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(3)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~図書館利用編~


 さて、子どもと本の縁を結ぶため、読書が身近な子ども時代を過ごしてもらうため、まずは一緒に図書館へ行きましょう!
 
 ーとはいえ、「自分があまり読まないので、どんな本を選んであげたらいいかわからない」という方もいると思います。

  でも、大丈夫!
 


〈自分にとって「おもしろい話」を選べるのは本人だけ〉

 この「本好き大作戦」の目的は、突き詰めると子ども自身が「自分で選んだ本を読んだら、おもしろかった!」という体験をすることなんです。
 だから、本を選ぶのは子ども自身ということになります。
 え、でも…と思われるでしょうが、最後まで聞いていただけると嬉しいです。
 
 大人がやってしまいがちなことに、「この本、おもしろいんだって」というものがあります。「本を読んだら頭がよくなるよ!」というのも同様です。
  絶対にダメ…と私が言えることではありませんが、個人的にはお勧めしません(自分の体験を話すのならよいです)。

 「本はおもしろい」と大人が力強く訴えるのではなく、
子ども自身が「自分にとっておもしろい話(情報)が本には載っている」と感じるかどうかが重要。
  だからパパ・ママにも、「この子にとってワクワクが体験できるのはどの本なんだろう」という視点を持っていていただけたらと思います。
 
 ーと、いう話はまた後で出てくるので、とりあえずは図書館へ行ったほうがいいですね!
 ただ、やみくもに突き進む前に、子どもが本好きになる環境について少しだけ頭に入れておいていただけたらと思います。
 

〈子どもが本好きになる環境って?〉

(1)家に常時「選べるだけの本・本棚がある」こと。
(2)親(身近な大人)と図書館・本屋に気軽に通えること。
(3)子ども自身が本を選び、自身の心で「おもしろい」と感じること。
(4)「読書は頭が良くなるよ」「本を読んで偉いね」と(過剰に)言われないこと。
(5)親(身近な大人)が日常的に本を読んでいること。
 
 ―もしかしたらハードルが高いと感じる項目もあるかもしれませんが、意外とそうでもない部分もありますので、それに関しては追々、お話したいと思います。
 

〈図書館行きは、時間の余裕がある時がオススメ!〉

 さて、「一緒に図書館に行かない? あなたの好きな本をいっぱい借りてあげる」と声をかけてみましょう。
 
 大きな図書館が遠ければ、近所の区民センターなどで充分。最初は、書店はあまりお勧めしません。ゆっくり座って選ぶ椅子などがないでしょうし、いきなり何冊も買うのは大変ですから。
 
 次の予定がある時、時間がない時は子どもに「早くして!」と言ってしまったり、親がイライラしてしまうのでNG。
 子どもにとって「ママやパパが笑顔じゃなかった」という思い出は、悪いイメージにしかつながりません
 このこと(親の機嫌)は、子どもが将来的に本好きになれるかどうかで、とても重要だと思います。
 
 話を戻しますが、図書館に着いたらまず、好きな本を伸び伸びと選んでもらってください。
  「そんなのいつもやっているよ」・・・という方もいるでしょう。 
 でも、いつもどんな選び方をしているでしょうか?
 
 「ママ(パパ)ここで待っているから、好きなの選んでおいで」・・・と「子どもにお任せ」になっていませんか?(その間、スマホをいじったりしていませんよね・・・)。
 
 この方法は「親子で一緒に」がとても大切。
 「あれ? 子ども自身に選んでもらうのでは・・・」と矛盾を感じるかもしれませんが、あくまで最初は親のサポートが必要です。
 
 

〈A郡・B郡・C郡 の3ジャンルに分けた本選び〉


 まず借りる冊数はできるだけ、その図書館の規定で決まっているマックスの数で。
 我が家の近所では10冊なので、ここでは10冊を基準にお話します。
 そして期間は、これまた規定で決まっている最長日数、ここでは2週間でお話します。
 10冊借りたとして、2週間かかっても読み切れないよ…と思うかもしれませんが、それはそれでいいのです。
 
 さぁ、10冊借りるとして、次のような選び方をしていただきたいと思います。

 〈A郡〉子どもが元々好きなジャンルの本。本人に選んでもらってOK・・・3~4冊

 〈B郡〉子どもが好き(興味を持ちそう)なジャンルではあるが、子ども自身では選ばなさそうな本・・・3~4冊

 〈C郡〉「読んでほしい」「興味を持ってくれたらいいな」という親の願いを込めた本・・・2~3冊
 
 冊数はあくまで目安です。
 
 〈A郡〉は、5歳くらいならほとんど絵本になるかもしれません。
 動物や車がたくさん載っている図鑑類でもいいですし、過去に何度も読んだ本でも構いません(「またこれ読むの?」はNGワード)。
 「これ大好きだもんね」なんて声をかけながら、一緒に座って読んだりして、ゆっくり楽しく選んでみてください。
 
 A郡のねらいは、「図書館に行ったら好きな本を選べる」と思ってもらうことです。
 

〈B郡の本選びにいちばん力を入れて!〉

 〈B郡〉は、「こういうのどう?」「ママ(パパ)も読んでみたいな」・・・と意識的に会話をしながら一緒に選んでみてください。
 じつはこの図書館通いの最大の目的は〈B郡〉なので、ちょっと長めにお話します。
 
 まず、迷ったら絵本コーナーを一歩出て、児童書コーナーを見てみてください。
 タイトルがおもしろそう、挿絵が好み、聞いたことのあるタイトル・・・などなんでもいいので、気になる本をどんどん手に取って、「これもいいね」とおしゃべりしながら、何冊か読んでみてください。
 
 ここで親の、ほんの少しの「目利き」が必要になります
 子どもだけなら手に取らない低学年向けの児童書のなかには、じつは文字の大きさ、文章のわかりやすさだけを見ると、絵本と大差のないものがけっこうあります。
 全ページが絵ではないけれど、適度な量の挿絵があり、ひらがなを多用した読みやすい文章で構成されている本です。
 わかりやすい例でいうと、小学1年生の国語の教科書のイメージですね。 
 あれは、平仮名をマスターした年長さんならほとんど読める内容だと思います。
 (誤解のないようお伝えしておきますが、就学前の段階で平仮名をほぼ読めることが標準的だとは私は思っていません。ただ、そういう子が最近多いので、その段階であれば児童書を読める、という意味です)
 
 絵本は物語を絵が引っ張っていき、児童書は物語を文章が引っ張っていく・・・基本的にはこの違い
 児童書も対象学年が上がるにつれて、絵と文章の比重が少しずつ逆転していきます(そうして最後は字だけの小説、一般書になりますよね)。
 
 ―そういう本を、できれば2~3冊選んでみてください。
 もちろん子どもに「これおもしろそう・・・どう思う?」とさりげなく相談しながら、子どもが少しでも「うん」とか「いいね」とポジティブな反応をした場合に借りる・・・という流れがベストです。
  コツはやっぱり、子どもが日ごろから興味を抱いているテーマ、ジャンルを中心にさがすこと
 例えばお菓子が好きなら、お菓子作りが大好きな女の子が活躍する冒険ファンタジー、車が好きなら働く車がたくさん登場するお話、ちょっと不思議な世界に興味があるなら楽しいオバケが出てくる話もありますし、司書さんに相談してみてもいいと思います。
 
 イマイチな反応を示した時もとりあえず借りてみる・・・という方法もありますが、あまりお勧めはしません。「ママ(パパ)と一緒に素敵な本を選ぶことができた!」という実感も、この〈B郡〉の大切なねらいですから。
 
 我が子にとって、「これはまだ絵本と同じ感じ」と思えるくらいのギリギリを攻めつつ、じつは少しだけ字が多い…という本選びをするのが、ポイントといえばポイントなのですが、初めからパパ、ママがあまり考えすぎると疲れてしまうので、この段階ではまだ深く考えなくてもいいでしょう。
 
 また、もうひとつ注意するならば
「この本、絵本より字がいっぱいで、頭がよくなりそうね」とか、「ちょっと難しそうだけど、頑張って読んでみようか」というような声かけはしない方がいいと思います。
  本は、親の期待に応えるために読むわけではないですから。
 

〈オマケのC郡は 親が選んでOK!〉

 さて、残りの〈C郡〉ですが、このねらいは「これ読んでほしいな」という親の期待です。
 なんだかこれまでと矛盾しているようですが、〈C郡〉に関しては子どもと相談せずに、親が選んで大丈夫。「せっかく来たから、少しくらい私にも選ばせて」という親の気持ちを満足させるくらいの感じで気負いなく。親もぜんぜん選べないとストレスが溜まりますよね。
 もちろん、子どもにはどんな可能性だってありますから、興味を持つ場合だってあります。
 日本の文化、科学、歴史、工作、音楽・・・など、少しだけ教育的な要素を取り入れてもいいでしょう。
 ただし過度な期待は禁物ですし、あくまでもパパ、ママ自身も「おもしろそう」と思う本を選んでみてくださいね。
 
・・・これで一回目の図書館通い、本選びは終了です。
 
 ちなみに、本ってとても重いですよね。
 10冊ともなるとかなりの重量。車がないご家庭だと持って帰るのはかなり大変でしょうが、ここで諦めないでください。
 私は車が運転できないので、旅行用のキャリーケースを引っ張り、バスで行ってバスで帰ってきました。
  大丈夫、できます。
  

〈ちなみに我が家ではこんな感じでした〉

 参考までに我が家の場合は、うろ覚えですが、こんな内訳だったと思います。
 
〈A郡〉長女が選んだ絵本(ぐりとぐら等)。当時大好きだった迷路の本、なぞなぞの本
 〈B郡〉小学校低学年以上が対象の児童書(おじさん名探偵が活躍する謎解きものと、料理好きな女の子が活躍する冒険ファンタジー)
 〈C郡〉ドラえもんのことわざの本、ちびまる子ちゃんの日本の歳時記の本
  ・・・確かこんなラインアップ。
 手探りだったので、これが素晴らしいという話ではなく、あくまでひとつの家庭の例だと思ってくださいね。
 
 実は後になって〈B郡〉で選んだおじさん探偵の本が我が家では重要な役割を果たします(後でわかったのですが、現在も発行が続いている大人気シリーズでした)。
 これを選んだのは、長女がこの頃クイズや謎解きをテーマにしたテレビ番組を食いつくように見ていたことが理由です。
 
 また、全ページに絵があるので子どもにとっては「絵本」なのですが、文章量がさほど多くないのに話の内容は文章をしっかりと読まなくては理解できない構成・・・という絶妙なバランスが気に入りました。
 
 さて、1回目の本選びはこれで終了です。
 ここから、帰宅後どう過ごすかのお話になります。
 
つづきます。

・つづきはこちら
(4)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~図書館利用編~|涼原永美 (note.com)

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