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(サッカー)2023.4.29_J1_FC東京×アルビレックス新潟@味スタ

introduction

週1試合ペースでコンスタントに4月の日程を消化してきたJ1は、この週末がリーグ戦の第10節。しかし5月の頭には中2~3日の連戦が続くハードスケジュールが組まれており、各チームにとっては今週末から選手のやりくりが少し難しい週に差し掛かる。我らがFC東京の今節は、ホーム・味スタにアルビレックス新潟を迎えての試合。自分は前々節のセレッソ大阪戦以来となる現地観戦だ。

大型連休の初日となる本日の天気は晴れ。夜から天候が崩れるとの予報があり多少雲が立ち込めているが、バックスタンド観戦民としては西日を浴びなくて済むので、ちょうど良いあんばいだ。少し風が強く吹いているものの気温は暖かく、春の装いにプラス1枚羽織る程度で充分。今季飛田給に来るのは4度目になるが、これまではどの日も寒くて防寒着をしっかり着込んでの観戦だったため、今更ながらようやく春がやってきたなという感じがする。今日の相手がサポーターの多い新潟ということもあり、アウェイサポーターも多く詰めかけ、味スタは32,181人の大入りとなった。

東京は前々節のセレッソ大阪戦で1-2と敗れ、苦境に立たされていたが、前節はアウェイでサンフレッチェ広島に2-1と勝利。前半のうちにセットプレイから中村、カウンターから安部が決めてリードを奪い、広島の追撃を1点に抑えることに成功。前節まで5連勝中と絶好調だった相手を退ける「BIG WIN」だった。今節はその勢いを持ち込み、リーグ戦では今季初となる連勝を狙いたい。スタメンは前節とほぼ同じだが、唯一左SBは徳元に代わってバングーナガンデが名を連ねている。

今日の対戦相手であるアルビレックス新潟は、2017年シーズン以来6年ぶりとなるJ1復帰のシーズン。東京のアルベル監督にとっては、2020~2021年の2シーズンに渡って指揮をとった古巣との対戦だ。東京の選手紹介の際にはかつて新潟に所属していた小泉や渡邊への拍手は疎らだった一方、アルベル監督には多くのサポーターが拍手。J1復帰への土台を築き上げた前指揮官への感謝と愛情が伝わってくる場面だ。今季の新潟のスカッドは昨季のJ2を戦ったメンバーが主軸であるが、それでも結果を出している。特に2列目の攻撃力は強烈で、トップ下の伊藤と右のアタッカーの太田は2人合わせてリーグ戦で既に9得点を挙げている。東京とは共に3勝3分3敗の勝点「12」で並んでおり、お互い一歩前に出るために重要な一戦だ。

1st half

立ち上がりの8分、この試合最初の決定機が得点に繋がる。東京は自陣でのボール回収から仲川のパスを受けた渡邊が絶妙なターンでマーカーの裏をとると、ドリブルでそのまま相手陣内へ突進。この時点でディエゴと仲川がサポートについており、数的優位なカウンターだ。ボックス付近まで到達すると左サイドからバングーナガンデが猛スプリントで駆け上がり、そちらに出すかと思いきや、渡邊は右の仲川を選択。仲川がワントラップからコンパクトに右足を振り抜くと、シュートがゴール左隅に決まって1-0。東京が幸先よく先制に成功する。一撃必殺の見事なカウンターだった。

12分、新潟は自陣中央でのこぼれ球から出てきた縦パスを伊藤が収め、ドリブルで前進。これを小泉がファウルで止め、新潟のFKとなる。これを伊藤が自らゴール右隅を狙って蹴ると、スウォビィクは逆を突かれたか、反対側に重心が乗った影響で僅かに反応が遅れた。勢いは強くなかったが、コースを確実に狙ったシュートがゴール右隅に転がり込み、1-1の同点。新潟がものの数分で追いつくことに成功。セットプレイでの失点だが、こぼれ球を安易に伊藤へ付けさせてしまったことが遠因だ。ちょっとした局面の判断をゴールまで繋げてくるあたりは、新潟の持ち味なのだろう。

35分、東京は右サイドを抜け出した安部がドリブルでハーフスペース近くまで攻め込み、中央のディエゴへ折り返しのパス。ディエゴのトラップが僅かにゴールと反対方向へ流れてしまい、決定機ならずかと思いきや、ディエゴはマーカーを制しながらボールをキープ。一旦PA外に持ち出して態勢を立て直すと、PAの右隅付近から力強く右足を振り抜く。「ズドン」という擬音が聞こえてきそうな弾丸ミドルがゴールのニア上を撃ち抜き、東京が2-1と再度勝ち越し。意表を突く場所からの度肝を抜くような一撃に、スタンドからも一拍置いて大歓声が上がる。

前半の残りの時間はやはり新潟が押し気味に進める展開。38分には東京の自陣内でのパス回しをプレスで奪回し、ゴール正面でパスを引き出した伊藤がすかさずフィニッシュに持ち込むが、枠内を捉えたシュートはスウォビィクが弾き出し、ピンチを脱出。2-1のまま前半を終える。カウンターとディエゴの個人技でリードを奪うことはできたが、前からプレスで潰しに行くことができず、やや前後分断気味なところを新潟に上手く利用されてしまった感の否めない前半だった。後半はもう少し立て直したい。

2nd half

後半の序盤は東京が良い攻めを見せる。49分、アタッキングゾーンでの左サイドでのスローインをPA内の松木が競って頭で落とし、そこに走り込んだ渡邊がダイレクトで右足を振り抜くが、シュートはGKの正面。52分には波状攻撃からバングーナガンデの左からのクロスをファーサイドの中村が競り合いながら頭で押し込もうとするが、僅かに届かず。中村はあとちょっとで前節に続くヘディング弾だった。シンプルながら良い形の攻撃が続く。

57分、東京は相手陣内での中村の潰しから仲川がドリブルでPA内に持ち込むものの、相手のタックルで倒れる。惜しくもチャンスを逃したかに思われたが、仲川の倒された場面に対してVARのチェック。少しの中断を置いてオンフィールドレビューが行われる。ビジョンには仲川に対して相手選手の足が引っ掛かる様子が映し出され、スタンドからは歓声が上がる。ジャッジはPKに変更。スポットにはディエゴが立つ。タイミングを外しながらディエゴが左隅を狙うが、GK・阿部が同方向へ反応したのが気になったか、シュートは枠の左へ外れてしまう。東京は追加点の絶好機を逸する。しかし直後のプレイでディエゴが再びボールを持つと、ドリブルで相手選手を次々と振り切ってPA内に侵入。シュートはDFのブロックが入り決まらないものの、PK失敗のショックを見せずに貪欲にゴールを狙うディエゴの姿にスタンドの応援のボルテージはより一層と増した。

新潟は63分に一気に3人を交代。最前線には新外国人のグスタボ、左サイドにはアジリティが持ち味の小見が入る。65分には新潟の波状攻撃から小見がシュートチャンスを迎えるが、中村が必死のカバーでシュートを防ぎ、こぼれ球を回収した仲川が相手の執拗なマークを受けながらドリブルでハーフウェーライン付近まで運び、ファウルを引き出す気迫のボールキープを披露。スタンドからは大きな歓声と拍手が上がる。

その仲川もこの後の連戦を考慮してか、直後に東と交代。安部が右サイドにスライドして松木がトップ下に入る。安部のサイド起用はおそらく小見対策だろう。追加点を獲りきれなかったことで、終盤の攻守バランスの匙加減が難しいところだが、ここまで来たら何がなんでも勝つしかない。

終盤は新潟がますます攻撃のテンポを加速させ、東京はほぼ防戦一方のワンサイドゲームに。終盤にはここまで奮闘していた中村が右足にアクシデントを訴えた様子で交代を余儀なくされるものの、代わりに入った長友がカバーする。AT5分には途中出場のアダイウトンのドリブルからのシュートがGKに止められるものの、ここで試合終了のホイッスル。東京が前半のリードをしぶとく守り抜き、リーグ戦では今季初となる2連勝を達成。勝点を「15」に伸ばし、順位を6位へ押し上げることに成功している。

impressions

とても見ごたえのある、良い試合だった。スタミナのある前半は切り替えの早いスピード感溢れる展開となり、後半は1点を巡る魂を削り合うような攻防を観ることができた。アルベル監督が理想に掲げるような試合運びとは違うのかもしれないが、こういう際どい試合を制して勝つことで、内容もそのうち向上してくるものと信じたい。

新潟は非常に怖いチームだった。両SBの内側のレーンを使った攻撃参加や、守備で即時奪回を狙いショートカウンターを仕掛けるなど、アルベル監督が今まさに東京で取り組んでいるエッセンスが盛り込まれ、そして東京よりも高いクオリティを見せていた。少しでも油断をすればすかさずスパーンと縦パスが入ってくる「阿吽の呼吸」の怖さがあり、継続して成熟を重ねてきたことを窺わせるサッカーだった。まだシーズンの先は長いのでなんともいえないが、このようにプレーの指針が明確で戦術の共通理解があるチームは非常に怖い。「このサッカーを続けることができれば」という留保はつくが、今季の新潟にとって「J1残留」はさほど難しい目標ではないだろう。

東京は前半のうちにリードを奪うことができたのが大きかった。やや出入りの多い立ち上がりに渡邊が巧みに相手のプレスをかわしてカウンターの形を作り、仲川が確実に仕留めたことで前節に続く先制点を奪取。セットプレイで一度は追いつかれたものの、ディエゴが圧倒的な個の力で再びゴールをこじ開けてみせた。新潟ほど戦術は洗練されていないのかもしれないが、やはり今の東京が持つ強みは速攻と個人技である。勝ちが欲しい今の時期こそ、このアドバンテージを生かさない手は無いだろう。

後半は序盤の攻勢で追加点を奪えず、苦しい試合展開になった。チャンスはたくさんあり、ディエゴのPKはその最たるものだったが、そこで決めきれずに「撤退戦」へ持ち込まざるを得なくなったのは課題だろう。しかし、チーム全体で攻める時間と守る時間をコントロールできていた(ように見えた)のは好印象だった。こういう展開では点を獲りたい選手と守りを固めたい選手でピッチ内の意思統一ができずに全体が間延びしてしまうといったことが起こりがちだが、今日の東京はPK失敗後もしばらくは全体を押し上げて追加点を狙いに行っていたし、新潟が前線を強化してゴールをこじ開けに来てからはブロックを築いて一発カウンター狙いという構えができていた。

今日は味スタの雰囲気も非常に良かった。前半の得点シーンでの盛り上がりは当然だが、後半のディエゴがPK失敗直後に単独でチャンスメイクをした場面や、仲川の気迫のボールキープの場面など、選手のゴールや勝利への執念が見える場面ではスタンドから自然と大きな拍手が沸き起こり、選手たちもそれに呼応するように勝利にこだわるプレーを見せてくれた。やはり観客が30,000人を超えてくると、盛り上がりのレベルがひと味違う。7,000人を超える数が駆けつけたという新潟サポーターの応援も迫力があった。試合後にアルベル監督が新潟サポーターのもとへ挨拶に向かっていったが、それを彼らが拍手で迎える光景もまた素晴らしいものだった。

次節から東京はアウェイでの2連戦。まずは中3日で5/3にアビスパ福岡との試合があり、更に中2日で5/6に北海道コンサドーレ札幌との試合が予定されている。気の遠くなるような遠距離移動が続くことになるためコンディション調整が非常に心配であるが、良いムードでこの連戦に向かうことができるのは良いことではないだろうか。次のホームゲームは3週間後、5/12の川崎戦になるが、良い状況で大一番を迎えられることを期待したい。


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