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一人の夜に聴きたいジャズ5選

前回の記事で「コーヒーのお供に聴きたいジャズ」をご紹介しました。そのコーヒーと同じくらい、いや、それ以上に合うのが「お酒」です。
そして、そのお酒を飲む夜。とりわけ一人の夜にはジャズがよく合います。

元々、アフリカから奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人達の自己表現の手段であったジャズ。使われる音階や響きは、クラシック音楽で使われるそれと違って、少し暗めで、どこか「夜」や「大人」を感じます。
ただ、その暗さが根底にあるからこそ、聴く者は音楽的な広がりを感じ、ふとした温かみやぶっきらぼうな優しさに惹かれてしまうんですよね。

さて、今日はそんな「夜」をテーマに選曲してみました。
聴いていると、なんだかグラスの中で氷が溶ける「カラン」という音が聞こえてくるようです。今夜は何を飲もうかな?それでは、お楽しみください。


1.Satin Doll / Mccoy Tyner

テナーサックスの巨匠、ジョン・コルトレーンのグループで長く活動したマッコイ・タイナ-のピアノトリオから、サテンドールをご紹介します。
この曲は、テーマが非常にシンプルで、覚えやすいメロディなのですが、そのシンプルさゆえに、案外、演奏が難しいのです。しかし、マッコイはメロディの持つ美しさをあくまでストレートに表現することで、この曲の良さを120%引き出しています。この演奏を聴く度、「サテンドールってこんなに良い曲だったんだ」と再認識させられるんですよね。


2.Someone To Watch Over Me / Stanley Turrentine

スタンリー・タレンタインは、決してテナーサックス界の王者ではありませんが、いぶし銀ソウルフルな彼のプレイは、聴くものを惹き付けてやみません。ツウ好みといったら怒られるかもしれませんが、「好きなテナーサックス奏者は?」と聞かれて、彼の名前を答える人が居たら、一生の友達に慣れるかも。まだ見ぬ、運命の相手を焦がれる歌詞を受けて、邦題「やさしき伴侶を」と訳されたのも、何だかセンスがあって良いですよね。


3.Moody's Mood For Love / Emmet Cohen w Bruce Harris

実は、この「Moody's mood for love」という曲は、James Moodyというサックス奏者が、あるラジオに出演して、本番中に演奏したアドリブソロがあまりに素晴らしかったために、それを聴いた別のミュージシャンがこのアドリブをメロディとして一つの曲を作ってしまったという裏話があります。その後、数多くのミュージシャンに演奏され、今ではすっかりジャズスタンダート曲として定着しました。
紹介するのは、アメリカの第一線で活躍するピアニストのEmmet Cohenの動画から、トランペッターBruce Harrisをゲストに迎えてのドラムレストリオでの演奏です。その昔にラジオで披露されたアドリブが曲となり、今でも現代のミュージシャンにこうやって演奏されているなんて、なんだかロマン感じちゃいません?


4.Stardust / 松本英彦

ここで、初めて日本人ミュージシャンを紹介します。オーケストラをバックに朗々と吹かれるテナーサックス。この白い衣装、たくわえたヒゲ、と個性の塊のような外見ですよね。私も最初に見たときにはびっくりしました笑。でも、ひとたび彼の演奏を聴けば、虜になること間違いなしです。豪快で優しい音色。そして、豊かな表現力と確かな技術。テナーサックスを吹くとは、こういうことなんだ!と頷いてしまいます。この松本英彦と同じように1960-80年代に活躍していた日本人のジャズミュージシャンの実力は本当に素晴らしく、今聴いてもまったく古さを感じません。盟友、前田憲男によるストリングスを生かしたゴージャスな編曲も必聴です。


5.Love Squall / Yuji Ohno & Lupintic Five

さて、最後は少し変化球。アニメ「ルパン三世」から峰不二子のテーマでラヴ・スコールを紹介します。ルパン三世で一番有名なのは、もちろんあのオープニング曲ですが、他の曲もどれも素敵で、楽曲を手がける大野雄二さんのセンスは本当に凄いと思います。中でも、私が大好きなのはこの曲で、大人の女性の切なさ、セクシーさというか。まさに「不二子ちゃ~ん」にぴったりの曲だと思います。
ルパン三世を見ていると、なんでも無い日常のシーンでもカッコ良いBGMが流れていて、ついつい本編そっちのけで聴き入ってしまうこともしばしば。大野さんは「Yuji Ohno&Lupintic Five」として、精力的に活動されているので、もし気に入ったらぜひ他の曲も聴いてみてください。


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