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2022.11.11 - 地域CL:都農×女川

introduction

本日が大会初日の全国地域サッカーチャンピオンズリーグ。平日ながらどうにか都合をつけた自分は、思い切って新潟会場のBグループをウォッチしに来ている。第1試合は九州リーグ王者の沖縄SVが、北信越1部王者のアルティスタ浅間を6-0の大差で粉砕。下馬評通りの見事な滑り出しを見せた。

13:30から行われる第2試合の対戦カードは、九州リーグ3位ながら全国社会人サッカー選手権大会でベスト4に入り全社枠での出場を決めたヴェロスクロノス都農と、東北1部王者のコバルトーレ女川の一戦。2020年まで「J.FC MIYAZAKI」の名前で活動していた都農は2年ぶりの地域CL出場だ。都農と聞いて大体の場所が分かる人は地理好きか、あるいは鉄道ファンくらいなのではないかと思うが(笑)、そんな街の名前を冠して全国リーグに挑戦しているのは興味深い。一方のコバルトーレが本拠地とする女川も決して大きな街ではないが、5年前にはこの地域CLで見事に勝ち残ってJFL昇格を果たし、僅か1年で東北リーグへ降格の憂き目に遭ったものの、全国リーグを経験している。この地域CLの突破経験があることが女川にとってアドバンテージとなるかどうか注目だ。

遠方からの参戦ということもあり、サポーターの応援がどの程度となるかよく分からなかった都農だが、第1試合が終わってアップが始まる時点から声出しのサポーターが気勢を上げてスタンドを盛り上げ、こちらは良い感じの雰囲気。一方、自分が座っていた女川側は、応援グッズを持っているファンは見かけるものの、応援の横断幕の掲出のみで、声出しをしてのサポートも無しの様子。やはり平日の試合となると厳しい面があるのだろう。

1st half

試合開始時からややボール支配するのは都農。スタートのシステムは4-1-2-3で、インサイドには梶山・大竹というJリーグ経験者の2人が並ぶ。この2人が精力的にボールに絡んでチームの歯車を回すのが特徴のようだが、女川は全体をコンパクトに保ってフリーなスペースを与えない狙いだ。

最初に決定機を迎えたのは女川だった。7分、全体を押し上げてアタッキングゾーンまで攻め込むと、右のハーフスペース付近でボールを拾った野口が中に折り返したボールを竹田がマーカーを背負いながら反転気味にダイレクトボレー。GKが全く反応できないスーパーなシュートがゴール右隅に突き刺さり、女川が0-1と先制する。

最初のチャンスらしいチャンスで1点を奪った女川は、ここから再び守備を頑張る。高い位置からプレスをかけて都農の起点を潰しに行く狙いが見え、ときおりアフター気味のチャージとなる場面が続き、都農の選手たちが痛む場面が増える。なかなか主審が警告を提示しないこともあり、しまいには都農の選手たちが激昂して主審を取り囲むほどだ。女川にとっては、これで相手が冷静さを失ってくれればありがたいという気持ちだろう。

前半の終わり頃になると都農は梶山が単独でボールをゴール前まで持ち込む場面が見られるようになり、都農が一方的に押し込む展開。しかし女川もコンパクトな陣形を崩さず、中に入ってくるボールは淡々とクリアで処理していく。入りそうで入らない、都農にとってはもどかしい展開のまま、0-1で前半終了。女川は劣勢ながらどうにか耐えきりハーフタイムを迎えることができた。これが後半の流れにどう影響するだろうか。

2nd half

後半の立ち上がりは都農がハーフスペースへの侵入から攻撃の糸口を掴もうとする場面が見られる一方、女川もセカンドボールを拾える時間帯があり、前半と比較すればニュートラルに近い状態に戻ったような印象である。とはいえ、全体的に女川側のコートで試合が進む展開は変わらない。

62分、都農は右サイドでのスローインによる再開からハーフスペースに侵入すると、グラウンダーで中に入ったクロスをフリーの梶山が難なく押し込んで1-1。継続的にパンチを撃ち続けた結果、ようやく決定機が転がりこんできたのをすかさず獲りきった。都農が同点に追いつく。

タイスコアに戻したことで勢いづく都農はここから再びボールを支配して攻勢を強めるが、女川もこの厳しい時間帯を耐えて試合は終盤へ。第1試合で沖縄が大勝していることを考えれば両チーム共に勝点「1」は満足のいくものではく、オープンな攻防となっていく。流れ的には都農が押しているように見えるが、その分後方にスペースが残り、女川はそこを淡々と狙っている感があり、どちらに1点が入ってもおかしくない展開。しかしアタッキングゾーンでの精度を欠いてチャンスには至らず、時計は90分を過ぎる。

このままドロー決着が視野に入ってきたAT5分、都農が攻勢をかけてPA内での競り合いとなり、女川はどうにかクリア。しかしこのクリアボールが小さくなり、エリア外で待っていた柳田がボールの落ち際を右足で振り抜くと、アウトフロントに引っ掛けたような弾道となったシュートはGKの伸ばす手から逃げるように変化してゴール右隅に突き刺さり2-1。土壇場で都農が逆転に成功する。柳田をはじめとした都農の選手たちが一斉にバックスタンドに陣取るサポーターのもとへ駆け出し、歓喜の輪ができる。

ボールがセンターサークルに戻されて試合は再開されるが、すぐさまタイムアップのホイッスル。事実上のラストプレイで勝ち越した都農が初戦を2-1で制し、白星発進となった。一方の女川は、先制しながらも守備が持ちこたえきれずに痛恨の敗戦。選手たちはショックな様子を見せずに整然とスタンドに挨拶をしていたが、あまりに突然に突きつけられた現実をまだ受け止めきれていないようにも見えた。

impressions

劇的な結末だった。第1試合で沖縄が圧倒的な試合運びを見せたことを考えれば、ワイルドカードでの突破も視野に勝点「3」を何がなんでも積み上げたかったはず。それだけに都農の勝利はこのBグループの命運を大きく分けるかもしれない。

都農は試合の入り方に関してはあまり上手く行かなかった。女川のコンパクトな陣形から厳しいプレスに遭い、序盤のチャンスを決められて失点。その後も女川のファウル覚悟でのチャージに対してフラストレーションが溜まり、前半終盤にかけての猛攻をもってしても追いつくことができなかった。しかし後半は焦らずハーフスペースへの侵入を足がかりにシュートチャンスが生まれるのをじっくりと待ち、梶山の同点ゴールへと繋げることに成功。全体的にはドロー決着でも致し方ない内容だったが、最後までしつこく相手の懐を揺さぶり続けたのが殊勲の決勝点を生んだと思う。

個々のプレイヤーに関していえば、都農はインサイドの梶山がボールを持てるのが強み。中盤を支える大竹と曽我部を含め、このカテゴリーでプレイしていること自体が驚きだ。この選手層をもってしてもなお九州リーグで沖縄の後塵を拝したのだから、いかに九州リーグのレベルが高いかは推して知るべしといったところだろう。

敗れた女川は、試合運び自体は悪くなかった。何度も書いているように全体をコンパクトに保ち、前線から厳しくボールホルダーにアプローチをしてピンチの芽を摘んでいくスタイルは、機能していた時間帯は間違いなくあったと思う。しかし個の力でマークを剥がされたり、守備の網を突破されると苦しかった。前半こそ無失点で切り抜けたものの、後半に人数と手数をかけて自陣を押し込まれてしまい、ここで耐えきれなくなった。苦しい展開なりにドローで終えたかっただろうが、都農の圧力に押し切られた印象だ。

Bグループは第1日の2試合を終えて、沖縄と都農が勝点「3」を獲得。九州リーグ勢が早くも抜け出し、まずはリーグの実力の高さを見せた形だ。明日は沖縄が女川と、都農が浅間とそれぞれ対戦を予定しており、結果如何では早くも浅間と女川の敗退が決定する可能性がある。今日敗れた2チームは短い時間でメンタルをいかに切り替えることができるかが重要となりそうだ。新潟会場での観戦はこの第1日のみとなるが、初戦で早くも強さを発揮した沖縄がこのまま走るのか、あるいは劇的な勝利で勢い付く都農が沖縄の進軍を止めるのか、結末を楽しみに待ちたいと思う。

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