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ODが辞められない人へ

 私はよく、YouTubeでニュースを見るのですが。
 おとといアップされたニュースの中に、『若者に広がる市販のオーバードーズ』というタイトルのものがありました。

 今回は、過去にODをしたことで救急搬送され、胃洗浄をした私の経験を踏まえ、色々とかいてみようかなと思います。


体調が悪ければ、休ませてもらえる

 私が初めてODしたのは、高校2年生か3年生の頃でした。
 精神科に通院していたので、手元にたくさんのお薬があることは日常と言えば日常のことだったし、当時の母は薬の効能について正しい知識を持っておらず、飲まない方が健康みたいな考えだったため、管理も全て私任せでした。

 当時の私の悩みの一つに、精神的にいくらしんどくても、学校を休ませてもらえないことがありました。逆に、体調が悪ければ、ちゃんと休んで病院へ連れてってもらえることが多かったです。
 それで思い立ったのが、ODをして体調を壊す、という手法でした。

 しかし、当時もらっていた薬は、最大で1ヶ月分くらいだったことと、数は多かったけれど、1錠に含まれる成分は微々たるもので、出る症状としては強烈な眠気、倦怠感、吐き気くらいのものだったこともあり、まあ眠っていれば何事もなくやり過ごせる程度のものでした。(とはいえ、危険なので推奨はしません。)

 思った程の効果が得られなかったので癖になることはなく、高校生の頃はその1回だけしかしなかったような気がしています。


”OD癖”になる

 次のODは、高校を卒業し、仕事をし始めた頃になります。
 就職を機に一人暮らしを始めました。仕事で心身が異様に疲弊している気がしたため、引っ越し先でまた新しく精神科を探し、通院も再開しました。

 最初の診断は『気分障害』で、以前診断されていた発達障害のお薬と合わせて、3,4種類程度のお薬を処方されていました。

 3月から週4のバイトで入っており、4月からは正社員として週5勤務。新社会人なので、当然上手くできないこと・学ばなければならないことはたくさんありましたが、それとは別に、上手に時間を使えないことに困っていました。
 基本的にロングスリーパーなので、睡眠時間は10時間前後欲しいし、仕事は8時間+休憩1時間、通勤に片道1時間近くかかるので、家でご飯を作ったりお風呂に入ったりする時間は、3時間くらいでした。あまり残業はありませんでしたが、残業があれば、自分のために裂ける時間を削るしかありませんでした。

 そういう日々を繰り返して3月が過ぎ、4月頭から病院に通い始め、薬ももらい、良くなるかと思いきや。
 学生の頃の「体調が悪くなければ休んではいけない」という、母からの刷り込みが、オーバードーズという行為につながっていきます。

 会社を休みたい日は数日〜1週間分くらいの薬を飲み、普段通り仕事へ行く準備をします。休みたいから休むことは許されず、準備をして仕事へ行く素振りはしなければ、みたいなことを思っていたのかもしれません。
 最初のうちは、駅まで15分ほどくらくらする頭とふらふらする妙な感覚のまま自転車をこいで、吐き気が出る頃に駅に着くとか電車に乗るとか、そういうことをしていました。しかし徐々に、それをする余力さえ消えてしまったので、家の中で副作用にやられて動けなくなることが多くなりました。

 まあそれでも、1週間分ですからね。当時は確か、朝夕しか飲んでいなかったため、合わせて20〜30錠とかその程度だったと思います。
 家で安静にして、水分をよく取りトイレに行って体外に出し切ってしまえば、症状が残っても2日程度で収まるものでした。


死ねたらハッピー

 時は流れて10月ごろ。辞職しました。
 誰かに見られている気がする、私を脅す声が聞こえる、と上司に相談したところ、仕事ができる状態ではないと判断されたためと、私自身も疲弊しきっていたため、辞職しました。

 晴れて生活保護になった私は、死にたい毎日を過ごしていただろうと思います。

 ある日、どうしてか?とか、何が原因で?とか聞かれたら困ってしまいますが、とにかく事実として、私はODをしました。
 全部で50錠くらいの薬を、3回くらいに分けて飲みました。

 もちろん、流石に死ぬかもしれなかったので、多少の躊躇いはありました。しかし、誰から「飲め」と言われ、私は「はい、わかりました」と従うしかなかったような心地になり、用意していた全ての薬を飲み干しました。

 当然のことながら、飲んだ直後は何も起こりません。だから、意外と大丈夫じゃんと思って、そのまま寝ようと思いました。このまま二度と目が覚めなければ、それはそれで良いかなとも思っていました。
 だって、仕事ができないんですよ?この先、生きて何になるんだって話です。何にもならないんですよ。生きる粗大ゴミです。

 でも、ツイッターで「救急車を呼んで」と言われ、私はすぐに119番通報をし、「オーバードーズをしました」と伝えたら、すぐに救急車を手配してくれました。
 119番電話口の「もう大丈夫ですからね」という言葉に、今まで感じたことのないレベルで救われた気がして、泣いたことを覚えています。

 救急退院が来て、身支度をして救急車に乗り込みます。
 その先は、あまりよく覚えていません。ホッとして気が抜けていたのと、薬のせいで強い眠気に襲われたのと、両方あると思います。

 次に目が覚めた時は、病院のベッドの上で、点滴と胃洗浄用の管に繋がれていました。常に喉に管が通っているので、とても痛かった。


ODに対して、何かを求めているわけではない

 これはあくまでも私の経験談になりますが、ODをするという行為そのものに何かを求めているわけではないと思います。
 例えば、運動がしたいから走る、というのは理に適ってますよね。でも、運動は何も走るだけではありませんし、鉄棒も球技も縄跳びも『運動』になるわけです。ただ、道具が無くても、一緒にやる相手がいなくてもできる、一番手軽な運動が『走る』だから、とりあえず走ったというだけだと思います。

 ODも同じで、ストレスを発散したいとか、嫌なことを忘れたいとか、非日常的な感覚を味わいたいとか。そういう目的を達成するために、一番手軽だと感じたものが、たまたまODだったというだけのことだと思います。
 だから、カラオケへ行って声を出すとか、恋人とデートをするとか、遊園地へ行って絶叫マシンに乗るとか、それとあまり大差ない感覚で、ODをする人はODをしているわけです。

 よくよく考えてみれば確かに、カラオケ1時間でもそれなりの市販薬は買えますし、遊園地で1回遊ぶお金があれば、OD数回分の薬が手に入りますし、いくら恋人とはいえ気を遣わなくて良いわけではありませんし、傷つけられる可能性や、そもそも恋人がストレス源という可能性もありますよね。
 薬は裏切ることはなく、大量に飲めば確実になんらかの副作用が現れますから、ある意味で信用のおける相手だと思います。


ODは誰も困らない?

 ODって、誰にも迷惑をかけず、疲れることもなく、とても手軽で良いですよね。かといって、推奨するわけではありませんが。

 誰かと遊べば疲れる。
 悩みがあるからって相談しても疲れる、反対されるのも怖い。
 親との関係がまともとは限らないし、友人や恋人との関係ももはやストレスを感じるものになっている可能性もある。
 心の拠り所がないどころか、この世界に居場所を感じない。

 仕方がないから、ODをしてなんとか、自分のバランスを保っておこう、みたいな。

 でもそれって、自分にとって一番重大な人物・自分が困っているわけです。自分から見た世界というものは自分を中心に回っているので、自分が困っていたら大事件です。

 よく、ODやリストカットなど自傷行為をする人は、自分を大切にできていないみたいなことを言われがちですが、そういうわけではないと思うんです。
 自分を最大限労わる方法が自傷行為しかないってレベルで追い込まれているというだけで、追い込まれていなければ、お化粧をして自分を綺麗にするとか、スポーツで気晴らししてみるとか、そういう方向にエネルギーを使うことができると思います。


ODしなくても”助かる”自分に

 そうなるために、一番手っ取り早く確実なのは、『絶対に大丈夫な休暇』だと思います。学校も仕事も忘れて、思う存分休める時間。
 でも大抵の場合、それが無理だからそこまで追い込まれているわけですから難しいところ。

 強いていうならば、先駆者というか反面教師としては、学生ならば、まずはスクールカウンセラーに相談するのがベストだと思います。そこで、本当に病院の手助けが必要だと判断されれば、繋げてもらうこともできると思います。親が納得しないのならば、カウンセラーや担任の先生、保健の先生なんかを軍勢にして、親を納得させるくらいの反乱を起こしてもいいと思います。
 社会人ならば、仕事を辞めて生活保護になるのも手段の一つだと思います。何も恥ずかしいものではありませんし、申請時に両親に知られたくなければ、どうにか今までの事情を説明して虐待の可能性がある、くらいに結びつけてしまってもいいと思います。
 何にせよ、自分と病院(精神科・心療内科)をつなげておくことはとても大切だと思います。長く通院を続ける必要があり、症状も一定以上に重かったら、障害年金という家計を助けてくれる制度もあります。
 以前の記事てもよく言っていますが、病院は甘えではありませんよ。心が風邪をひいたと思って、気軽に足を運んでみてください。

 それから、自分の負担になっている人間関係は、この際にバッサリ切ることをお勧めします。とても難しいことですが…。
 例えば、親が自分の足を引っ張っていると思ったら、どうにか一人暮らしをするとか、一時的にでも入院してしまうとか。友人・恋人などについてはもう少し手軽で、SNSならブロックするとか、会いそうな時間に会いそうな場所へ行くことを避けるとか、いっそSNSのアカウントを消すのも効果的かもしれません。

 自分を大切にしてくれる人としか、付き合う価値はありませんよ。
 寂しさを埋めるために癒えない傷を負ってしまうときは、人と付き合える余裕がないくらいに疲弊している証拠だと思います。今は誰とも関らずひっそり静かに、休むことをお勧めします。

 じっくり休んだ後、今度こそ自分を大切にしてくれる友達を見つけに行けばいいじゃない。
 一緒にいて楽しいとか、自然と笑えるとか、趣味が同じとか。そういう、お互いを幸せにできる友達探し。

 もしも、誰にも相談できなくて、でも誰かに打ち明けたくて…って悩んでいる人がいましたら、私なんかでよければお話を聞きます。(@ei1640
 上手な受け答えとか、してほしい受け答えなんかはできないかもしれませんが、どんな身勝手に思えるようなことでもお話ししてください。

 これを読んでくれた皆さんが、少しでも生きやすくなりますように。

よろしければ、サポートよろしくお願いします。 社会復帰に使う、なんて言いながら、きっと、私の人生を彩って、これからもnoteで言葉を紡ぎ続けるために使います。