
A: Well, are you from Nagaki elementary school?
B: No, I’m not. I’m from Heiden.
A: Oh, you are from Heiden! I’m from Yoro elementary school.
B: Yoro! So…do you know Mika-chan?
A: Mika-chan is… Yamada Mika? Yes, she’s my friend.
B: That’s good! She’s my friend, too. We are in the same swimming school.
この活動は、中学1年生1学期にやるイメージ。
いくつかの小学校から、同じ中学に入学してきた友達と初めて会話したときの場面です。
とにかく、まずはゴールにこのようなコミュニケーション活動を置く。
そして、事前の文法指導や、音読する例文もコミュニケーション活動に使えるような表現を練習しておきます。
例えば、I’m from America. みたいに出身国を伝える表現は教科書で頻出ですが、それに加えて「〜小学校出身」みたいな表現も練習しておくという感じです。
もう1つ、ネゴシエーション型のコミュニケーション活動を紹介します。
ネゴシエーション型のコミュニケーション活動例
言語材料:
I don’t know what to do.
Could you tell me how to get to 〇〇? など
場面:
自分の町にやって来た海外の友人から突然の電話が。急遽半日予定が空いたけれど、何かオススメスポットはないか?と尋ねられた。
会話例:
A: Hi, Ken!
B: Oh, Rin? Long time no talk. What’s going on?
A: I’m now in Kyoto, and my schedule has just been canceled. So I have some free time, but I don’t know what to do in Kyoto. Do you know any good places to visit in Kyoto?
見ての通り、複雑な言語材料を使っているので、中学3年生くらいを対象としています。
このままオススメスポットを教えてもらって、そこまでの行き方をたずねる、という展開です。
相手の好みなども聞きながらオススメスポットが決まり、そこまでの行き方も伝わったら、会話終了です。
まとめ
英語教育の「コミュニケーション」について、考え方と実践へのつなげ方について書きました。
授業でコミュニケーションを意識するために…
・ゴールに必ずコミュニケーション活動をする
・コミュニケーション活動は、コミュニケーションの必然性のある、チャットかネゴシエーションの場面を設定する
・活動に必要な表現・文法を、教科書やドリルを使って事前に学習できるよう、授業を構成する
ということをやってみてください。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
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