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カカオの受粉率と花の形、雨の量

カカオの花には雄蕊(おしべ)とは別に生殖能力を失った雄蕊である仮雄蕊を持っています。
雄蕊が短く花弁のフード(器状の部分)に隠れているのに対して、仮雄蕊は長く存在感のある針のような形をしています。
この仮雄蕊の形と、それから雨季乾季の違いがカカオの受粉率に影響しているという話を読んだので、概要を紹介しようと思います。

カカオの受粉の仕組み

基本的に、カカオは自家受粉(同じ花の花粉で受粉すること)しないため他の木の花粉を自分の花に付けなければいけません。ではどのように運ばれるかというと、ハエや蚊などの仲間の小さな虫のお腹などに付けて媒介してもらいます。
花粉を媒介する虫は飛んでくるとまず、仮雄蕊に止まります。そして仮雄蕊をつたって下へ行くと雄蕊に当たるのでその時花粉をお腹に付けることになります。
その後他の木に行って、同じように仮雄蕊に止まったとします。すると、動いた時に雌蕊(めしべ)の柱頭(花粉が付いて受粉するところ)にお腹に付いていた花粉が付いたり付かなかったりするのです。
これらが全て上手くいって、さらに花粉が発芽してくれれば受粉成功ということなのです。

カカオの木は花を沢山つけますが、実際に実になるのはほんの一部だけ。
花の構造やこの仕組み、そして環境との関係が複雑なため、受粉率がとっても低いのです。

仮雄蕊の形と受粉率

さて、本題に移りましょう。

カカオの仮雄蕊は3つのパターンに分けることができます。
内向きに曲がって集まっているもの(図中①)、まっすぐで雌蕊とほぼ並行なもの(図中②)、外向きに曲がって開いているもの(図中③)です。

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これらの仮雄蕊はそれぞれ雌蕊との距離が異なります。
内向きのものは近いし、外向きのものは遠い。
虫が仮雄蕊を伝って動くことで受粉されるわけですから、仮雄蕊と雄蕊・雌蕊との位置関係が変わると受粉率も変わってくる、ということだと思われます。

つまり、近ければ雌蕊の柱頭に花粉が付きやすいけれど、遠いほど花粉が付きにくくなります。
その結果内向きのものの受粉率に対して、外向きのものの受粉率がとても低くなっているようです。

平行なものはどうかというと、内向きのものより少しは低いですが差は大きくなさそうです。雌蕊との距離と受粉されやすさと雌蕊との距離で重要なラインは平行なものとの距離と外向きのものとの距離の間にあるのかもしれませんね。

ちなみに仮雄蕊が外向きのものの受粉率はとても低いですが、そもそも外向きのもの割合も低いらしいため、全体への影響は小さい、らしいです。

雨季・乾季と受粉率

カカオが育つ熱帯地域の多くには雨季と乾季があります。
そしてこの季節間でも受粉率が異なるそうです。

結果から言うと、雨季は高いが乾季は低い傾向にあるようです。

この理由も仮雄蕊の形と似たようなもので、虫がいかに花粉を運べるかといったところです。
カカオの花粉を媒介する虫たちはじめじめした環境を好んで水たまりや腐ったカカオポッドの周辺など湿った地面に卵を産みます。
ですから乾季には繁殖しにくく生存しにくい環境になってしまって、もともとの虫の数が減るため受粉率が下がる、というふうに影響します。

雨の量もカカオの受粉率に関係しているのかもしれませんね。

出典元について

ご紹介したのは↓こちらです。
Kofi Frimpong-Anin, Michael K Adjaloo, Peter K Kwapong, William Oduro, "Structure and Stability of Cocoa Flowers and Their Response to Pollination", Journal of Botany, 2014
ここでは受粉率のほかに、花の安定性についても考察しています。

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