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月刊 俳句ゑひ 文月号〈増刊号・言葉の解説〉

ゑひ[酔]のホームページ及びnoteで発表した、月刊俳句ゑひ 文月(7月)号の俳句の言葉解説記事です。各作品に分けて順に説明していきます。

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『いいね』(作:上原ゑみ)の言葉

ぼろんから 〈季語〉

トケイソウ

トケイソウのこと。漢字では「梵論葛」と書きます。「梵論ぼろ」とは虚無僧こむそう(ぼろ衣を来て行脚する僧)のことで、中央の時計の針のような部分を、これに見立てたのが由来だそうです。英語ではパッションフラワーと言いますが、キリスト教圏ではキリストを象徴する花として扱われます。東洋でも西洋でも宗教的な名前が付いていることには、偶然の面白さを感じます。

炎昼えんちゅう 〈季語〉

とても暑い夏の昼のこと。灼けるような暑さのことを言います。季語として積極的に用いられるようになったのは1938年発行の山口誓子やまぐちせいしの句集が『炎昼』と名付けられて以降のようです。なお、この頃の7月の平均気温は25度前後。今より3度ほど低いです。

炎昼(イメージ)

かれ死角しかく

ここでの「彼」はおそらく「子かまきり」のことではなく、作者でもない第三者でしょう。もし子かまきり自身のものだったら、踏み歩く場所は死角にはならないからです。そして、踏んでいるのは「彼」ではなく子かまきりの方です。紛らわしいですが、「彼(人間)」の死角を子かまきりが歩いている、という情景と解釈するのが無理がないです。

かがむなり 〈文語体〉

現代日本語にすると、「かがむのである」という意味。

その集団しゅうだん

どの集団、どんな集団なのか、読者に情報は提供されていませんが、「その」という言い方には筆者との物理的・心理的距離感が感じられます。作者はその中に所属していないでしょうし、好意的にも見ていないような気がします。そんな集団が蛭(次項)のいる道で動き回っているのは、どこか奇妙で気味が悪い感じがするかもしれません。

ひる 〈季語〉

血を吸う動物、広義の虫と言えるでしょうか。筆者はまだ見たことがありませんが、知り合いが嚙まれた話は聞いたことがあります。もし嚙まれたら引っ張らず、ライターで焼き殺すのがよいとか。

螢袋ほたるぶくろ 〈季語〉

植物の名前です。俳句では特にその花を指します。釣り鐘状の下向きの花の形が特徴です。Wikipediaには「子どもがこのような形状の花にホタルを入れて遊んだから」という由来が紹介されていますが、実際はどうなのでしょうか?

蛍袋

ぐれ 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「夕暮れ」とそのまま解釈します。

くら 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「真っ暗」とそのまま解釈します。

さだめたり 〈文語体〉

現代日本語にすると、「定めている」という意味。

ひろがれり 〈文語体〉

現代日本語にすると、「広がっている」という意味。

かんが 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「考え(思考)」とそのまま解釈します。

たり 〈旧仮名遣い・文語体〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「揺れている・揺れ続けている」と解釈します。

すえ 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「末っ子」とそのまま解釈します。

きとる 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「透き通る」とそのまま解釈します。

とおらるる 〈文語体〉

現代日本語にすると、「透き通られている」という意味。この訳にも違和感がありますが、この句ではそこがポイントです。

あかん 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「赤ちゃん」とそのまま解釈します。

いでる 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「凪いでいる」とそのまま解釈します。

素袷すあわせ 〈季語〉

暑い季節のあわせの着用法。袷は裏地のある着物を指し、夏には表と裏の間の綿を抜いて、下着となる襦袢じゅばんの上に着用しますが、もっとも暑い時期には、肌の上に直接袷を着る「素袷」という着方が涼感のあるものでした。画像で出そうと思ったものの見つからず、上原が確実に「素袷」と断じた鏑木清方「築地明石町」の画像もなく。苦肉の策で涼し気な「湖畔」を下に貼っております。

黒田清輝「湖畔」(素袷かどうかはわからない)

内腿うちもも

読みが難しいため挙げておりますが、意味はそのまま、太ももの内側のことです。

『無題3』(作:若洲至)の言葉

溽暑じょくしょ 〈季語〉

蒸し暑く不快な暑さのこと。「じょくしょ」という音からも、湿度が高くじっとりとした空気が伝わってくるような感じがしますね。

ぶ 〈文語体〉

現代日本語にすると、「浴びる」という意味。

と 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「ずっと」とそのまま解釈します。

天使魚てんしぎょ 〈季語〉

エンゼルフィッシュ(イメージ)

エンゼル天使フィッシュのこと。別コーナー「ゑひの歳時記」で「熱帯魚」と合わせて取り上げます。詳しくご紹介しますので、是非そちらをお読みください。

えてて 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「見えていて」とそのまま解釈します。

食ふくう 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「食う・食べる」とそのまま解釈します。

土用入どよういり 〈季語〉

「土用のうしの日」にもある土用とは、もともと春夏秋冬の季節の終わりの18日間のこと。2023年は立秋が8月8日なので、7月21日からが暦の上での土用ということになります。そしてこの土用の期間に入ることが「土用入」です。ちなみに土用の丑の日にうなぎを食べるのは、江戸時代の発明家平賀源内ひらがげんないのマーケティング施策だそうですが、それを裏付ける資料はないそう。

飼ふかう 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「飼う」とそのまま解釈します。

ひからかさ 〈季語〉

日傘のことです。5音の音合わせを一つの目的としてこの別名がよく使われます。

戸塚とつか

ここでは横浜市内の地名(戸塚区周辺)を指します。かつて旧東海道の宿場「戸塚宿」があり、現在も箱根駅伝の中継所が設置されます。戸塚区は横浜市の中でもっとも広い行政区だそうで、都市的な地域もあれば、畑が広がるようなエリアもあり、起伏に富んだ地形も特徴的です。

公団こうだん

公団(イメージ)

正式には、公共的な事業を行うために設立された法人の一種のことですが、この場合は「日本住宅公団」によって建設された団地のこと。エイリアンズ(キリンジ)にも「公団」が出てきます。

うりはな 〈季語〉

西瓜すいか南瓜かぼちゃ胡瓜きゅうり苦瓜にがうりなど、ウリの種類はいろいろありますが、それらの花を総称して季語としています。五弁の黄色い合弁花を咲かせるものが多いです。苦瓜や胡瓜は、小さなベランダの家庭菜園でも育てられているのをよく見ます。

マクワウリの花(イメージ)

かんがる 〈旧仮名遣い・文語体〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「考える」と解釈します。

夕端居ゆうはしい 〈季語〉

夕方に、縁側など家屋の風通しの良い場所で涼むこと。日々猛暑の今の時代は夕方でも暑いので、どれほど実感を持って詠むことが/読むことができるかは正直ちょっと悩ましいですが……。

紫蘇しそ 〈季語〉

赤紫蘇(イメージ)
青紫蘇(イメージ)

シソ科の葉野菜。赤紫蘇と青紫蘇(大葉)があります。夏に欠かせない香草の一つですね。ベトナムに行った時、どんな料理を注文しても、付け合わせに紫蘇が付いてきましたが、日本の紫蘇より、味も色もちょっと薄い印象を持ちました。日本にも中国大陸から渡来したようです。

千切ちぎ

シソも千切せんぎりにすることがありますが、今回は「せんぎり」ではありません。手でちぎっている情景を浮かべながら読むと良いでしょう。

終へおえて 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「終えて・終わって」とそのまま解釈します。

終はおわりけり 〈旧仮名遣い・文語体〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「終わった」と解釈します。

ホチキスのしん

ホチキスに入れて使う金属の塊のことを指していますが、あのコの字型のモノの名称は一般には定まっていないようです。10年ほど前の下の記事では、「はり」>「しん」>「たま」の順で呼ぶ人が多かったようですが、今はどうでしょう。皆さんはなんと呼びますか?

めてて 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「込めていて・ホチキスの芯をホチキスの中に入れていて」と解釈します。

せられてて 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「着せられていて・着せられている最中で」と解釈します。

ぱ 〈季語〉

女性向けの夏服の一種。名前の由来は真偽不明ですが、Wikipediaによれば、「裾がぱっと広がる」ことからとも、ゆったりした「マザーハバードドレス」のからの訛りであるとも。動きやすく、着脱しやすいのが特徴で、大正時代の女性運動とのつながりを指摘する書籍もあるようです。

くずり 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「崩している」と解釈します。

オルファ

日本のカッターナイフメーカーの名称ですが、「会社」は持ち歩けないので、ここではその製品を指していると考えられるでしょう。下記公式サイトなどを参照すると、名前の由来は「折る刃」のようです。現在のオルファ株式会社は、世界で初めて刃を折って使う「折る刃式カッターナイフ」を発明した企業で、カッターナイフの国際規格もこの会社の製品から決まりました。筆者も愛用しています。

誘蛾灯ゆうがとう 〈季語〉

蛾が光に集まる性質を利用して、蛾をおびき寄せるために使われる明かりのこと。青っぽい光のものが多く、そこに寄ってきた蛾を、紫外線や高電圧で殺します。郊外・町村部のコンビニエンスストアの軒などにかかっていることがあります。

誘蛾灯(イメージ)

とうすみ 〈季語〉

アキアカネなどと比べて細い、イトトンボのことです。漢字では灯心蜻蛉とうすみとんぼと書きます。初夏に見ることが多いとのことですが、今回は都合により7月の句の中に含めております。

イトトンボ(イメージ)

こわ

「壊す」と同じ意味です。個人的な感覚かもしれませんが、「壊す」は外見がもろく、ぼろぼろになるような感じがするのに対し、「毀す」は品質や価値が損なわれたり、鋭利なもので傷が付いたりするような損傷の仕方のような気がします。

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