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(サッカー)2023.8.26_J1_FC東京×ヴィッセル神戸@国立


introduction

8月最後の週末となる本日、J1リーグ戦は第25節のゲームが行われる。残り10試合を切り、リーグ戦も終盤戦へ入っていく。我らがFC東京は、現在リーグ2位のヴィッセル神戸を迎えてのホームゲームだ。本日のホームゲームは味の素スタジアムではなく、国立競技場での開催。東京にとっては5月に川崎フロンターレを迎えて行われたJリーグ30周年記念マッチ以来、今季2度目の国立での試合である。

国立競技場での試合は招待券の効果もあって毎試合多くの観客数を記録しているが、今回もご多分に漏れず、キックオフ30分前到着を狙って都営大江戸線の国立競技場駅を降り立った時点から物凄い人出。しかし2階席の入場はスムーズで、割とあっさり席につくことができた。

今日の試合のチケットはダイナミックプライシングが試験導入され、ゴール裏でも4,000円台、バック指定席でも5,000円というやや強気の価格設定。その影響かは分からないが、3階席はところどころ空席が目立ち、観客数も48,634人と、これまでの国立でのゲームと比べれば少ない入りだった。客単価は上がっているので、チケット売上はこれまでより良かったのかもしれないが、収益最大化が空席を埋めることよりも優先されるのがスポーツ興行として絶対的な正解なのかは少し疑問も残る。

現在勝点「32」で10位につける東京は、先週末の試合から2週連続で上位対決が組まれている。その前節は、現在リーグ首位を走る横浜F・マリノスとアウェイで対戦。先制を許しながらもディエゴのゴールで追いつき、終盤まで1-1で引っ張ったが、土壇場で勝ち越しゴールを許し、1-2の敗戦となった。終盤は得点のチャンスを生かせない場面もあり、勝点3を得ることも可能だっただけに勿体ない結果だった。同じ轍を踏むわけにいかない今節は、右SBに小泉を起用。やや安定性を重視したラインナップで臨む。

対する神戸は現在勝点「48」で2位。首位の横浜とはわずか2ポイント差であり、抜きつ抜かれつの激しいタイトルレースを繰り広げている。前節はホームで柏レイソルと対戦し、1-1のドロー。前半に中盤のアンカーを務めていた齊藤がゴール前の接触プレーで負傷交代するアクシデントに見舞われ、更に先制を許す苦しい展開ながらも、終盤にどうにか追いつき勝点1をキープした。その齊藤は左足の側副靭帯断裂など複数箇所の受傷により全治1年以上と診断され、本人にとっては勿論のこと、チームにとっても手痛い離脱。今節は大﨑がアンカーに起用されるようだ。

1st half

立ち上がりは神戸がゲームを支配。ミドルゾーンよりやや高めの位置からプレスをかけてきて東京にボールを繋ぐ余裕を与えない。攻撃では3トップの中央に構える大迫のポストプレーが最大の脅威だ。また古巣対決となる武藤も右ウイングのポジションで積極的に仕掛ける姿勢。ホーム側のゴール裏からは武藤がボールを持つたびに強烈なブーイングが飛ぶ。大迫と武藤には5月のノエビアスタジアムでのゲームでコテンパンにやられているだけに、なんとしても守りきりたい。

神戸のリズムが少し落ち着き、東京が前に出ていけるようになったのは15分前後から。すると18分、神戸はバックラインからGKの前川に戻したところへ渡邊がスプリントで寄せていく。前川が慌てて前に出したところに網を張っていたのは仲川だ。ボールを奪いそのままフィニッシュへ行くことも可能だったが、仲川はゴール正面でフリーだったディエゴへ冷静にパス。今季好調のディエゴがこのイージーショットを外すわけがない。トラップからゴール右隅にコントロールショットを叩き込み1-0。東京が先行する。

良い流れの時間でリードを奪うことのできた東京だが、直後の20分に神戸が獲得したCKの折り返しを武藤が頭で合わせたシュートがクロスバーを直撃。ここから神戸もチャンスを作ってくる。飲水タイムを挟んで29分には中盤に下りてきた大迫が反転して前を向きショートカウンターが発動。汰木にスルーパスを通してGKと1vs1になるが、シュートは右側のポスト内側に当たって野澤がキャッチ。汰木にパスが出た場面がオフサイドだったらしく、仮にゴールネットが揺れていても得点は認められないシチュエーションだったが、肝を冷やすには充分すぎる場面だった。

対する東京も30分に俵積田がハーフスペースまでドリブルで侵入してクロスを上げるが、ファーサイドで待つ仲川のシュートは守備側のブロックが入りゴールならず。一進一退の攻防が続く中、6分と長めにとられた追加タイムには、両チーム共にゴール前へ迫る場面はあったものの、互いにチャンスを生かせず1-0で前半終了。流れが行き来するスリリングな展開だったが、ひとまずは東京が相手のミスから1点をリードしている。最悪、このままクローズしても問題ない状況にはなったが、後半はどうなるか。

2nd half

後半、神戸はアンカーの大﨑を下げて扇原を投入。ミドルからロングレンジのパスで東京に揺さぶりをかける意図だろう。しかし立ち上がりから東京のプレスが機能し、神戸に攻め込む場面を与えない展開。東京がボールを支配してゴール前まで運ぶことはできるものの、神戸も最終ラインの守備で耐え、シュートまでは持ち込ませない。

なかなか追加点を奪えない東京にチャンスが巡ってきたのは64分。右サイドをオーバーラップしてPA内でパスを受けた長友のクロスが本多に当たり、CKとなった場面でVARが介入、オンフィールドレビューが行われる。ビジョンにはボールが本多の手に当たる映像が映し出され、ホーム側ゴール裏からは大きな歓声と手拍子が起きた。中村主審の判定はPKに変更。この間にいつものPKキッカーであるディエゴがベンチに下がったため、代役を務めるのは松木だ。しかし、ゴール右隅を狙った松木のキックは前川がコースを読み切ってストップ。東京はスコアを突き放す最大のチャンスを逃してしまう。

この後は神戸が徐々に攻勢を強める展開。58分に汰木に代わって入った新井が左サイドでドリブルで仕掛けてくる一方、中央では68分に途中出場のパトリッキがトップ下に近い位置取りで大迫をサポート。ゴール前には扇原がフィードを送って空中戦での競り合いとなる場面が続き、DFラインの負荷は間違いなく掛かっている。東京は82分に木村を投入して5-4-1にシステム変更。途中出場のアダイウトンとジャジャに渡邊を加えた3人を残してカウンター狙いに切り替えながら逃げ切りを図る構えだ。

87分、神戸の最終ラインから出たロングフィードを木村がGKに流そうとしたボールに対し、パトリッキが加速して追いつく。間一髪で野澤がクリアして事なきを得たかに見えたが、プレーが切れたところで再びVARが介入、本日2度目のオンフィールドレビューとなる。こちらの映像は少し分かりにくいものだったが、ボールに僅かに早く追いついたパトリッキの足を野澤が狩っていたようで、確認に時間を要したがPKに判定変更。キッカーの大迫が野澤のタイミングを外したシュートをゴール左隅に流し込んで1-1。遂に神戸が同点に追いつく。この時点で既に時計は追加タイムに入っていたが、ビジョンには追加タイム13分と表示。スタンド全体から驚きの声が上がる。

一気に勝負を決めたいのは神戸。左サイドに投入された新井がドリブルで何度も仕掛け、再三にわたりゴール前へ攻め込むが、東京もギリギリのところで守る。更に裏に抜け出したパトリッキにも絶好機が訪れるが、シュートは枠外。東京は九死に一生だ。すると追加タイムが10分に差し掛かろうというところで、左サイドでボールを受けたアダイウトンがドリブルを開始。カットインで中へ切れ込み、勢いのまま右足を振り抜く。するとこれがゴール右隅に突き刺さり2-1。土壇場で東京が勝ち越しに成功する。ゴール裏にはアダイウトンを中心に選手やスタッフが揉みくちゃになり、スタンドも当然のごとく大歓声。自分の周りのバック指定席も総立ちの熱狂となる。

しかし試合はこれで終わらなかった。神戸のノーガードの猛攻を東京が耐え、あと少しでタイムアップかというところで扇原からゴール前にボールが入り、大迫が折り返したボールの落ち際に詰めていたのは山口。右足で振り抜いたボレーシュートがゴール左隅に突き刺さり2-2。またしても神戸がタイスコアに戻す。公式記録では追加タイム14分の同点劇となった。再開後には東京が再び攻撃を仕掛け、エリア外の正面で受けた渡邊のミドルシュートがゴールを脅かす場面もあったが、得点には至らずタイムアップのホイッスル。後半追加タイムに両チーム合計3得点が入る波乱の展開となった試合は、2-2のドロー決着となっている。

impressions

壮絶としか表現のしようがない試合だった。1-0のまま推移した90分までの時間も充分に濃密だったと思うが、90分を過ぎてからあれほど激しくスコアが動くとは、誰が想像できただろうか。終わってみれば、後半の追加タイムは19分。前半の追加タイムも6分あったことを考えると、フルタイムで出場した選手はもはや延長戦を戦ったに等しいほどのプレータイムだったことになる。飲水タイムやオンフィールドレビューの時間があったことを差し引いても、凄まじい消耗戦だったことは間違いない。

神戸は首位争いに絡むチームの勢いを最後に見せつけた。序盤から大迫のポストプレーで主導権を握り、前線で怖さを出すことができていた。武藤は今日に関しては東京が抑え込んだが、代わりに左サイドで大きく張り出す汰木と、その内側から出てくる佐々木が積極的にアタッキングゾーンへ仕掛けてきて、東京にとって此処はかなり対応が難しかった。守備ではGK・前川のキックミスから1点を奪われる形にはなったが、その責任は後半のPKストップで帳消しだろう。終盤は全体を押し上げて新井やパトリッキといった単独でマークを剥がすことのできる選手が存在感を見せ、最終的にはPKも含めてゴールを2度陥れた。ただでさえ強力な攻撃陣が、交代策で更に分厚くなるのだから、守備側にとっては溜まったものではない。神戸が現在上位につけているのも納得できる。

東京は実に勿体ない形で勝点を落とすことになった。試合は概ね狙いどおりに運ぶことができた。立ち上がりは押し込まれたものの、森重とエンリケが大迫に厳しく対応して簡単には前を向かせず。そしてボールを拾えるようになった時間帯で前からボールを追い、相手のミスを誘発して先制。その後も攻守でほぼ互角に戦うことができていた。だが後半、PKを含めた追加点のチャンスは間違いなくあったのだが、それらをことごとく生かすことができず、1点差のまま終盤を迎えてしまったことが失敗の遠因となった。木村の投入によって5バックで撤収に入ったことや、交代の時間帯の良し悪しに関しては、結果論でしか語れないが、今日に関しては完全に失敗だったと言わざるを得ない。後半追加タイムにはアダイウトンの個人技で劇的な勝ち越しに成功したが、同点に追いつかれて以降の守備のドタバタぶりは顕著で、スコアが2-1になっても冷静さはあまり感じられなかった。最後に追いつかれたのは、決して運や偶然の産物ではないだろう。

若手選手にとって厳しい現実を突きつけられる試合だった。松木はパフォーマンス自体は良かったが、ディエゴの代わりに蹴ったPKのチャンスを生かせず。20歳にして既に頼れる存在の松木だが、PKはあまり得意でないように見える。チームとして松木がPKキッカーのセカンドチョイスとなるのであれば、これは松木が乗り越えるべき壁といえそうだ。また、クローズの役割を背負って投入された木村は終盤にミスが続いた。野澤がVARでPKをとられた場面は、パトリッキを見ていた木村がもう少しセーフティなプレーを選択できたかもしれないし、2-2となった山口のシュート場面も木村が寄せてはいたが、結果的にゴールを割られている。森重とエンリケが他の対応で手一杯の中、余った選手への対応を行うのが木村に求められる役割だったはずで、それを完遂できなかった事実は重い。

また、試合後に東京のゴール裏へ挨拶に来た武藤に対してブーイングが浴びせられていたのは少し気になった。選手紹介時や試合中のブーイングは、対戦相手としてのリスペクトの裏返しともいえるので納得だが、試合後にわざわざゴール裏まで出向いてくれたのを追い払うような形になったのは如何なものか。あのブーイングがゴール裏の「総意」でないことは理解しているが、U-15時代から「青赤育ち」の武藤が今後のキャリアでもう一度東京でプレーしてくれることを心の片隅で願っている1人のファンとしては、少し寂しい光景だったことをここに記しておきたい。

今節のドローによって東京の勝点は「33」となり、10位を維持。第11節以来となる順位表の「上半分」、9位以上に再浮上することはできなかった。次節はホームでの連戦となり、アビスパ福岡を迎えての一戦を予定している。しばらく苦手としている九州勢を相手に今度こそ勝点3を挙げられるか。2試合連続で後半追加タイムに失点を喫している守備陣の乱れを立て直せるかも含めて、来週末も注目ポイントの多い試合となりそうだ。

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