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【共同親権】そろそろ本質の話がしたい―大人が大人にならなければ子の痛みはどんな制度下でもなくならない


  ――親権以前の問題はどうするのだろう、と思うことがある。

 いま、離婚後に共同親権を選べるよう、審議がすすんでいる。日本でも。

 基本的にはいいことだ、そうするべきだと思う。

 両親が離婚しても子どもは父、母と繋がりを持つことができるし、これまで理不尽に疎外されてきた片方の親、これから疎外されるかもしれない親にとっても、よい方向にむかっている。

 それにもちろん、システムが整えば社会ががらりと変わることもあり、苦しみからある程度は開放される人もいるだろう。

 ――ただこれは、大人が大人であることが、前提だ。


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 大人が感情にまかせて、安易に言ってはいけない言葉があると思う。


「パパ(ママ)のところに行っちゃだめ」
「ママ(パパ)はひどいことされたから、もう嫌い」

――だからあなたも会っちゃだめ。行っちゃだめ。その話はしないで。

「いま調停をしている」とか
「これから裁判になる」とか
「こちらが絶対に正しい」とか
「どっちと一緒に暮らしたい?」とか

 
 大人の負の感情を見せられて、その不穏さに巻き込まれること自体が、子どもにとってどれほど大きなストレスになることだろう。

――もし私が5歳なら、悲しくて、不安で、くるしい。

――もし私が10歳なら、いい加減にしてほしい、と腹が立つ。


 もちろん、どうしても伝えなきゃならない言葉や情報もあるけれど。
「あの人は暴力をふるう。あなたにも危害がおよぶ。だから会っちゃだめ」
 こういうのは当然必要で。

 これはまた別の話。



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 平和な状況下に生まれ、衣食住にこまらない生活を与えられた。
 それは幸せなことだけど、突然、大地がゆらいでしまう。

――それが両親の不和に巻き込まれた子どもの景色ではないのだろうか。

 いつかかならず避けられない不幸に出合うそれぞれの人生で、避けられるはずの不幸があるとすれば、親の不仲からくる紛争性はそのひとつじゃないかと思う。

 子どもは多くを望まない。
 ただ平穏な日々で、好きなことに一生懸命、取り組みたいだけ。

 ただそれだけの願いを、大人の不穏で奪うのはとてもたやすい。

 大人が大人になり、できる限りのことをしなければと思う。
 子どもの心が傷つかないように。

 離婚するのは仕方ない。
 不仲になることもあるだろう。

 でも、やり方というものがある。

 かける言葉と、かけない言葉を、分けることはできるはず。

 
 まずは、「片方の親の悪口を、子どもに聞かせないで」

 こども家庭庁さま、親権の審議にかかわる方々、これを周知してはいただけませんか。


――難しいことでしょうか?

 いちばん傷つくのは、2人から生まれた子どもです。


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 単独親権のいまだって、協力しながら子育てしている元夫婦はたくさんいるし、共同親権の国だって、うまく協力できずにもめる元夫婦はたくさんいる。

 その要因はなんだろう。
 結局、大人の人間性と人間関係じゃないのかな。


 子どもの権利を守ること、子どもの心を守ること。
 周りの大人が心底それを「大切だ」と感じて行動しなければ、どんな制度下でも子どもの心を守れるはずがない。

 大人が大人になることを、もっとちゃんと考えたい。

 大人には選択肢がある。いろいろ選んで生きている。
 大人は先を見通すことができる。いまの選択と未来がつながることを知っている。
 

 ――でも、子どもはなんにも選べない。

 夫婦のこと、家庭のことは他人にはわからない。
 そうかもしれないとも思う。
 けれどひとつだけ誰にでもわかることがある。
 それは、子どもより大人が完全に優位に立っているということだ。

 大人だって生きるのは大変――でも子どもはなんにも選べない。


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  あなたの10年後、20年後、30年後に残る記憶はなんだろう。

 「ママ(パパ)とはこういう理由で会っちゃだめ」
 「こういう理由で別れたから、こちらが正しい」

 ――と言われたけれど、〝こういう理由〟をあなたは覚えているだろうか。

 
 あなたはきっと、〝自分が愛されていたかどうか〟だけが気になるんじゃないかと思う。


 そしてあなたは自分で考え、自分で調べ、行動することができるだろう。
 生きていれば、親に会いに行くこともできるだろう。


 その時あなたは、なにがいちばん大事なことだと感じるだろうか。


 「片方の親と会えなかった事実」や
 「失われた時間や無邪気さ」のほうが、
 親の事情や感情よりもずっと色濃く残っているんじゃないだろうか。



 ――だって親の人生と、あなたの人生は別のものだから。

 

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 私の姉は、最後まで離婚しなかったから、ふつうに親権はあったけど、それでも子どもと引き離されて、会えなかった。裁判所は「会わせるように」という審判をくだしてはくれたけど、なんの強制力もないし、会えないまま亡くなった。

 強制的に会わせてほしかったわけじゃない。
 ただその間、子どもにどれ程「片方の親の悪口」が伝わっていたかということに、慄然とした。

 姉も改めるべき態度は、あったと思う。

 そこには、大人同士の意地の張り合いが透けて見えた。

 結果、子どもの心に残ったものはなんだろう。


 親権以前の問題だ。


 本質的なことだし、基本的なことだと思う。
 

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「手を離さなきゃよかった」と言った人がいた


 
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