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小・中#4-1: What kind of food do you like? どんな食べものが好きですか?(前)

これまでの回を読んでくださった小学校の先生から、「トピックによって、どのような対話の展開ができるのかは分かるが、これを授業で使うために覚えるのは大変・・・」という感想をいただきました。確かに「トピックに応じた展開例」は、丸暗記するには長すぎますし、そもそも実際の授業で、展開例と同じ反応が児童生徒から返ってくるとは限りません。

本記事でお伝えしてきたのは、「あるトピックについて、小学校高学年くらいから中学校はじめの既習語句や表現を使えば、こういうやり取りが可能」という一例です。対話の流れを暗記して授業に臨むのではなく、「このトピックには、これらの語句や基礎的な表現が使える」という部分を参考に、目の前の児童生徒の習熟度や興味・関心に合わせて、それらの使い方を工夫していただければと思っています。

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「トピックだけを提示して、自由に楽しく対話を続けらればいいな」と思うこともあります。ただし児童生徒からすると、「トピックについて意見や考えがあっても、それを英語にするために十分な語句や表現を学んでいないから、英語で言えないと思ってしまう」ことにより、次第に話したいという意欲がなくなってしまうことがあります。だからこそ、先生が、既習表現を使って巧みに対話をリードしていくことにより、児童生徒がそのモデルを「聞いて分かる」経験を重ね、さらに「これは自分にも言える!」と思わせることが大切です。

小学校高学年の児童が、英語で対話する楽しさを感じるようになるには、用いる語句や表現の表すものが、児童にとって身近なものでなくてはなりません。さらに発達段階を考慮すれば、まず「自分について」「自分の身の回りのこと」、さらに「日常生活のこと」などをトピックとして始めるのが自然と言えます。そこで今回と次回にかけて、児童生徒に身近な「食べもの」をトピックとして、既習語句や表現を用いて対話を組み立てるために留意したいことを整理します。

目的をもって児童生徒に問いかけることで、対話を発展させやすくなる

小学校段階で慣れ親しむ表現には、主に「好き嫌い」「欲しいもの」「すること(したこと)」「もっているもの(あるもの)、ないもの」「できること」「数」「5W1H (when, where, who, what, why, how)」などに関するものがあります。このうち、小学校中学年から音声で慣れ親しむ「好き嫌い」を表す表現を、どのように Small Talk に組み込むことができるでしょうか。

例えば、"I like apples." と好きな食べものが言えるようになり、さらに "Do you like apples?" "Yes, I do. / No, I don't." と尋ね合いの表現に親しんだ段階で、以下のような対話がよく見受けられます。

①   T: Do you like apples? Hmm … S1?
       S1: Yes.
       T: I see.  How about you?  Do you like apples, S2?
       S2: No.
       T: You don’t ... .
②   T: Do you like apples? Hmm … S1?
       S1: Yes.
       T: Nice!  How about you?  Do you like apples, S2?
       S2: No.
       T: Good. ... .

①と②のいずれも、先生が突然児童に "Do you like apples?" と尋ねています。こうした対話の始め方の落とし穴は、「何のためにこのように尋ねられているのか」が S1 や S2 に分からないままに、児童がただ反射的に、習ったばかりの "Yes(, I do)." や "No(, I don't)." を用いて答えてしまっていることです。これでは Small Talk というよりも、Pattern Practice のようなドリル練習になってしまいます。

しかも、例えば①では、先生が児童の答えを受けて "I see." や "You don't ... ." としかリアクションできず、その先に内容が発展していません。先生自身にも「なぜ児童にこの問いをするのか」が明確でないことがうかがえます。Small Talk として児童と「意味のあるやり取り」を行うためには、「なぜこのような問いかけをするのか」という目的や場面、状況の設定が必要です。

さらに②は、実際の授業でもよく見かける例ですが、"Do you like apples?" と尋ねられて "Yes." や "No." と答えることができた児童に、"Nice!" や "Good!" とリアクションしています。しかし S1 への "Nice!" は、「先生の質問によく答えることができた」ことを評価しているのか、それとも "Yes.  Yes, I do.  I like apples." と「先生と同じように S1 もリンゴが好きである」ことが "Nice!" なのかが分かりません。また S2 の "No." に対する "Good!" も、やり取りとして聞いてみると不自然です。1往復を超えたやり取りに発展させるのも非常に難しい状態になってしまっています。

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では初めに1文だけ加えて始めた、以下の流れはどうでしょうか。

③   T:   I like apples.  Do you like apples, S1?
       S1:  Yes, I do.
       T:  Oh, you also like apples?  What kind of apples do you like?  I like
            green apples.
      
S2:  I like ... red.
       T:  I see. You like red apples.  Red apples are delicious too.  We both
            like apples!  Nice!  How about you, S2.  Do you like apples?

       S2:  No. I don’t like apples, but I like oranges.
       T:   You like oranges.  I like oranges, too.  I like fruits very much!

先生の問いかけの前に "I like apples." と「自分のこと」についての1文を加えるだけで、「先生と同じようにリンゴの好きな人がいるかどうか尋ねたかったのかな」、あるいは「先生はリンゴが好きだけど、クラスのみんなはどんな果物が好きかどうかを調べてみたいのかな」など、先生がなぜこの問いかけをしたのかを聞き手が考える手掛かりになることが分かります。

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このように、ちょっとした配慮で Small Talk の流れも変わります。次回は疑問文の形を変えていくことで、「食べもの」をトピックとする対話をどのように発展させられるかについて、具体例を見ていきたいと思います。