ありもしない妄想

 中学の頃、合唱コンクールのあれやこれやであまりにもストレスがかかりすぎて、電話で母に「上から女の子が降ってきた!」と言ったことがあります。

 なんていうか、数日分の記憶が吹き飛んだというか。
 一番的確な表現をするなら、ゼリーをかき混ぜたような感じです。

 ゼリーって、すごく柔らかいけど、形がある。それから、大体のゼリーは色はついていれど透明で、向こう側が多少見えますよね。
 でも、ぐしゃぐしゃにしてしまったら、あまり見えないというか、見えなさそうというか。
 実際にやったことはないんですけどね。私の中で一番しっくりくる表現は、そんな感じ。

 記憶にもやがかかるというよりかは、かき混ぜたゼリーを通して記憶を除いているような感じでした。ゼリーの色は緑色。青リンゴ味のような気がしますね。不思議と、マスカット味では無いと言い切れる。

 私の妄想は、そこから始まったのかもしれません。

黒服の女?

 私が3ヶ月休職して、復職した時。
 私は上司との面談で、「変な声が聞こえる」みたいなことを言いました。あと、誰かがいるような気がして落ち着かない、とも言いました。

 実際、声なんて聞こえていませんでした。
 でも、誰かがいるような、監視されているような、もっと言うと脅されているような、そんな心地は確かにしていました。
 そして、声が聞こえているわけではないけれど確かに、「できないお前に用はない」みたいな言葉が、頭の中に張り付いて、心を締め付けていたように思います。当時の私は、その現象を「声が聞こえる」という言葉でしか、表現することができなかった、それだけのことです。

 実際見えているわけではありませんが、確かにいるような心地がしていました。幽霊とかではありませんよ、ただの思い込み、ただの病気です。
 どんな人かもわかっていて、黒い服で、何か鞭のような、紐のようなものを持っている、女の人だったと思います。髪は長くて、顔はよく見えない。

 私が仕事をしている間、ずっと私を監視しています。
 私が帰る間、ずっと私を追いかけてきます。
 何かよく無いことをすれば、彼女が私の首を絞めてくるとわかっていました。
 でも同時に私は、頭のどこかで、そんな人が存在しないことを理解していました。だから、そんな心地がするからといって何か行動がおかしくなるようなことはなかったと思います。

 今思えば、自分を頑張らせるために生み出した化け物というか。
 そうまでして自分を追い込まなければ、もはや頑張れないってところまで来ていたんですよね。
 自分が自分を壊すためだったかもしれないし、自分をある意味では護るためだったのかもしれない。どちらの意味もあったけれど、後者の方が強いと思います。

 ”そういう生き方”をしてきたもので。

泣いている自分

 ふと気が抜けると、5歳くらいの自分が、暗いところで泣いています。
 実際、5歳くらいの私は、もっと活発な女の子で、おてんばという言葉が私のために存在するのではないかというくらい、明るくて負けん気の強い子だったと思います。
 少なくとも、ずっと泣いてるようなことはなかったと思う。

 でも、居る。ずっと泣いてる幼い自分が。

 えーんえーんって感じより、しくしくって感じです。静かに泣いています。
 で、5歳くらいかなって思って近づいてみると、なんだか14歳くらいな気がするんですよね。遠近法とかそういうアレですかねこれ。

 寂しさと、悲しさと、虚しさが詰まっています。
 とても冷たい空間。

 ずっと泣いてるから、何を言っても泣いてるだけなんです。
 だから、なんだって言える。

 全てお前のせいだ、とか。お前だけがこの世で悪い人間だ、とか。
 責任を取れ、逃げるな、ラクをするな、死ね。

 もはやただの感情のゴミ箱です。
 手を差し伸べても泣いているから、傷ついているのか悲しいのかもよくわからない。というか多分、その子が泣いていても、私はどうでもいいんです。

 自分だってわかっているのに、自分という心地がしない。
 そういう何か、これまたよくわからない化け物なんです。

 これは本当に、ごくごく最近のお話。ここ1ヶ月ちょっとくらい。

 見えない釣り糸みたいな、すごく丈夫で、すごく細くて、目には見えない糸です。
 それが首を一周していて、私の気が抜けるたびにクッと絞まる。

 どこからやってきてるのかも、誰が絞めているのかも、全く検討がつきませんが。

 とにかく、首に糸が絡みっぱなしで、時折それが絞まる。首に絡んでいるものだから、引かれると首が絞まるんです。
 息がとても苦しくなって、泣きそうになる。でも、泣くともっと絞まる。
 細いけれどとても丈夫な糸ですから、締まり過ぎればきっと、私の首を切ることもできます。そのくらい丈夫で、細い糸です。だから恐ろしい。

 糸が締まると、自分のうちから、ドロドロとした自責の感情が湧いてくる。収拾がつかないくらい泣いて、声にならない声を出して、これ以上考えられないくらいに疲れ切ると、私は呆然とする。
 糸のことも、考えていたことも忘れて、ただただ呆然とする。

 最近は、そういうことを繰り返しています。だからかなり情緒不安定ですね。
 都合が合えば、恋人に連絡をして話を聞いてもらったりするのですが。言葉にはなっているけれど、あまりにも悍ましすぎて、助けを求めることも憚られるんですよね、正直なところ。

 でも、一つ確かなことがあって。
 記事でもLINEでも日記帳でも、なんでもいいから言葉を形にすると、引きが早いというか、治るのが早いっぽいです。私にできる、唯一の対処療法。

 今は別に、苦しい時ではありませんが。
 そういう心地がするということを言葉にしておくことで、そしてそれが現実ではないということも同時に言葉にしておくことで、自分の中で何かが変わってくれるといいなって思って。
 ありもしない妄想を妄言にしてみました。

支離滅裂ってこういうことを言う

 意味のわからない記事ですよね。私もそう思います。

 私は統合失調症ではないので、本当に見えているとか、本当に聞こえているとか、そういうことは全くありません。加えて、それが現実ではないことを自覚した上で、そういう心地がすると感じています。
 自分を呪いながら、その呪いを解こうとしているような、不思議な感じですけど。現実的にそうなのだから、そうとしか言いようがない。

 高校生の頃はよく、”切り離す”という表現を使っていましたね。
 ハサミで切るイメージ。

 自分にとって不都合な感情は、ハサミで切り取ろうって。自分にとって邪魔なピースを、一つずつ取り除いていくんです。それで、初めからそんな自分なんて、”無かったこと”にする。
 ”そういう生き方”ってこと。自分なんかどうなってもいいって、私の中ではこういう意味だと思っています。

 自分が自分を無視していい。自分を蔑ろにしてもいい。
 それで現実が上手くいくのなら、要らない自分は無かったことにしよう、殺してしまおう。

 黒服の女は、自分を殺しに来たんだと思います。
 泣いている自分は、私が切り離してどこかに置きわすれたものだと思います。
 糸は、そんな自分を断罪でもしようとしているんですかね。

 よくわからない非現実と一緒に、生きた心地のしない現実を、まあなんとか生きていかなくちゃ、ね。

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